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【2022年改正】見直されたキャリアアップ助成金

【2022年改正】見直されたキャリアアップ助成金

令和4年4月、キャリアアップ助成金が見直されました。例えば正社員化コースでは、有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換の助成が廃止されています。また10月からは、「正社員」の定義が明確化されるなどの見直しが行われます。

今回は、見直されたキャリアアップ助成金について解説します。


キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金とは、「有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度」をいい、いくつかのコースが設けられています。

【キャリアアップ助成金のコース】

正社員化支援

正社員化コース

障害者正社員化コース

処遇改善支援

賃金規定等改定コース

賃金規定等共通化コース

賞与・退職金制度導入コース

選択的適用拡大導入時処遇改善コース

短時間労働者労働時間延長コース


正社員化コースの改正点

今回の改正の大きなポイントは、正社員化コースにおいて、有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換の助成が廃止されたことです。

改正前

改正後

① 有期 → 正規

② 有期 → 無期

③ 無期 → 正規

① 有期 → 正規

② 無期 → 正規

これにより、本コースで助成金を受給するには、必ず正社員(正規雇用労働者)への転換が求められるようになりました。加えて、正社員・非正規雇用労働者の定義が厳格化されます(令和4年10月1日以降の正社員転換に適用)。

なお、正社員・非正規雇用労働者の定義の厳格化は、障害者正社員化コースでも行われます。

【正社員定義の変更】

現行

改正後

同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者

同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者。ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る

改正後に正社員とするためには、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている必要があります。よって、賞与も退職金も支給していない会社は支給対象外となります。

【非正規雇用労働者定義の変更】

現行

改正後

6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者

賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月
以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者

改正後は、「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されている非正規雇用労働者を正社員に転換する必要があります。

よって、正社員就業規則とは別に、契約社員就業規則やパートタイマー就業規則など非正規雇用労働者に適用される就業規則が求められます。その他、正社員への転換をした後に試用期間を設けている場合には、正社員に転換したものとはみなされませんので注意してください。

【正社員化コースの改正点のまとめ】

令和4年4月から

令和4年10月から

・有期雇用労働者を無期雇用労働者に転換した場合に係る助成措置を廃止

・転換した後の正社員は、賞与または退職金制度の実施および昇給の実施が規定されている就業規則が適用されている必要がある

・正社員への転換をした後に試用期間を設けている場合、正社員に転換したものとはみなされない

・転換前の雇用区分について、賃金の額又は計算方法が正社員と異なる雇用区分の就業規則等が6か月以上適用されている必要がある


就業規則の規定例

正社員定義の変更により、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が正社員に適用されることを就業規則に規定する必要があります。

例えば、賞与を支給し、昇給制度を設ける場合の規定例は次の通りです。

【昇給の規定例】

第〇条(昇給)

1 昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年〇月〇日をもって行う。
2 顕著な業績が認められた労働者については、随時、昇給を行うことがある。
3 昇給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

【賞与の規定例】

第〇条(賞与)
1 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

支給日

算定対象期間

夏季賞与:  月  日

月 日から 月 日まで

冬季賞与:  月  日

月 日から 月 日まで

2 前項の賞与の額は、会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。

賞与に関し、「賞与は支給しない。ただし、業績によっては支給することがある」といった原則不支給の規定や、「賞与の支給は会社業績による」といったように原則として賞与を支給することが明瞭でない場合は、支給対象外となりますから注意してください。

また、「正社員転換後6か月の間に、賞与や昇給の実績がないのですが、支給対象になりますか」という問いに対し、「正社員に適用される就業規則等に「賞与または退職金制度」かつ「昇給」の規定を確認することができれば、支給対象となり得ます。

ただし、就業規則等に沿った運用がなされていない場合(例:6月に賞与支給のはずが、当該月に支給されていないなど)、必要に応じて合理的な説明を求める場合があります」としたQAが厚生労働省から出ていますので、就業規則等に沿った運用を行いましょう。

その他の主な改正点

その他の主な改正点は次の通りです。

【賃金規定等改定コース】

対象労働者(2人目以降)に係る加算を廃止

有期雇用労働者等に関して、正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成されるコースで、対象労働者(2人目以降)に係る加算が廃止されました。

【賞与・退職金制度導入コース(旧諸手当制度等共通化コース)

  • 諸手当等(賞与、退職金、家族手当、住宅手当、健康診断制度)の制度共通化への助成を廃止し、賞与または退職金の制度新設への助成に変更
  • 対象労働者(2人目以降)に係る加算を廃止

有期雇用労働者等を対象に賞与・退職金制度を導入し、支給または積立てを実施した場合に助成されるコースです。旧諸手当制度等共通化コースから賞与・退職金制度導入コースに名称が変わっています。

従来、諸手当等として、賞与、退職金、家族手当、住宅手当、健康診断制度がありましたが、今年度は家族手当、住宅手当、健康診断制度が無くなり、賞与と退職金だけになりました。非正規雇用労働者に対する制度新設のみで助成されるので、正社員との共通化は必須でありません。

退職金制度については、中小企業退職金共済制度のような社外積立型の退職金制度を導入した場合も対象となります。また、退職金制度の加入要件に「勤続1年以上経過した者」といった一定の勤続年数(著しく長いものを除く)を設けることも可能です。

【短時間労働者労働時間延長コース】

社会保険の適用拡大を更に進めるため、以下の措置をとる

  • 延長すべき週所定労働時間の要件を緩和 (週5時間以上 → 週3時間以上)
  • 助成額の増額措置等を延長 (令和4年9月末 → 令和6年9月末(予定))

有期雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合に助成されるコースです。既に社会保険への加入義務が生じている労働者について、労働時間の延長を実施したとしても支給対象とはなりません。

以上、令和4年度のキャリアアップ助成金の改正内容をみてきました。改正後の内容を確認のうえ、活用できそうなものがありましたら、自社の非正規雇用労働者のキャリアアップに向けて活用してみてください。

※本内容は、令和4年5月27日現在、厚生労働省より公表されている情報に基づいております。申請にあたっての詳細は、管轄の都道府県労働局等に確認をお願いいたします。

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著者プロフィール

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角村 俊一

社労士事務所ライフアンドワークス 代表

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

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