ニーズとは? 種類やウォンツとの違い、把握方法まで解説
ニーズはビジネスシーンで「(顧客の)要求や理想」を指します。特にマーケティングをするに当たって、顧客ニーズの把握は欠かせません。
今回は、ニーズの概要や重要性、種類などを解説します。顧客ニーズを把握する方法や、ニーズを活用した成功事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ニーズとは?
ニーズは人が求める理想像のことを指します。このニーズがビジネスシーンにおいて重要だと言われるのは、マーケティングの基盤となるものだからです。
まずはニーズの概要と共に、ニーズを把握する重要性や類似語との違いをみていきましょう。
ニーズの概要
ニーズとは主に「要求」「求めているもの」という意味を持ちます。個人や組織が、欲求、不満、欠乏などを抱えている状態です。
ビジネスにおけるニーズは「顧客が求める理想的な姿や状態」のことで、ユーザーが持つ理想や欲望と、実際のサービス内容とのギャップとして捉えられます。特にマーケティングに重要な要素です。
ビジネスをするにあたって必要なことは、顧客の要求や理想などのニーズを満たすことです。
ニーズを把握する重要性
ニーズの把握が重要な理由は、「競合との差別化」や「具体的な施策の展開」によって、マーケティングの基盤を整えられるからです。
ニーズを把握することは、競合他社との差別化をする段階において欠かせない作業です。顧客のニーズに対して、競合他社が何を強みにし、どのようなサービスを提供しているかを明確にできます。
また具体的な施策の展開をする際にも、ニーズの把握が役立ちます。顧客のニーズを深堀りすることは、新たな商品開発や既存サービスの改善をする上で欠かせません。
ニーズの把握をするための方法として、大きく以下の2つが考えられます。
- 市場調査
- 顧客からフィードバックをもらう
こうした方法で知ったニーズを、自社の商品やサービスに反映させることで、売上アップが見込めます。また、顧客満足度の向上につながり、顧客との長期的な関係を構築することができるでしょう。
ウォンツとの違い
「ウォンツ」とは、人が現状に不足している物事を満たすために要求する「手段」「方法」のことです。一方、ニーズは、顧客がウォンツ(手段・方法)を要求する「本質的な目的」を指します。
つまり顧客がニーズ(目的)を満たすために、サービスや商品、機能などのウォンツ(手段・方法)を求めるという関係があります。
例えば「家で映画を見たい」というニーズがあったとしましょう。この場合、ウォンツには以下のようなものが挙げられます。
- PCで見る
- DVDで見る
- プロジェクターを使う
- 映画をVODから選ぶ
ニーズは人間に共通する根源的な欲求である一方、ウォンツは個性や文化、経験によって異なります。
顧客の本質的なニーズを知るため重要なことは、個々によって異なる要望からウォンツを見極め、理解を深めることです。
ニーズの種類
ニーズには主に以下の7種類があり、それぞれ以下のような特徴があります。
ニーズの種類 |
概要 |
備考 |
---|---|---|
顕在ニーズ |
顧客自身が明確に自覚している欲求、要求 |
顧客が自覚をすることで、潜在ニーズから顕在ニーズとなる |
潜在ニーズ |
顧客自身が自覚していない欲求、要求 |
|
基本的ニーズ |
人間が生活を送るうえで最低限必要とされる要件、権利 |
基本的ニーズを満たしたあとで高次な副次的ニーズが生まれる |
副次的ニーズ |
基本的ニーズを満たしたあとに生まれるより高度なニーズ |
|
機能的ニーズ |
製品の機能や品質に対する価値 |
ー |
情緒的ニーズ |
顧客自身の感情や精神面を満たす欲求 |
ー |
顧客ニーズ |
顧客が生活の中で感じる不満や、現実とのギャップによって生じるニーズ |
上記6つをすべて内包する |
ここからはそれぞれのニーズの特徴を説明していきます。
顧客ニーズ
顧客ニーズとは、顧客が生活の中で感じる不満や現実とのギャップを満たすために生じる、欲求や要望のことです。顧客ニーズは、さらに以下の2つに細分化できます。
