フィッシング詐欺の被害に遭ったお金は取り戻せるのか? 返金の可能性を探る

フィッシング詐欺とは、インターネットの利用者から経済的価値がある情報を奪う詐欺的行為のことです。
実在する企業や銀行などになりすまし、口座情報やID・パスワードなどを入力させようとするのが代表的な手口になります。
本記事では、深刻化しているフィッシング詐欺の現状や被害にあった際に取るべき行動、詐欺に合わないための予防策について詳しく解説します。
多くの方が気になる返金の可能性についても紹介しますので、ぜひご覧ください。
深刻化するフィッシング詐欺の現状
近年、巧妙化するフィッシング詐欺による被害が深刻化しています。
金融機関やECサイトを装った偽メールやWebサイトを用いて個人情報を詐取する手口が増加傾向にあり、被害者は幅広い層に及んでいるのが現状です。
フィッシング詐欺の報告件数やその手口について、以下で詳しく解説します。
増加の一途をたどるフィッシング詐欺の報告件数
フィッシング詐欺の報告件数は年々増加し、過去最多を更新し続けています。
警察庁のまとめによると、2021年のフィッシング詐欺の認知件数は前年比45.6%増の2,774件にのぼり、被害総額は約30億円にのぼると報告されました。
手口の巧妙化により、被害者の特定が難しくなっていることも件数増加の要因です。金融機関やECサイトなどを装った偽メールやWebサイトにより個人情報を詐取するケースが急増しています。
スマートフォンの普及に伴い、SMSを利用したフィッシング詐欺も増加傾向にあり、幅広い層がターゲットになっています。
個人情報を狙うフィッシング詐欺の巧妙な手口
フィッシング詐欺では、金融機関やサービス事業者になりすまして個人情報を詐取する手口が主流です。
具体的には、金融機関やクレジットカード会社を装った偽メールやWebサイトにアクセスさせ、口座情報やクレジットカード情報などの個人情報の入力を促す方法です。
その他にも、端末がウイルスに感染したと見せかけて、除去費用を騙し取るものもあります。
詐取した情報を悪用して不正送金や不正購入が行われ、被害額は数十万円から数百万円に及ぶケースもあり、手口の巧妙化が被害拡大の要因となっています。
フィッシング詐欺の被害に遭ったらまず取るべき行動
万が一フィッシング詐欺の被害に遭ってしまった場合、速やかに適切な行動を取ることが被害の拡大防止と回復につながります。被害に気付いたら、まずは以下の3つの行動を取ることが重要です。
- カード会社へ即時連絡をする
- 警察への被害届を提出する
- IDとパスワードを変更する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
カード会社へ即時連絡する
クレジットカードの不正利用が疑われる場合は、直ちにカード会社へ連絡し、カードの利用停止と不正利用の報告を行いましょう。問い合わせ先は、明細書やカードの裏側に記載されています。
不正利用が確認された場合、カード会社によっては補償制度が適用され、被害額の全額または一部が補償される可能性があります。
ただし、補償の適用にはカード会社への速やかな連絡が条件となっているため、不正利用の疑いが生じたらできるだけ早く連絡することが肝心です。
警察への被害届を提出する
フィッシング詐欺の被害は立派な犯罪です。
警察に被害届を提出することで、事件が公に記録され、捜査や補償手続きがスムーズに進む可能性があります。
被害届を提出することにより、カード会社や銀行との交渉においても有利に働く場合もあります。
被害届の提出は、犯罪の抑止や被害回復に向けた重要な一歩であり、被害の全容を明らかにするためにも欠かせない手続きです。
IDとパスワードを変更する
不正アクセスを防ぐために、フィッシング詐欺に遭った際は速やかにIDとパスワードを変更しましょう。
詐取された可能性のあるIDやパスワードを継続して使用することは、二次被害のリスクを高めることになります。
また、他のサービスで同じIDやパスワードを使い回している場合は、それらのサービスのIDとパスワードも合わせて変更することが賢明です。
被害の拡大を防止するために、ウェブサイトごとに異なるパスワードを設定することをおすすめします。
フィッシング詐欺の被害金は取り戻せる?
