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外国人労働者の職場定着への取り組みに対して助成される「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」

外国人労働者の職場定着への取り組みに対して助成される「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」

日本人の生産年齢人口が年々減り続けています。その不足を補う形で、外国人労働者が増えています。現在は新型コロナウイルスの関係で外国人の入国が制限され、今までと事情は違っていますが、今後の大きな流れは変わらないものと思われます。

これまでは、外国人というと一般的な就労ビザを持つ人の他は技能実習生でした。技能実習生の日本滞在は3~5年の期間が定められており、日本語も上手になり、仕事を覚えても期間が経過すれば帰国してしまいます。

このような人材に、さらに日本に滞在してもらうことも念頭にした入管法の改正が、2019年4月にありました。特定技能1号、2号の新しい在留資格が創設されています。

特定技能では、直接会社と雇用契約を締結し日本人同様の賃金支払いが義務づけられ、同一の業務区分内であれば転職も可能となっています。また、特定技能2号は、家族帯同が認められ永住も可能になります。

しかし、外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行などの知識不足や言語の違いなどから、労働条件などにおいて事業主との関係において弱く、トラブルになりやすい傾向にあります。

この助成金は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の定着に取組む事業主に対して助成されるものです。

支給までの流れ、要件などを見ていきましょう。


この記事の著者
本山社会保険労務士事務所  所長 

支給までの流れ・要件

① 就労環境整備計画の作成・提出【要件1】

・提出期間内に、本社の所在地を管轄する労働局へ提出

② 就労環境整備措置の導入【要件2】

・①で認定を受けた就労環境整備計画に基づく措置を新たに導入

③ 就労環境整備措置の実施【要件2】

・②で導入した就労環境整備措置を計画通りに実施

④ 目標達成助成【要件3】の支給申請

・本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ提出

この助成金は、事業所単位ではなく、事業主単位(企業単位)での支給です。

助成額

生産性要件を満たしていない場合 支給対象経費の1/2(上限額57万円)
生産性要件を満たす場合 支給対象経費の2/3(上限額72万円)

支給対象経費とは、計画期間の間に、事業主から外部機関等に対して支払いが完了した次の5つの経費(消費税、振込の場合の振込手数料を含む)です。

  • ① 通訳費(外部機関への委託)
  • ② 翻訳機器導入費 10万円上限
  • ③ 翻訳料 外部機関に委託した社内マニュアル等を多言語で整備する費用を含む
  • ④ 弁護士、社会保険労務士等への委託料(環境整備措置に要するものに限る)
  • ⑤ 社内標識類の設置・改修費

これらの費用は、社会通念上市場価格に対して適正であることが求められ、2社分の見積書等を取ることが必要ですし、原則として安価な見積書を作成した会社に発注することとされています。

要件1・要件2:計画の作成及び実施項目

計画の内容に基づいて、実施します。

  • (1)計画期間:3か月以上1年以内(計画開始日は、最初に就労環境整備措置を導入する月の初日)
  • (2)計画の提出期限及び提出先:計画開始日から遡って、6か月前~1か月前の日の前日までに、本社所在地を管轄する都道府県労働局(ハローワークに提出できる場合もあり)
  • (3)必要書類:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備コース)就労環境整備計画(変更)書(様式第a-1号)他
  • (4)計画の内容:助成金の対象となる措置として5つ挙げられています。①と②は必須です。③~⑤はいずれかの措置を導入し実施する必要があります。

① 雇用労務責任者を選任し、次の1~3の全てを満たすこと【必須】

1 就労環境整備措置への取り組み、外国人労働者からの相談への対応、その他環境整備等の管理業務を担当する者を選任し、その者の氏名を各事業場に掲示等することにより外国人労働者に周知する
2 雇用労務責任者が計画期間中に全ての外国人労働者と3か月毎に1回以上の面を行い、その結果を書面により作成する
3 外国人労働者が労基法その他の労働に関する法令違反を受けた場合に相談できる関係行政機関(労働基準監督署)等の案内を書面により配布

