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労働者の早期再就職を支援する助成金

労働者の早期再就職を支援する助成金

再び緊急事態宣言が出されました。雇用調整助成金や各種協力金など、事業経営を支援する制度は用意されていますが、コロナ禍の収束が見通せず、企業が雇用を維持することが困難となる事態も考えられます。企業の存続自体が危ぶまれる場面もあるでしょう。

今後、離職を余儀なくされる労働者の増加が懸念されており、そうした方々の再就職支援は大きな課題となっています。

「労働移動支援助成金」は、離職を余儀なくされる方の早期再就職の支援などを目的とするもので、「再就職支援コース」と「早期雇入れ支援コース」から構成されています。

「再就職支援コース」は、離職を余儀なくされる労働者の再就職支援を民間業者へ委託したり、求職活動のための休暇の付与などを行った事業主を助成するものです。

「早期雇入れ支援コース」は、ハローワークの認定を受けた再就職援助計画の対象となった労働者などを早期に雇い入れた事業主を助成します。

今回は、「早期雇入れ支援コース」を中心に「労働移動支援助成金」を見てみましょう。


労働移動支援助成金の2つのコース

労働移動支援助成金には、2つのコースが設けられています。

再就職支援コース 事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者に対し、その再就職を実現するための支援を民間の職業紹介事業者への委託、求職活動のための休暇付与、再就職に資する訓練の実施のいずれかにより実施し、再就職を実現させた事業主に対して助成する
早期雇入れ支援コース 「再就職援助計画」または「求職活動支援書」の対象者を、離職日の翌日から3か月以内に期間の定めのない労働者として雇い入れた場合や、その雇い入れた方に対して職業訓練を実施した事業主に対して助成する

早期雇入れ支援コースにおける「再就職援助計画」とは、1か月以内に労働者が30人以上離職するような事業規模の縮小などを事業主が行おうとするときに事業主に作成が義務付けられている計画書のこと。「求職活動支援書」とは、解雇などにより離職することとなっている45歳以上65歳未満の労働者のうち再就職を希望する方に対して、事業主が行おうとする再就職援助の内容などを記載する書面をいいます。

「再就職援助計画」や「求職活動支援書」の対象者は、まさに離職を余儀なくされる労働者であり早期の再就職を支援する必要がありますから、こうした方を離職後3か月以内に雇い入れた企業には助成が行われます(早期雇入れ支援)。また、雇い入れだけではなく、その定着を図る必要もあることから、人材育成のためにOff-JTやOJTなどの教育訓練を行った場合にも助成があります(人材育成支援)。

早期雇入れ支援 再就職援助計画等の対象となった労働者を早期に雇い入れた事業主を助成
人材育成支援 早期雇入れ支援の対象となる労働者に対してOff-JTのみ、またはOff-JTおよびOJTを行った事業主に対して追加助成

なお、ここでいうOff-JTとは、「生産ライン又は就労の場における通常の生産活動と区別して業務の遂行の過程外で行われる(事業内又は事業外の)職業訓練」をいい、OJTとは、「適格な指導者の指導の下、事業主が行う業務の遂行の過程内における実務を通じた実践的な技能及びこれに関する知識の習得に係る職業訓練」をいいます。

助成対象となる労働者は?

本コースの支給対象となるのは、次の①、②のいずれにも該当する労働者です。

  • ① 申請事業主に雇い入れられる直前の離職の際に「再就職援助計画」または「求職活動支援書」の対象者であったこと
  • ② 「再就職援助計画」または「求職活動支援書」の対象者として雇用されていた事業主の事業所への復帰の見込みがないこと

人材育成支援の支給を受けるためには、支給対象者が①、②に加えて次の③、④のいずれにも該当していることが必要です。

  • ③ 申請事業主が作成した訓練の計画に基づいて訓練を受講していること
  • ④ 助成対象となる訓練の計画時間数の8割以上を受講したこと

また、助成金の受給には、支給対象者について、次の①~③のいずれにも該当するかたちで雇用していることが必要です。

  • ① 離職日の翌日から起算して3か月以内に、一般被保険者または高年齢被保険者、かつ期間の定めのない労働者として雇い入れること
  • ② 雇い入れ日から起算して6か月を経過した日(第1回支給基準日)を超えて引き続き雇用していること
  • ③ ②の支給基準日経過後、支給決定日までに支給対象者を事業主都合で解雇等(退職勧奨を含む)をしていないこと

①に関して、有期雇用契約で雇い入れた場合や、有期雇用契約から期間の定めのない雇用契約に切り換えた場合は支給対象とはなりませんので注意してください。雇用形態は必ずしも正社員でなくても構いませんが、雇用保険の被保険者とすること、かつ期間の定めのない契約で雇用する必要があります。試用期間を設ける場合であっても、雇用契約が期間の定めのない契約である場合は支給対象です。

人材育成支援の支給を受けるためには、①~③に加えて、次の④~⑧のすべてに該当することが必要です。

  • ④ 職業訓練計画を作成し、支給対象者を雇い入れた事業所を管轄する労働局に提出して、訓練開始前に計画認定を受けていること
  • ⑤ 職業能力開発推進者を選任していること
  • ⑥ 認定を受けた職業訓練計画に基づき、支給対象者の雇い入れ日から6か月以内に訓練を開始すること
  • ⑦ 訓練実施期間中、支給対象者に対して賃金を支払うこと
  • ⑧ 訓練終了日を超えて、支給対象者を継続して雇用していること

助成額は?

早期雇い入れ支援の助成額は、次の通りです。

通常助成 支給対象者1人につき30万円
優遇助成 一定の成長性が認められる事業所の事業主が、地域経済活性化支援機構(REVIC)の再生支援等、一定の要件を満たした事業所等から離職した方を雇い入れた場合、支給対象者1人につき40万円
優遇助成
(賃金上昇区分)
優遇助成で雇い入れた方について、雇い入れ1年後の賃金が雇い入れ時の賃金と比較して2%以上上昇していた場合、支給対象者1人につき60万円(第1回申請分40万円、第2回申請分20万円)

支給対象者に支給対象訓練を実施した場合は、人材育成支援として、以下の額が追加で助成されます。

訓練の種類 助成対象 支給額
通常助成 優遇助成 優遇助成
(賃金上昇区分)
Off-JT 賃金助成
(上限600時間)
1時間あたり
900円
1時間あたり
1,000円
1時間あたり
1,100円
訓練経費助成 実費相当額
上限30万円
実費相当額
上限40万円
実費相当額
上限50万円
OJT 訓練実施助成
(上限340時間)
1時間あたり
800円
1時間あたり
900円
1時間あたり
1,000円

厚生労働省によると、新型コロナウイルス感染症の影響による解雇・雇い止めの人数が、昨年12月25日時点で79,522人となりました。その内訳は、製造業16,717人、飲食業11,021人、小売業10,399人、宿泊業9,620人などとなっています。地域別では、東京都が19,318人でトップ、大阪府6,657人、愛知県4,696人と続きます。

まだまだ終わりがみえないコロナ禍で行われた再度の時短や自粛要請。離職を余儀なくされる方が、さらに増えることが予想されます。しかし、こうした状況でも人手が足りない企業もあるはずですから、労働移動支援助成金の活用を考えて、採用活動を進めてみてはいかがでしょうか。

※本内容は、令和3年1月14日現在、厚生労働省より公表されている情報に基づいております。申請にあたっての詳細は、最寄りの都道府県労働局等に確認をお願いいたします。

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著者プロフィール

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角村 俊一

社労士事務所ライフアンドワークス 代表

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

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