非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ促進をサポートする「キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)」
働き方改革関連法により大企業では2020年4月から既に正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差が禁止され、2021年4月からは中小企業にも適用されます。「同一労働同一賃金」という言葉は聞いたことがあるけれど、対策をまだ検討していない中小企業も多いかもしれません。しかし、2020年10月に同一労働同一賃金に関する最高裁判決が複数出たこともあり、取るべき考え方の方向性が示されつつあるのも事実です。
賃金の他に福利厚生においても、パートタイム・有期雇用労働法において正社員と非正規社員の職務の内容、配置の変更の範囲(人材活用の仕組みや運用など)、その他の事情のうち、待遇の性質及び目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないとされています。そのため、不合理な相違がある場合には、その解消が求められています。
差を解消しようとする事業主を支援するキャリアアップ助成金には、「正社員コース」以外にもいくつものコースが用意されています。今回はその中の「健康診断制度コース」の概要をご案内します。
なお、ご案内します情報は令和2年4月に発表されているものですので、実際に支給申請等検討される場合には、ハローワーク等に確認ください。
また、記載にある「中小企業」とは、業種ごとに次のいずれかに該当するものをいいます。
出資金又は労働者数のどちらかの条件を満たせば中小企業です。
業種 | 出資金又は出資の総額 | 常時使用する労働者数 |
---|---|---|
小売業・飲食店 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
【健康診断制度コース】
この助成金は、有期雇用労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、のべ4人以上実施した場合に助成されます。
【助成額】
1事業所当たり〈 〉内金額は生産性の向上が認められる場合の額(1事業所1回限り)
- 中小企業・・・38万円〈48万円〉
- 大企業 ・・・28万5,000円〈36万円〉
【対象となる労働者】
次の①から④までの全てに該当する労働者が助成金における対象です。
- ① 支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者であって、次の(1)(2)のいずれにも該当する労働者
- (1)期間の定めのある労働契約により使用される者。ただし、次の3つのいずれかに該当する場合には除かれます。
- ア:契約期間が1年以上(業務によっては6か月以上)である者
- イ:契約更新により1年以上使用されることが予定されている者
- ウ:1年以上引き続き使用されている者
- (2)1週間の所定労働時間が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の3/4未満の者
- (1)期間の定めのある労働契約により使用される者。ただし、次の3つのいずれかに該当する場合には除かれます。
- ② 雇入時健康診断若しくは定期健康診断又は人間ドックを受診する日に、当該対象適用事業所において、雇用保険の被保険者であること
- ③ 健康診断制度を新たに設け実施した事業所の事業主又は取締役の3親等以内の親族外の者であること
- ④ 支給申請日において離職していない者であること(一部除外理由あり)
【対象となる事業主】
次の①から⑧までの全てに該当し、かつキャリアアップ助成金共通要件に該当する事業主が対象です。
≪健康診断制度コース要件≫
- ① キャリアアップ計画書に記載された計画期間中に、事業主に実施が義務付けられていない有期雇用労働者等を対象とする次のいずれかの制度を労働協約又は就業規則に新たに規定した事業主であること
- (1)雇入時健康診断制度
- (2)定期健康診断制度
- (3)有期雇用労働者を対象とする人間ドック制度
- ② ①の制度に基づき、キャリアアップ計画期間中に、雇用する有期雇用の対象労働者等にのべ4人以上実施した事業主であること
- ③ 支給申請日において当該健康診断制度を継続して運用している事業主であること
- ④ ①の実施健康診断等の費用の全額を会社が負担することを労働協約又は就業規則に規定し、実際に費用の全額を健康診断実施機関又は対象労働者に支払った事業主であること
- ⑤ 人間ドック制度を規定した場合は、対象労働者に実施した当該人間ドックの費用の半額以上を負担することを労働協約又は就業規則に規定し、実際に費用の半額以上を健康診断実施機関又は対象労働者に支払った事業主であること
- ⑥ 当該健康診断制度を実施するにあたり、対象者を限定する等の実施要件(合理的な理由が必要)がある場合は、当該要件を労働協約又は就業規則に規定している事業主であること
- ⑦ 健康診断制度を実施した事実の有無について、管轄労働局長が実施機関に対して確認を行う際に協力することについて、承諾している事業主であること
- ⑧ 生産性要件を満たした場合の支給額の適用を受ける場合にあっては、当該生産性要件を満たした事業主であること
≪キャリアアップ助成金共通要件≫
- ① 雇用保険適用事業主
- ② 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を配置していること
- ③ 雇用保険適用事業所ごとに対象労働者に対し、適切なキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主
- ④ 対象労働者に対する労働条件、勤務状況、賃金支払い等の状況を明らかにする書類を整備し、賃金算出方法を明らかにすることができること
- ⑤ キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだこと
【支給申請の流れ】
助成金の支給申請の流れは次のとおりです。順序がとても重要です。
① キャリアアップ計画の作成・提出 | |
---|---|
雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置し、かつ労働組合等の意見を聴いて「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局長の認定を受ける。 注)健康診断制度を規定する前日までに提出 |
|
② 就業規則又は労働協約に健康診断制度を規定 | キャリアアップ 計画期間中 |
社内にて規定の改定を行い、10人以上の事業場は労働基準監督署に改定後の就業規則を届け出る。10人未満事業場では事業主と労働組合等の労働者代表者の署名及び押印による申立書可 | |
③ 健康診断等をのべ4人以上に実施 | |
就業規則、労働協約に基づき法令に実施が義務付けられていない対象労働者に実施 | |
④ 支給申請 | |
4人以上に実施した日を含む月の分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請(就業規則等の規定により、時間外手当を基本給等とは別に翌月等に支給している場合は、時間外手当が支給される日を賃金支給日とする) | |
⑤ 審査、支給・不支給決定 |
【注意点等】
- (1)当該助成金の対象となる各種健康診断がどのような検査項目を含むものか定められています。健康診断実施機関に確認の上進めてください。
- (2)既に対象となりうる有期雇用労働者等への健康診断制度を導入していて、当該健康診断制度の対象労働者を拡大したような場合には対象となりません。
- (3)既に対象となりうる有期雇用労働者等への健康診断制度を導入している場合、費用を全額事業主負担と規定のみ設けた場合は対象となりません。
- (4)キャリアアップ計画書についての記載は、この度は割愛しています。必ず確認の上行っていただきますようお願いします。
- (5)あくまで法律に健康診断の実施が義務付けられていない労働者に対して実施対象を広げ、実施するものです、本来は受けさせなければならないが実施していなかった労働者に対して実施しても、助成金の対象とはなりません。