このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

チェンジマネジメントによる企業変革のススメ|事例で読み解く成功のカギ

著者:   bizocean編集部

チェンジマネジメントによる企業変革のススメ|事例で読み解く成功のカギ

従業員の心理的な反発を軽減しながら変革を浸透させる「チェンジマネジメント」は、近年の企業において必須の手法として注目されています。

本記事ではチェンジマネジメントの概要をはじめ、具体的な進め方や失敗を防ぐポイント、企業の成功事例を紹介します。


企業変革のカギとなるチェンジマネジメントとは

「チェンジマネジメント」とは、特定の組織が目指すべき姿に変革する際、組織に適用される変革で生じる反発や混乱を最小限にとどめ、効率的に変革を成し遂げる手法をいいます。

同じく組織の抜本的な変革を目指す経営手法の一つに「BPR」(業務プロセス改革:Business process reengineering)があります。しかしBPRでは失敗に終わる場合も多く、すでに定着した経営戦略や組織体制を大きく変えるのは困難を伴います。

たとえば、新しいシステムや新規事業の導入、新規市場の開拓などを唱えると、それらの変革に対し、後ろ向きまたは懐疑的な内部の反発があることはイメージしやすいでしょう。

チェンジマネジメントは、このような従業員の心理的抵抗を軽減しながら、組織改革を円滑に進めることを目指す際に効果を発揮します。


チェンジマネジメントの重要性

チェンジマネジメントの重要性が増している最大の理由として、現代社会が変化の激しい時代であることが挙げられます。情報技術をはじめとしたテクノロジーの進歩により、新しい製品やサービスが次々と生み出され、従来の概念やビジネスモデルが容易に廃れるようになりました。

特に現代は「VUCA」の時代であるといわれています。VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)のそれぞれの頭文字をとった言葉で、先行きが不透明で未来予測が困難な状況を表しています。

このような状況の中で企業が継続的に発展し成長するためには、変化に合わせて経営戦略や事業方針などを変革する柔軟な対応が不可欠です。ところがいざ改革をしようとしても、後述する「チェンジモンスター」に代表されるように現状維持や変化を嫌う人が一定数おり、従業員の共感を得られなければ改革は進みません。

そこで有用性が増しているのがチェンジマネジメントの手法なのです。


チェンジマネジメント計画の具体的な手法・進め方

では、チェンジマネジメントは具体的にどのような手法を取るのでしょうか。チェンジマネジメントは次に挙げるフレームワークが知られており、基本的にはこれに従って進めます。

1.変革の必要性・緊急性の共有

チェンジマネジメントの最初の段階は、必要性と緊急性を明確にし、社内で共有することです。

強引に改革を推し進めたとしても、従業員一人ひとりが「なぜそれが必要なのか」「本当に今すぐ着手すべきなのか」といったことが理解できていないと共感は得られません。通常、共感できないことを進んでやりたがる人はいません。まして組織の変革には必ず現場の従業員に負担が伴います。

必要性や緊急性を共有する際は、企業や取り巻く環境がどういう状況なのかをデータで示し、可視的に必要性を訴えられるようにすることで効果が得られやすくなります。

2. 変革推進チームの結成

変革の必要性を共有した後は、変革を推進するチームを結成します。計画を成し遂げるには強いチームを作ることが肝要です。そのために必要な人材を集めます。

具体的には権限や人脈、スキル、人望といった面で秀でた能力を持つ従業員が望ましいでしょう。

3. 変革ビジョン・戦略の設定

次に変革への具体的なビジョンや戦略を設定します。ビジョンとは、事業を通して「成し遂げたいこと」や「将来の目指したい像」のことです。明確なビジョンを策定することが望ましいでしょう。

その際、企業はもちろんのこと、従業員やカスタマーにとってもメリットがあることが前提です。またビジョンは実現不可能な夢物語ではなく、達成できる目標でなければなりません。

4. 社内での共有

次の段階として、定めたビジョンと戦略を社内に周知徹底する必要があります。この際、全従業員にはっきりと伝える必要があります。多くの場合は全体会議で一回共有するだけでは不十分です。部署ごとにも伝達を試みます。

