このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

【他社事例で学ぶ健康経営】介護系企業の事例:ワークライフバランスで長時間労働削減へ

健康経営シリーズ

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

【他社事例で学ぶ健康経営】介護系企業の事例:ワークライフバランスで長時間労働削減へ

管理部門と生産性の関係

仕事柄、管理部門のコミュニティに参加することが多い。そこでテーマとなるのが、管理部門の生産性向上である。どのように生産性を計測し、どのように向上させていくのか。まずは可視化をどうするかという課題に直面する。雑多な仕事が多い管理部門、成果を数値で示すのが難しい管理部門、その課題である。

そこに違和感を覚えることが多い。無理やり可視化する必要があるのだろうか? 下手をすると可視化が目的となり、本来は手段に過ぎなかった可視化そのものが目的化してしまわないか。あるいは、そもそも、生産性向上も、それ自体が目的ではないはず。何かを達成するためのプロセスのことであり、生産性向上自体が目的ではない。

管理部門の役割は、現場従業員の支援であり、現場従業員が成果を上げるために貢献することである。だとすれば、現場従業員の成果を一つの指標として見ていくことが大切なはずである。売上なのか、労働時間なのか、仕事へのモチベーションやエンゲージメントなのか。そのような指標が、管理部門で必要な、追いかけていく指標となるはずだ。

とは言え、管理部門として手際良く仕事をすることは必要である。やるべきこと、対処すべき課題が明確にあり、それを実行する際の手際の良さ、最短距離で実行することが管理部門においての生産性向上である。そこで必要な観点が、その仕事やそのプロセスが要るのか要らないのかという視点である。

業務改善の王道も、「やめる、へらす、かえる」である。まずは業務の必要性を確認し、不要な業務はやめてしまう。必要なものについては、時間やリソースを減らす、あるいは、さほど高い精度を求められない仕事は、正確さよりスピード重視で対応する。そして、最後にやり方を変える、システム化する、アウトソーシングに任せるなどの視点である。そのようにして最短距離で成果を上げていく。この積み上げが管理部門の生産性の向上となるのである。結果、長時間労働削減に結び付く。


ワークライフバランスという視点

一方で、ワークライフバランスは、日本においても定着した言葉である。プライベートを顧みず、仕事に邁進していた高度成長期。その流れにおいて、長時間労働が賛美され、結果、体調を壊し、離職…。ここにきて人手不足が大きな課題となっている中、いかに人材を引き留めるか、万全の状態で成果を上げてもらうかに視点が移ってきた。

長時間労働削減もさることながら、プライベートも充実させることにより、翌日も気力が充実した状態で仕事に取り組む。個人としても幸せであり、組織も幸せな状態が構築できる。さらに、プライベートで仕事に活用できる体験や知識を得て仕事に活かす、そんな流れも期待できる。ワークライフバランスの実現により、双方がウィンウィンとなることが重要視されているのだ。

先に記した、業務改善の積み上げによる労働時間の削減が仕事のみに着目したものである一方、ワークライフバランスは、プライベートにも目を配り、総合的な視点で労働時間の削減に取り組む施策である。業務改善が最低限の直接的な労働時間の削減である一方、ワークライフバランスは、プラスの側面、さらに労働時間の削減につながる可能性のある施策、そのように考えて良いかと思う。今回は、そのワークライフバランスを実践して、労働時間削減を実現した事例を紹介していこう。


トップの本気度により加速した

この企業では、長年長時間労働の問題があり、業を煮やした経営トップが、自らがワークライフバランスコンサルタントの養成講座に通って資格を取得し、取り組みをスタートした。まずは、経営陣がワークライフバランスの取り組みを表明。会社の経営目標として取り組むことを明確に示した。トップの本気度が伝わった。

経営トップを講師として、ワークライフバランスセミナーを社内で開催し、全従業員が受講。ワークライフバランスとは、ほどほどに働くということではなく、時間意識を高めてチームで生産性を高める取り組みであること。そのためにもプライベートな時間確保が大切であり、プライベートの充実が仕事の場での質の高いアウトプットにもつながるとの理解浸透を図った。

実際のワークライフバランス推進は、パイロットケースとなる部署を選び、スタート。少しずつ改善を重ねながら、取り組む部署を増やしていった。まずは、個人とチームごとに年間のワークライフバランス目標を設定。この目標には、仕事とプライベート、両方の軸を立てるのを決まりとした。その目標達成に向けて、月一回会議も行った。

その会議は毎月約一時間、業務の問題点を出し合い、課題解決のためのアクションプランを策定し、PDCAで回していく。各部署の取り組みや成果については、代表者が集まってのワークライフバランス定例会で共有するのだ。ちなみに、会議もタイマーで計測しながら行っている。

その他に、毎日実施しているという、朝夜メール。毎朝、各自が一日のスケジュールを最小一五分単位で作成し、チーム全員にメール送信するというもの。さらに夕方の業務終了時には、実施した業務スケジュールにコメントを添えて送信する。チームの業務分析に活用している。その他に、ノー残業デーを毎月、特定日に実施している。


総合的な施策が実を結ぶ

経営トップの宣言から始まり、セミナーの実施、会議での進捗確認、そしてさまざまな施策。このようにどれか一つを行うのではなく、総合的に、そして継続的に行うことが成功の要因である。特に、毎月の進捗確認会議が効果を発揮している。

それぞれが主体的に目標を定め、それを会議の場で確認していく。仕事の目標だけではなく、プライベートの目標も定めているところが会議をなごやかな場にしており、単なる仕事の会議でないところが長続きしている所以であろう。

また、プライベートと連動させることで、プライベートの充実が本業にも好影響を与えることが事例を通じて理解できるのも、個々の参考になったことだろう。しかも、他社の事例では親近感がないため、身近な自社の社員の事例を紹介した点に最も効果がある。自らも取り組もうという気持ちにさせるものだ。

ワークライフバランス。聞かれて久しい言葉だが、コロナ禍において、今一度見直してみるキーワードではないだろうか。

この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

著者プロフィール

author_item{name}

豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

この著者の他の記事(全て見る

bizoceanジャーナルトップページ