② 就業規則等の社内規程を多言語化し、次の2つを満たすこと【必須】

1 就業規則等の社内規程を多言語化し、計画期間中に雇用する全ての外国人労働者に周知する
2 対象事業所における就業規則等の社内規程の全てを多言語化する

③ 苦情・相談体制を整備し、次の3つ全てを満たす必要があります。

1 労働協約または就業規則を変更することにより、その雇用する全ての外国人労働者の苦情又は相談に応じるための体制を新たに定め、その内容、利用方法等を周知する
2 外国人労働者の母国語または当該外国人労働者が使用するその他の言語により苦情または相談に応じるものであること
3 支給申請日において当該就労環境整備措置を継続して運用していること

ただし、整備した苦情・相談体制が特定技能外国人を雇用する事業場に設けられたもの、または、技能実習生の保護に関する法律により監理団体に設けられたものは除く。

④ 一時帰国のための休暇制度を導入し、次の3つ全てを満たす必要があります。

1 労働協約または就業規則を変更することにより、その雇用する全ての外国人労働者が一時帰国を希望した場合に必要な有給休暇(以下「有給休暇」という)(労基法第39条に定める年次有給休暇とは別のもの)を取得できる制度を新たに定める
2 1年間に1回以上の連続した5日以上の有給休暇が取得できるものであること
3 支給申請日において当該就労環境整備措置を継続して運用していること

⑤ 社内マニュアル・標識類等の多言語化

1 社内マニュアル・標識類等を多言語化し、就労環境整備計画期間中に雇用する全ての外国人労働者に周知すること

実施事項は具体的に示されていますので、自ら考えて行うというよりも、挙げられている事項の中から自社に足りない事項から選択するといいでしょう。

要件3 離職率目標の達成

助成金を受給するために、3つ目の要件である「離職率の目標」を達成することが求められます。離職率は外国人労働者のみならず、日本人労働者離職率も達成させなければなりません。

≪外国人労働者離職率目標≫
外国人労働者の離職率が10%以下であること。
環境整備計画期間として定めた期間の最終日の翌日における外国人労働者数と、そこから1年後の外国人労働者数を比較し、離職率が10%以下であるかどうかを見ます。
≪日本人労働者離職率目標≫
日本人労働者の「評価時離職率」が「計画時離職率」を上回っていないこと。計画認定前の12か月と計画実施後12か月の離職者数を比較し、離職者数が減っていることが必要です。

生産性要件

助成額の割合は先に助成額の表に示しましたが、生産性要件を満たすことで高くなります。次の算式による直近の会計年度における生産性が、3年度前に比して6%以上伸びているか3年度前に比して1%以上(6%未満)伸びていることで確認されます。
「生産性=付加価値(※1)/雇用保険被保険者数」

※1 付加価値とは、企業の場合には「営業利益+人件費(役員報酬を除く)+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課」から求めます。

他にも要件等がありますので、ガイドブックやハローワークに確認し申請準備をしてください。
参照:厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

この度は、外国人労働者のための環境整備の助成金を取り上げました。しかし、労働環境整備も重要ですが、それだけでなく日本人労働者の外国人労働者に対する意識改革も、外国人労働者の離職を防ぎ、よりよく働いてもらうためには必要だと思われます。

助成金の支給対象にはならないかもしれませんが、文化の違い等を理解しあったり、コミュニケーションを活発にする機会を設ける等も検討してはいかがでしょうか。

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著者プロフィール

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本山 恭子

本山社会保険労務士事務所 所長

特定社会保険労務士、行政書士、公認心理師、産業カウンセラー、消費生活アドバイザー
ストレスが多く、事業運営もグローバル化の中厳しく、企業、労働者共に大変な今、少しでも働きやすい環境を作るお手伝いをすることを通して、企業、労働者の皆様のお手伝いを精一杯してまいります。法律だけの四角四面でない、気持ちを汲んだサポートを心掛けています。

【事業内容】
「働く」社会で一番大切な「人」にまつわる事柄へのお手伝いをいたします。労働基準法、社会・労働保険に関する相談から、メンタルヘルス対策、コミュニケーション、社内活性化など以下の通りです。企業、個人いずれからのご相談も可能です。
労務相談、メンタルヘルス対策、就業規則作成・変更、採用に関する相談・指導、助成金申請に関する相談・指導、労働・社会保険各種手続、相談・指導、年金相談・手続、個別労働紛争代理業務(企業、個人)、個人相談、他士業との連携による創業支援、ワンストップサービス

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