フィッシング詐欺の被害に遭った場合、盗まれたお金を取り戻せるのかどうかは、被害者にとって大きな関心事でしょう。
結論から言えば、補償制度が適応された場合は返金の可能性があります。しかし、状況によっては認められないケースもあるので注意しましょう。以下で詳しく解説します。
補償制度の適用で返金の可能性がある
多くのクレジットカード会社では、不正利用による被害を補償する制度を設けています。
クレジットカードの不正利用による被害の場合、カード会社の補償制度が適用されれば、被害額の全額または一部が補償される可能性があります。
ただし、補償の適用には一定の条件があるため注意してください。例えば、不正利用の発覚から所定の期間内に報告することや、暗証番号の管理に過失がないことなどが求められます。
個人に過失がなく、これらの条件を満たしていれば、補償制度の適用により返金が認められるケースがあります。
過失や期限切れで返金は難しいケースも
フィッシング詐欺の被害でも、個人の過失や補償制度の適用外、期限切れの場合は、返金が認められにくい傾向にあります。
具体的には、暗証番号の管理に過失があったと判断された場合や、フィッシングメールやWebサイトでの個人情報入力が被害の原因だった場合は、補償制度の適用外となる場合が多いです。
また、カード会社や銀行の補償制度には期限が設けられていることが一般的で、発覚から一定期間を過ぎた被害は補償の対象外となるケースが少なくありません。
被害にあった場合は、クレジットカード会社への素早い報告を心がけましょう。
返金交渉を有利に進めるためのポイント
フィッシング詐欺の被害に遭った場合、諦めずに返金交渉に臨むことが重要です。
- 法的知識を持つ弁護士に依頼する
- 加害者との直接交渉で信頼回復を目指す
- 客観的な証拠を収集・提示する
交渉を有利に進めるためのポイントを押さえて、被害回復に向けて行動しましょう。各ポイントを詳しく解説します。
法的知識を持つ弁護士に依頼する
返金交渉を進める上で、法的知識を持つ弁護士の助言は心強い味方です。
フィッシング詐欺によりクレジットカードが不正利用された場合、クレジットカード会社から被害額を含む請求が自分宛てに届くことになります。
その際、弁護士は被害状況の整理や証拠収集、法的根拠に基づく交渉など、専門的見地から適切な対応を行ってくれます。
カード会社や銀行との交渉の場に弁護士が同席することで、個人では得られない情報や交渉の機会を得られる可能性が高まるでしょう。
加害者との直接交渉で被害回復を目指す
フィッシング詐欺の加害者が特定できる場合、弁護士を介しての直接交渉を視野に入れることもできます。加害者との直接交渉は、被害回復の可能性を高める選択肢の一つです。
直接交渉は返金交渉に有効な方法ですが、加害者の特定にはハードルが伴います。
加害者の特定には高度な調査能力と法的知識が求められるため、交渉の実現には弁護士の協力が不可欠と言えるでしょう。
客観的な証拠を収集・提示する
返金交渉では、被害の実態を示す客観的な証拠が重要な役割を果たします。
被害発生の時期や金額、詐欺の手口などを裏付ける資料や記録を可能な限り収集し、交渉の場で提示することが求められます。
警察への被害届や、不審なメールのスクリーンショットなども有力な証拠です。証拠を示すことで被害の実態を客観的に訴えることができ、交渉を有利に進めるきっかけになり得ます。
フィッシング詐欺の被害を未然に防ぐために
フィッシング詐欺の被害に遭わないためには、日頃からの注意と備えが欠かせません。詐欺の手口を知り、以下のような対策を講じることで、被害のリスクを大幅に減らすことができるでしょう。
- 怪しいメールは慎重に対処する
- 公式サイトを利用する
- 強力なパスワードを設定して定期的に変更する
- 二段階認証の設定で不正アクセスを防ぐ
- 最新のセキュリティ対策で脅威に備える
- 最新の詐欺情報をキャッチして注意を怠らない
それぞれ詳しく解説します。
怪しいメッセージは慎重に対処する
フィッシング詐欺のメールやSMSは巧妙に作られているため、見分けるのが難しいのが実情です。しかし、メッセージの内容や送信元を注意深く確認することである程度の判別は可能になります。
