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ナッジ理論とは? ビジネスで活用する方法を紹介

著者:   bizocean事務局

ナッジ理論とは? ビジネスで活用する方法を紹介

ナッジ理論は、人間の行動経済学に基づいた理論として、近年注目されている考え方です。

日常生活からビジネスシーンまで、様々な場面で利用されています。

本記事では、ナッジ理論とは何か、フレームワークを踏まえて活用方法や活用事例を解説していきます。


ナッジ理論とは

ナッジ理論とは、人々の行動を罰則やインセンティブで強制するのではなく、本人が自然と選択するように誘導する手法や戦略のことです。

ナッジ(nudge)とは「注意を引くために軽くつつく」「そっと後押しする」という意味があります。

ナッジ理論は、アメリカの経済学者リチャード・セイラー氏によって提唱され、教授がノーベル賞を受賞したことによって世間に広まりました。

たとえば、トイレの張り紙に「いつも綺麗に使っていただき、ありがとうございます」と書いて綺麗に利用することを促したり、レジ待ちの場所を足跡のステッカーで示して、整列を促したりする事例が挙げられます。


ナッジ理論を理解するための考え方(フレームワーク)

ナッジ理論を体系立てて理解したり、活用するために役立つフレームワークが複数あります。

  • EAST
  • NUDGED
  • MINDSPACE

これらを一つずつ解説していきます。

EAST

EASTは、Easy・Attractive・Social・Timelyの4つの頭文字からなる言葉です。

ナッジ理論を実践するための効果的なフレームワークで、イギリス政府もナッジ理論の活用において「特に有効的だった」と発表しています。

それぞれの要素は、下記のとおりです。

Easy(簡単にする)

選択肢を簡素化し、煩わしさを減少させることで行動を促す。


例)記述式ではなく選択式でアンケートを用意する

Attractive(魅力的にする)

報酬や特典など魅力的な要素を提供することで、人々の行動を促す。


例)成果に対する表彰制度を導入する

Sosial(社会性を持たせる)

行動に社会性を取り入れ、他者との共感を喚起する。


例)「8割の人が参加した」との記載を付ける

Timely(適切なタイミング)

適切なタイミングでアプローチすることで、行動しやすさを高める。


例)出産前のタイミングで生命保険を勧める

NUDGED

NUDGEDは、ナッジ理論の基礎的なフレームワークで、アメリカの経済学者リチャード・セイラー氏と法学者キャス・サンスティーン教授によって提唱されました。

それぞれの要素について説明します。

iNcentives

(インセンティブを与える)

インセンティブを導入して、行動を促す。


例)商品に小さなおまけを付ける

Understand mappings

(得られる結果を理解させる)

選択によってどのような結果が得られるか、選択者が理解できるようにする。


例)グラフやイラストで選択後の結果を伝える

Defaults

(初期設定にする)

特定の選択を促すため、選んでもらいたい選択肢を初期設定にする。


例)同意画面では「同意する」の選択肢を初期設定とする

Give feedback

(フィードバックする)

次回以降の行動を改善するために、行動の結果を的確かつ迅速にフィードバックする。


例)カメラの撮影結果の簡易表示機能

Expect error

(エラーを予期する)

予測可能なエラーに対処するため、事前に対策を講じる。


例)アイロンの自動電源オフ機能

Structure complex choices

(複雑な選択肢は整理する)

複雑な選択を整理することで、選択しやすくする。


例)通販サイトでの商品のカテゴリ分け

MINDSPACE

MINDSPACEは、行動選択における人間の特性を示したフレームワークです。

考案した施策が、ナッジ理論の要点を押さえているか否かを確認する際に活用されます。

以下の各項目で、人間の特性について解説します。

Messengers(メッセンジャー)

権威のある人や自分にとって重要な人からのメッセージに強く影響される。信頼性のある発信者からの情報は、行動選択において大きな影響を与える。

Incentives(インセンティブ)

人はインセンティブを得るために行動し、選択しなかった場合の損失を避けようとする傾向がある。利益や報酬などが行動の決定に影響を与える。

Norms(規範)

ほかの人に影響を受けて同じ行動を取りやすい。社会的な規範や他者の行動が、自身の選択に影響を及ぼす。

Defaults(デフォルト)

初期設定の選択肢を選びやすく、人は手間をかけずにそのまま進む傾向がある。選択の手軽さは行動に影響を与えやすい。

Salience(顕著性)

視覚的なインパクトのある目立つものや、自分に関係するものに注意が向きやすい。

Priming(プライミング)

前もって与えられた情報や刺激が後の行動に影響を与え、無意識の潜在意識が行動の呼び水になる。

Affect(情動)

その時の感情が行動に影響を与える。

Commitments(コミットメント)

人は口に出したり書き留めたりすることで、自分の行動を変化させる傾向があり、公表した約束を守ろうとする。

Ego(エゴ)

人は自分の都合のよいほうへ動こうとする。個人の自己中心的な動機が行動選択に影響を与え、自己満足や都合のよい結果を追求する。


ナッジ理論をビジネスで活用する方法

ナッジ理論をビジネスで運用するためには、どのような方法を取ればよいのでしょうか。

ここでは、BASICというプロセスフローに沿って、ビジネスでの活用法を順番に紹介します。

1.行動(Behaviour)