- 顕在ニーズ:明示的な要求や希望
- 潜在ニーズ:顧客自身が気づいていない隠れたニーズ
顧客ニーズを理解することで、需要に応じた商品やサービスを提供でき、顧客を中心としたアプローチの基盤となります。
顕在ニーズ
「顕在ニーズ」は、顧客自身が明確に認識しているニーズを指します。欲しいものやサービスなどを、ユーザー自身が明確に自覚している状態です。
「睡眠の質を上げたい」という欲求に対して、「良い枕が欲しい」という具体的なモノへの欲求が、顕在ニーズです。
顕在ニーズを持つ顧客は、ニーズを満たすために購買行動を起こす可能性が高いでしょう。そのため顕在ニーズを持つ顧客は、商材やサービスを提供する際の優先的な対象となります。
潜在ニーズ
「潜在ニーズ」は、顧客自身が具体的な欲求や要求について自覚していない状態のニーズを指します。 例えば、「綺麗になりたい」「ぐっすり眠りたい」など抽象度の高い欲求や悩みが挙げられるでしょう。
潜在ニーズは結果や売上傾向から考察しにくく、企業にとって把握しづらいニーズです。いきなり潜在ニーズを探ろうとするのではなく、まずは顕在ニーズから掘り下げていくことで、どのような潜在ニーズがあるかも見つけやすくなるでしょう。
顧客は自身のニーズを明確に把握していないため、特定の商品やサービスを顧客に提供する解決方法が常に最適とは限りません。
顧客の悩みや不安に関するヒアリングや調査を行い、不満を把握して対処する提案が必要です。
基本的ニーズ
「基本的ニーズ」とは、国際労働機関(ILO)が提唱した、人間が生きる上で最低限必要な要件や権利のことです。以下のような家庭の最低限の生活水準や、社会によって提供される基礎的なサービスを含みます。
- 衣食住
- 水
- 衛生設備
- 医療
- 教育
ビジネスにおいての基本的ニーズは、「顧客が最低限必要としているもの」のことです。
副次的ニーズ
「副次的ニーズ」は、基本的ニーズが満たされた後に生じる欲求のことです。基本的ニーズが満たされると、顧客はより高度な欲求や要求である副次的ニーズを持つようになります。
基本的ニーズの「衣」で例えると、最低限の寒さを防げる上着を手に入れたら、次は「おしゃれな上着が欲しい」という欲求が生まれる、というようなイメージです。
この副次的ニーズは、生活の質や快適さ、環境への配慮などに関連する場合があります。
ビジネスにおいて、顧客の満足度や忠誠度を高めるためには、副次的ニーズに応えることがとても重要です。
機能的ニーズ
「機能的ニーズ」は、顧客が直接的に求めている、商品・サービスの機能や品質のような価値を指します。例えば、視力の低下で悩んでいるユーザーが「自分に合った度数のメガネが欲しい」と考える欲求などが挙げられるでしょう。
機能的ニーズによって商品やサービスの価値が評価されるため、顧客にとっても提供する会社にとっても重要な要素です。
常に改善やイノベーションを行い、優れた機能を顧客に提供することで、競合他社との差別化も図れます。しかし機能は他社に模倣されることもあります。機能的ニーズに応えるだけでなく、商品やサービス全体の改善に他のニーズも考慮した上で取り組みましょう。
情緒的ニーズ
「情緒的ニーズ」とは、商品やサービスに対して感じる感情的な欲求や期待のことを指します。機能的ニーズが製品の実用的な側面に関わるのに対し、情緒的ニーズは、心理的な満足感や高揚感などの感情的な部分に訴求します。
例えば、高級ブランド品を購入する際には、品質の高さだけでなく、所有することによる優越感や自己表現といった情緒的ニーズが影響しています。
また、旅行やエンターテインメントでは、非日常的な体験がもたらす高揚感や開放感が重要な要素となるでしょう。
企業がマーケティング戦略を立てるうえでは、顧客の情緒的ニーズを的確に捉え、製品やサービスに反映させることが欠かせません。単に機能的なニーズを追求するだけでなく、体験そのものに付加価値を与え、顧客の感情に訴えかける工夫が求められるのです。
顧客ニーズを把握する方法
顧客ニーズを把握するためにおすすめの方法は以下の4つです。