例えば、金融機関やサービス提供者が個人情報の入力をメールやSMSで求めることは基本的にありません。そのような要求があった時点で、詐欺の可能性が高いと考えるべきです。
不審なメールやサイトは開かないように心がけてください。また、メッセージの文面に不自然な点がないか、送信元アドレスが正規のものかどうかを慎重に見極めることが重要と言えます。
公式サイトを利用する
安全にオンラインサービスを利用するには、アクセス先が正規の公式サイトであることを確認することが大切です。
怪しいメールやメッセージに記載されたURLをむやみにクリックせず、普段から利用している企業の公式サイトを直接訪問する習慣を付けましょう。
重要な情報を入力する際には、ブラウザのアドレスバーなどにも注意する必要もあります。アクセス前には、URLやSSL証明書を確認し、正規のサイトかどうかを見極めることを忘れないでください。
普段からよく利用するサイトはブックマークしておくと、偽サイトへのアクセスを防ぐことができます。
強力なパスワードを設定して定期的に変更する
強固なパスワードを設定し、定期的に変更することも有効なフィッシング詐欺対策になります。
例えば、パスワードは、英大文字・小文字、数字、記号を組み合わせた長めの文字列が理想的です。
他人から推測されにくく、かつ複数のサービスで使い回さない、ユニークなパスワードを設定することを心がけましょう。
パスワードの使い回しは、一つのサービスでパスワードが漏洩した際に、他のサービスでも不正利用される危険性を高めます。パスワードは定期的に変更し、常に強固な状態を保つことが賢明です。
二段階認証の設定で不正アクセスを防ぐ
パスワードに加えて二要素認証を設定することで、フィッシング詐欺による不正アクセスを防ぐことができます。
二要素認証とは、SMS認証やアプリ認証など、パスワードに加えてもう一つの認証手段を用いる仕組みのことです。
たとえパスワードが詐取されても、第二の認証要素があることで不正アクセスを防げるのが大きな利点と言えます。
多くのオンラインサービスやアプリで二要素認証の設定が可能になっているため、積極的に活用することを推奨します。
最新のセキュリティ対策で脅威に備える
最新のセキュリティ対策を施すことで、フィッシング詐欺の被害リスクを下げることができます。代表的な対策としては、ウイルス対策ソフトやファイアウォールの導入などです。
これらのセキュリティソフトは、フィッシング詐欺に関連するマルウェアの検知や、不正なWebサイトへのアクセスのブロックといった機能を持っています。
常に最新の状態に保つことで、新しい脅威にも対応することができるでしょう。OSやブラウザ、ソフトウェアのアップデートも確実に行い、セキュリティホールを塞ぐことも重要です。
セキュリティソフトを万全の状態に備えておくことで、フィッシング詐欺の被害を未然に防ぐことが可能となります。
最新の詐欺情報をキャッチして注意を怠らない
フィッシング詐欺は常に新しい手口を編み出しています。そのため、最新の動向を把握し、注意喚起の情報に目を通すことが大切です。
国民生活センターやフィッシング対策協議会といった専門機関が発信する注意喚起情報は、最新の詐欺手口を知る上で有益な情報源です。
また、インターネットセキュリティ企業のブログやSNSアカウントなども参考になります。
常に最新の情報をアンテナを張って集め、自身の知識をアップデートすることが、フィッシング詐欺の予防につながります。新たな手口や注意喚起の情報などを積極的に収集しましょう。
フィッシング詐欺に遭ってしまったら返金に向けた行動を起こそう
フィッシング詐欺の被害を未然に防ぐためには、日頃からの注意とセキュリティ意識の向上が何より重要です。
怪しいメールやメッセージへの警戒、正規のWebサイトの利用、強固なパスワードの設定と二要素認証の活用、セキュリティソフトの導入など、多角的なアプローチで対策を講じることが求められます。
万が一被害に遭ってしまった場合でも、諦めずに証拠を集め、カード会社や警察に相談し、専門家の助言を仰ぐことが肝要です。
被害の実態を客観的に示し、粘り強く交渉を重ねることで、返金の可能性を高めることができるでしょう。