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iDeCo・ふるさと納税・NISAの基礎

著者: 税理士  髙橋 昌也

iDeCo・ふるさと納税・NISAの基礎

長引く社会不安もあり、将来の生活について漠然とした不安を抱く方が増えています。

その影響もあり、最近では副収入の獲得(不動産投資や副業など)、保険の見直し、また節税に関する情報を多く目にするようになりました。

今回は、特に目にすることが多い「iDeCo」「ふるさと納税」「NISA」の3つの制度について、その基本部分を確認していきます。


○大前提となること

iDeCo、ふるさと納税、NISAについて検討するに当たり、前提があります。

・自分や家族の収入や税負担を把握すること

これらの制度について、多くの方が「なんとなく税金的にお得な制度」ということは把握しています。その一方で、これらの制度について「誰がやってもお得なサービス」という勘違いをしてしまっている人もいるようです。

特にiDeCoやふるさと納税は、現時点でそれなりの収入があり、ある程度の税負担をしている人でなければ有効活用するのが難しい制度です。

給与生活者であれば、年末に発行される源泉徴収票を読み解く必要があります。確定申告をしている人であれば、申告書の控えを用意しましょう。

・余裕資金で取り組むべき

すでに生活費がカツカツの状態なら、優遇策を使う余裕などありません。また、どの制度にしても、一時的に手許のお金を失うことになります。その資金負担に耐えられることが必須です。

しかし、大変残念ながら、そういった家庭の支出状況を把握せず「とりあえずお得らしいから」という理由で各制度に取り組んでいる方もチラホラ。結果、むしろ家計が圧迫されてしまう人も出ています。

***

実際に各制度の活用を検討するに当たっては、現状把握が必要不可欠です。


○iDeCoの基礎

まずiDeCo(イデコ)について。この制度は、日本語では「確定拠出年金」と言います。言い換えると「拠出(支払う掛け金)が確定している年金」です。これは、

・同じ掛け金を支払っているとしても、人によって将来受け取る年金額が変わる

ということを意味しています。実際にiDeCoを始めると「どのような方法で年金を運用するのか」について、自分で決めなければなりません。低リスクな定期預金タイプもあれば、外国株式を中心に運用する高リスクなタイプもあります。本人が選んだ運用手法によって、将来受け取れる年金の金額が大きく変化します。

そして年金制度の一環なので、税制的な優遇が用意されています。まず支払った掛け金は、支払った年の税金計算上、所得控除の対象となります。

単純化した事例

Aさんは所得に対して3割の税金を負担。今年、iDeCoの掛け金を20万円支払った。

→ 20万円 × 0.3 = 6万円の節税

その人の税負担状況に応じて、毎年節税を図ることができます。

掛け金を支払って運用された結果、利益が出て年金資産が増えたとします。その利益に対する税金はかかりません。通常の株式や不動産運用で利益が出れば課税されることを考えると、大きなメリットです。

そして年金を受け取るときには「年金形式」「一時金形式」「年金と一時金の組み合わせ」の3つの種類から選びます。どの方法で受け取るとしても、比較的税負担が重くならないような配慮がされています。

厚生労働省のサイト

※iDeCoのメリット

毎年支払う掛け金が所得控除対象。運用面でも優遇され、年金を受け取るときにも税制的には比較的優遇されている。高いリスクを取ることで、大きな運用益を得ることも可能。

※iDeCoのデメリット

掛け金の所得控除は、現時点でそれなりに所得がないと活用しきれない。また年金という制度上、支払った掛け金は長期間に渡って使うことができない。リスクを取らなければ大きな運用益は期待できず、また高リスクを取った場合、運用損が発生する可能性があることにも留意が必要。


○ふるさと納税の基礎

次はふるさと納税です。納税という名前がついていますが、正しくは地方自治体に対する寄付行為です。寄付を通じて事実上の納税に等しい行為をしていることから、この制度名が定着しています。

ふるさと納税をどれだけ行っても、税金は減りません。つまり節税策ではない、ということを最初に理解する必要があります。制度の概要は、

・支払った寄付金のうち、自己負担額2,000円を除いた金額について、所得税や住民税が控除される。ただし一定の制限金額がある。

このようになっています。更に本制度を支援する仕組みとして、地方自治体への寄付金額に応じて、一定の返礼品をもらえます。つまり、実際の運用で考えてみると、

・自分の好きな地方自治体に、制限金額までの寄付をする。自己負担額の2,000円はあるが、残額は所得税や住民税から控除され返礼品が受け取れる。実質的には2,000円という自己負担額だけで返礼品というプレゼントを受け取ることができる。

これが実情です。なお、制限額についてはふるさと納税に関する各サイトで大まかな金額を調べることが可能です。総務省ポータルサイトにも大まかな目安が載っています。

税額控除の適用を受けるためには、本来は確定申告が必要ですが、給与所得者向けのワンストップ制度も用意されています。対応を間違えると適用漏れの可能性がありますので、自分に必要な手続きを忘れないようにしましょう。

※ふるさと納税のメリット

制限金額の範囲内であれば、2,000円の自己負担額で様々な返礼品を受け取ることができる。

※ふるさと納税のデメリット

それなりの税負担がある人でないと、大きなメリットは見込めない。また経済状況が大きく変動すると、ふるさと納税の制限金額も大きく変わるので、収入が安定しない人は適切な運用が難しい側面もある。


○NISAの基礎

最後はNISAの基礎です。NISAで行うのは株式や投資信託に対する投資です。通常、これらの投資を行うと、その譲渡益や受取配当金に対して、約20%の税金がかかります。しかし、NISA口座を通じて一定の限度内で購入した金融商品の運用から生じた利益に対しては、税金が課されません。

NISAにはいくつかの種類があります。

金融庁サイト

・NISA

2014年にスタートした制度です。株式や投資信託など、運用手法にはある程度の幅があります。毎年120万円までの新規投資額について、その運用益が非課税となります。非課税期間は最長で5年間です。

・ジュニアNISA

2016年に登場した、NISAの未成年バージョン(0~19歳)です。毎年80万円までの新規投資額について、その運用益が非課税となります。非課税期間は最長で5年間です。また18歳までの払出し制限もあります。

・つみたてNISA

2018年に登場した、より投資の初心者を意識した制度です。運用手法は、長期分割投資にふさわしい投資信託に限定されています。毎年40万円までの新規投資額について、その運用益が非課税となります。非課税期間は最長で20年です。

その人の投資手法や年齢に応じて、どのNISAを活用するのか選択することになります。またどの制度についても、購入期間に定めがあります(今後の法改正等がなければ、非課税で購入できる期間は上記より短い)。

※NISAのメリット

各種NISA口座を通じて購入した株式や投資信託の運用益が非課税になる。特に長期分散投資を目指す場合、かなりメリットが大きい。

※NISAのデメリット

あくまでも金融投資なので、損失が出る可能性がある。またNISA口座で損失が出た場合、一般口座の利益と相殺することができない。


○まとめ

iDeCoふるさと納税NISAは「お得な制度」として混同されがちですが、性格がかなり異なります。それぞれの特性を理解して、自分にあったものを選びましょう。

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著者プロフィール

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髙橋 昌也

税理士

プロフィール
1978年川崎市産まれ。
2006年税理士試験合格、2007年に独立開業。東京地方税理士会川崎北支部所属。同年、FP資格取得。
開業当初より「ちいさなお仕事の支援」に特化して事業を展開。
単なる税務にとどまらず、顧客の事業計画策定を支援するなど業務全般の支援を実施。

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