ビジネスでナッジ理論を利用する場合、まず一連の行動一つひとつを見直して、行動のなかにある課題を洗い出しましょう。

対象となる行動を観察し、どこに課題があるのかを考えます。

その際、状況や感情ではなく、行動そのものに焦点を当てることが重要です。

2.分析(Analysis)

次に、洗い出した課題に対して、行動経済学的な視点を加えて問題を分析します。

「なぜ人々がその行動をするのか」という裏側の背景も考慮して、行動者の心理状態も分析しましょう。

3.戦略(Strategy)

分析した問題に対して、ナッジ理論を適用した対応策を立てます。人々の行動の目的と、自分達が達成したいことの両面から考え、アイデアを練ります。

複数のナッジを組み合わせることも可能ですが、対応策が複雑になりすぎないよう注意が必要です。

4.介入(Intervention)

アイデアを考えたら、どのように実行するかを具体的に決定します。この時、現場の関係者の意見も取り入れることで、より実用的な施策へと落とし込むことができます。

また、実行する際は、改善に向けたデータを記録することが重要です。目的に対して、どのように効果を検証するかも事前に考えておきましょう。

5.変化(Change)

ナッジ理論を基に実行した施策が、どの程度行動変容を起こせたのか測定します。

実際の購買データや、顧客の声をヒアリングするとよいかもしれません。

その結果を根拠に、施策の改良や別の現場への横展開などに活かすことが可能です。


ナッジ理論の注意点

ナッジ理論は、ビジネスにおいて非常に効果的な行動理論ですが、利用するうえで気を付けなければならないこともあります。

以下の注意点を踏まえて、有効活用できるようにしましょう。

明らかな強要をしない

ナッジ理論を使用する際は、明らかな行動の強制や強要をしないよう留意が必要です。

理論を多用したり、あからさまな誘導があると、選択者は「操られているのではないか?」と疑念を抱き、促したい行動と逆の行動を取ってしまう場合があります。

分かりやすい誘導や強制的なアプローチは避け、あくまでも自然な誘導を心がけましょう。

自然な選択を妨げない

ナッジ理論を悪用して、自然な選択を妨げないように気を付けましょう。

人間の行動特性を悪用して、選択者の意図しない選択肢に誘導するナッジは「スラッジ」と呼ばれ、リスクの高い行為に該当します。

たとえば、解約という行動を避けるために解約手続きを故意に複雑にすることや、何度も解約を引き止めることなどが挙げられます。

解約という行動を阻止できたとしても、かえって企業イメージや信頼性に悪影響を与えかねないので注意してください。


ナッジ理論の活用事例

ここまで、フレームワークやビジネスでの活用方法、活用する際の注意点を解説してきました。

ナッジ理論を活用した具体例について、知りたい方もいるでしょう。

マーケティング・人材教育・身近な場面の3つに分けて、成功事例を紹介します。

マーケティングでの活用例

販売業における有効な活用例として、商品の売上げランキングを店舗やWebサイトで表示することが挙げられます。

ランキングを通じて多くの人が何を購入しているかが明示されると、自然な形で顧客に消費を促すことができるでしょう。

他者の選択が明確になることで商品やサービスへの信頼感が高まり、顧客は商品の選択に自信を持つことができます。

人材教育での活用例

ナッジ理論は人材教育においても活用が可能です。

たとえば、新入社員に向けて、メールや口頭で簡単なリマインドを行うことが挙げられます。

様々なタスクをこなす新入社員に対して「◯日までにやりなさい」と強制するのではなく、意識が上がるような内容のメールを定期的に送ってみましょう。

新入社員に対し、意識向上につながるメールや自発的な行動を促すリマインドを繰り返し送ることで、実際に生産性がアップした例もあります。

身近な活用例

ナッジ理論の身近な例として、オランダ空港の男子トイレが挙げられます。

オランダ空港では小便器まわりの汚れがひどく、清掃のために人件費がかかることが問題となっていました。

そこで、小便器に小さなハエの絵を描いたところ、利用者がハエを狙って用を足すようになり、清掃費が大きく減少したとのこと。

床の汚れで清掃費用がかかるという問題が、行動を強制することなく、ナッジ理論の活用で解決につながった有名な事例です。


まとめ

ナッジ理論は、ビジネスにおいても有効的な手法であり、実際に様々なシーンで活用され、効果を発揮しています。

ナッジ理論をビジネスに利用する際は、逆効果になってしまうのはどのようなケースかを把握したうえで、正しい手順を踏まえることが重要です。

ナッジ理論の活用方法や注意点を正しく理解して、ビジネスに有効活用しましょう。


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bizocean事務局

bizocean(ビズオーシャン)とは、トライベック株式会社が運営する「仕事の面倒を失くして、新しいビジネススタイルを提案する」をモットーとしたビジネス情報サイト。主なサービスに「bizocean(ビズオーシャン)」、「書式ガイド」、「incore」などがある。

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