社内の共通認識が高まってこそ改革がスムーズに進むため、あらゆる方法を駆使して繰り返し従業員への伝達を行う必要があるのです。

5. 社員の自発的行動をサポート

ビジョンや戦略が効果的に共有されると、従業員の自発的な行動が見られるようになるはずです。その段階で必要となるのが従業員の自発的な行動をサポートすることです。

具体的には、まず改革の実現につながりそうな行動をリストアップします。その行動に際して社内のシステムや制度、体制などに障害があれば除去します。

また従業員の自発的行動を正当に評価したり、フィードバックしたりする仕組みも検討します。

6. 短期的な目標設定と達成

自発的行動が浸透してきたら、短期的な目標を設定して達成させる試みを行います。

通常、ビジョンの達成までには時間がかかり、モチベーションを維持するのは容易ではありません。具体的に数値化した短期目標を達成させることでモチベーションの低下を抑制できるのです。

それなりの成果が得られたら社内で共有したり、貢献した従業員に報酬を与えたりするのも一つの手です。

7. さらなる変革の推進

短期目標の達成を繰り返しながら、さらなる変革を推進します。ここまで進んでいれば、改革への意識が従業員に根付いてきているといえます。

短期目標の工程で見つかった課題や障害などへの対応も検討します。また、従業員の教育や新規採用なども視野に入れて改革を進めます。

8. 変革の定着

ここまでの工程で得られた業務や制度の変革が定着すれば、目標達成です。結果を振り返ると同時に変革の総括を社内で共有します。


チェンジマネジメントの失敗を防ぐポイント

では、チェンジマネジメントの失敗を防ぐにはどのようなことに気をつければいいでしょうか。チェンジマネジメントを阻害する要因として、「チェンジモンスター」の存在がまず考えられます。

ボストンコンサルティンググループの経営コンサルタントを務めたジーニー・ダックは、著書『チェンジモンスター:なぜ改革は挫折してしまうのか?』において、変革に積極的ではない従業員を「チェンジモンスター」としてキャラクター化した上で、いくつかのパターンに分類しています。

具体的には以下のようなものです。

  • タコツボドン
    自分の業務に閉じこもり、他部署との連携を軽視する
  • ウチムキング
    社内の評価に固執し、顧客や社会的な視点が欠如してしまう
  • カコボウレイ
    過去の経営者が関わった事業や開拓した取引先の見直しを議論できない
  • ミザル・キカザル・イワザル
    「見ざる、聞かざる、言わざる」の態度で改革が過ぎ去るのを待つ
  • ノラクラ
    「前例がないから」「人手が足りないから」などと、できない言い訳をまき散らすのが得意
  • マンテン
    リスクを完全に排除したデータなどに基づかないと動かない
  • カイケツゼロ
    課題指摘や理由の説明には長けるものの、自身で解決策を見いだすことはない

このような従業員がいることを考慮した上で、同著では改革を進めるポイントとして「グローバルな競合をベンチマークとする」「覚悟をもって改革を進められるリーダーを選出する」「成功にはハイリターンを与える」といったことを挙げています。

国内競合だけを基準にしていては、「成熟業界は低収益である」という考えに陥ってしまいがちです。また、業界全体の業績が悪化した場合は自社の業績悪化も当然と考える風潮ができてしまいます。グローバルな競合を基準とすることで、そのような言い訳から脱却できるのです。

また、変革リーダーの信念や情熱は周囲に波及するため、士気を高めるには適任のリーダーを選出することが重要です。改革リーダーは、通常業務とは異なる困難やキャリアへのリスクがあるため、そのリスクに見合うだけのハイリターンで報いる必要があります。

参照元:https://web-assets.bcg.com/img-src/japan%20tembo-146-change%20monster_1oct2002_tcm9-169992.pdf

また、「チェンジモンスター」には当てはまらなくても、変革についていけない社員が必ず出てくることも考慮しましょう。

先述した8つのプロセスを確実に実行することでチェンジマネジメントを失敗することなく推進できるでしょう。


この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

著者プロフィール

author_item{name}

bizocean編集部

この著者の他の記事(全て見る

bizoceanジャーナルトップページ