- アンケートを実施する
- ソーシャルリスニングで分析する
- ウォンツからニーズを探る
- 競合データを分析する
それぞれの方法で顧客ニーズをどのように把握するか解説します。
アンケートを実施する
顧客の声を直接聞いてニーズや要望を深く理解したいときは、アンケートが役立ちます。
アンケートを通じて、製品やサービスに対する顧客の反応や評価を具体的に把握し、潜在的なニーズを引き出せます。
ただし効果を最大限に引き出すためには、目的やターゲット層の設定を明確にしておくことが必要です。また正確性を高めるためには、アンケートの回答数を増やさなければなりません。
ソーシャルリスニングで分析する
データ収集で多くのサンプルが必要な場合は、「ソーシャルリスニング」が有効です。
インターネット上から消費者の生の声を大量に収集し、分析する手法です。
顧客の評価や評判を知ることで、ニーズや要望を深く理解でき、より消費者目線のマーケティングを行いやすくなります。
インターネット上から意見を拾うため、アンケートよりも大量に消費者からの意見を集められます。しかし発信者の属性や真意が分かりづらいため、できるだけ信頼性ある情報を担保するようにしましょう。
ウォンツからニーズを探る
対面でのインタビューや会話を通じてウォンツからニーズを探ることも、顧客が本質的に何を求めているかを知る上で重要な方法です。
顧客がとった行動や選択した方法に対して質問を顧客に繰り返すことで、潜在的なニーズも把握できます。
例えば「赤いTシャツを買った顧客」に対して、
・なぜTシャツを買ったのか
・なぜ赤を選んだのか
・どうしてそのお店を選んだのか
のように質問を重ねる方法です。
これらの調査によって集められる定性的なデータにより、詳細で明確な顧客ニーズを把握できます。
競合データを分析する
競合データを分析することは、顧客ニーズを把握して商品やサービスの改善をする上で非常に重要です。人気のある商品やサービスを分析すると、市場トレンドを掴むことができます。
ターゲット層が何を求めて競合の商品やサービスを利用しているかが分かるため、自社と競合との差分の把握にもつながるでしょう。
売上や市場占有率などの競合の状況だけでなく、競合の製品やサービスが持つ強み・弱みも分析しましょう。インタビューやSNS上の投稿などから、競合に対する意見を調査することでも競合分析ができます。
ニーズ発想の事例
最後に顧客ニーズを把握して成功した商品の事例を2つご紹介します。
どちらも今では当たり前のように使われているものですが、どのようにしてニーズ発想に至ったのでしょうか。
WALKMAN
1979年に発売されたSONYの「WALKMAN」は、「カセットテープを持ち運びたい」という当時の顧客ニーズに応えるために発売されました。コンパクトで軽量なデザインと、高音質を実現し、イヤホンの付属や耐久性がとても人気の商品です。
音楽を持ち歩くという新たな行動を生み出したSONYは、ニーズ発想によって市場地位を確立しました。
フィットネストラッカー
フィットネストラッカーは、ユーザーの運動記録を自動的に取得するデバイスです。健康管理アプリのようにユーザーが自発的に利用するものではなく、身に着けるだけで記録・分析をしてくれます。
フィットネストラッカーは、継続的に、自動的に健康管理をしたい顧客の潜在的なニーズに応えています。定期的な運動や健康管理のサポートという顧客体験を提供することで成功を収めました。
ニーズとは?まとめ
ニーズを正確に把握することは、商品開発やマーケティングの成功に欠かせません。
顧客のニーズへのアプローチによって得られる主な成果は、顧客満足度の向上による企業成長です。顧客からの評価や忠誠度が向上し、売上や利益の拡大に貢献します。さらに、他社を意識することで、競争力の向上にもつながります。
顧客のニーズを理解し、それに基づいた戦略を展開することは、企業が成功するために常に意識すべき課題です。顧客の声に耳を傾け、ニーズを把握し、それに応じて柔軟に対応して、企業の持続的な成長と競争力の維持につなげましょう。