資金繰りに賢く活用しよう!補助金や助成金、給付金について
2020年から始まったコロナ禍の影響もあって、これまでにない厳しい経営を強いられている企業が数多くあります。そのような中で、経営を支援するための各種制度が拡充されました。今回は補助金や助成金などについて、大枠を確認していきます。
基本的に返済は不要
経営が厳しくなってきたとき、最初に悩むのが資金繰りです。手元の預金残高が減少していき、このままだと数カ月後には資金が枯渇して・・・といった怖い状況を経験したことがある方も、中にはいらっしゃるかもしれません。
このような状況を一時的に改善するには、次の3つの方法が考えられます。
- 誰かからお金をもらう
文字通り「もらう」ので、もらったお金は返す必要がありません。企業にとって、もっとも気楽な方法です。 - 誰かからお金を借りる
金融機関等から融資を受けて、とりあえずその場をしのぎ、経営改善を目指した上で返済を進めていきます。 - 誰かから出資を受ける
出資、つまり自社の株式を相手に渡し、お金を受け取ります。出資は融資と異なり返済の必要はありませんが、お金を出した人は株主なので、非常に強い権限を握ります。3つの方法で考えると、一番経営に及ぼす影響が強いと言えます。
補助金や助成金と呼ばれるのは、基本的に1.に該当します(一部返済が必要になるものもある)。
用語の違い
ここで用語の違いについて確認します。どの制度でも「お金がもらえる」という点では同じですが、申請条件やもらった資金の用途について、少し違いがあります。
補助金(例:ものづくり補助金 事業再構築補助金 など)
補助金は、国や地方公共団体などの行政が中心となり、新規事業の開発や創業、生産性向上のための投資活動などを支援するために設けている制度です。それぞれの補助金には予算が割り振られているので、支給を受けることができる企業は必然的に限定されます。先着順、抽選、審査など、その補助金によって色々な仕組みで支給対象が決定されます。
毎年、新年度になると色々な補助金制度が発表されます。また補正予算が組まれる時期になると、新しい制度が発表されることもあります。特に人気が高い制度では申請が殺到するため、制度発表から申込、締切までが非常に短い期間となっていることも珍しくありません。そのため、気になる制度がある場合には、早めに準備をしたり、補助金等を扱うコンサル企業に依頼するなど、つねに時間制限を意識して行動する必要があります。
代表例は「ものづくり補助金」です。主に製造業を中心に、大規模な設備投資時に申請する事例が多いです。またコロナ禍を受けて設立された「事業再構築補助金」もよく知られています。
補助金の特徴として「支給金額が大きい」ということがあげられます。制度によっては億円単位で支給されることもあります。ただし、支給を受けることが決まったとしても、実際に入金されるまでには時間を要します。ですので、先行して手元資金を確保する工夫が求められます。そのため、金融機関等と協力して「購入時は融資で乗り切り、補助金が入金された後に一部を返済」といった資金繰りを考える必要があります。
また投資の全額をもらえるわけではなく、補助率が定められています。従って、一定の自己負担があることを覚えておく必要があります。「補助金がもらえるから投資をしよう」という考え方は健全とは言えず、「実施したい投資があり、補助金があると助かる」という順番で物事を考えるようにしたいものです。
助成金(例:雇用調整助成金 キャリアアップ助成金 など)
助成金は、主に厚生労働省が雇用維持や促進、人材育成に取り組む事業主を応援するために設けている制度です。人材関係について一定の条件を満たす事業主に、制度に応じたお金が支給されます。
補助金と異なり、基本的には定常的に稼働している制度なので、条件に合致していれば制度を受けることができます(一部例外もあり)。
こちらもコロナ禍で「雇用調整助成金」がたいへん有名になりました。その他正社員化を念頭にしたキャリアアップ関係のものや、障がい者雇用促進の制度が有名です。
事業活動の維持や成長には、人の雇用が欠かせません。各制度をうまく活用することで、より広い範囲から人の雇用を進めたり、能力向上を図ることができます。
給付金(例:事業復活支援金 など)
給付金は、それ自体に特定の定義はありません。補助金や助成金ではない、支給を受けられる制度全般のことを言います。大規模な経済不況等が起こった際に、救済目的で給付されることが多いです。
2022年前半だと、コロナ禍の影響を緩和するための「事業復活支援金」がありました。またコロナ禍直後には国民一人当たり10万円が支給される定額給付が実施されたことも記憶に新しいかと思います。また時短営業を強いられた飲食店向けの協力金なども、給付金の範疇に含まれます。
大概の支給額は「収益」として課税される
補助金、助成金、給付金と名称は異なりますが、お金をもらえる点では一緒です。ここで注意をしたいのが、もらったお金の税務的な扱いです。
大概のものは、収益(売上、雑収入)として計上され、個人事業主であれば所得税、法人であれば法人税の課税対象に含まれます。一部では課税されない給付金(コロナ直後の定額給付金など)もありますが、例外的なものと言えます。
従って、ある程度黒字が出ていて税金の発生が見込まれる企業は、受け取ったお金に応じて、一定の税金が発生することを見越しておく必要があります。
2021年分の確定申告では、個人で飲食店を営んでいた方の多くが、多額の時短協力金を得たため、いつもの年に比べて文字通り桁違いの税金が発生した事例が数多く発生したと言われています。
補助金の場合、支給を受けた金額より多くの支出(設備投資等)を強いられます。補助金への課税まで含めて資金繰りを検討する必要があります。そういった事情もあり、やはり補助金を活用する場合には、専門家や金融機関に事前協力をお願いしておいた方が、間違いが少ないでしょう。
圧縮記帳
補助金については、圧縮記帳という仕組みもあります。受け取った補助金に対して、もらった時点で課税されるのではなく、ゆるやかに課税を受けていくようなイメージです。
あくまでも課税の繰り延べなので、トータルで考えると税負担が減少するわけではないことに注意が必要です。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2202.htm
うまく使えると色々便利
留意点も多々ありますが、基本的にもらえるお金はもらっておいた方がお得です。特に補助金や助成金は、うまく活用できると事業展開に幅や速度感が出てきます。ここで、以下の2つのサイトをご紹介します。
ミラサポplus
経済産業省、中小企業庁が管理するサイトです。色々な補助金、給付金の情報が掲載されています。
事業主の方のための雇用関係助成金(厚生労働省内のサイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html
こちらは助成金に関する情報が掲載されています。
これらのサイト等も使いつつ、各種制度の情報を収集することで、自分の事業活動にあった制度があれば申請してみるのも良いでしょう。
あわせて、案外と穴場なのは、地方自治体が実施する支援制度です。国の制度は申請に当たって書類が難しかったりするものが多いのですが、地方自治体のものは簡単なことが比較的多いです。事業を行っている地域の情報にも目を配りましょう。