扶養控除とは?対象者や条件、控除金額をわかりやすく解説
「扶養範囲内」や「103万円の壁」という言葉を、聞いたことがある人は多いでしょう。言葉は知っていても知識がないと損をする場合もあります。
ここでは、あなたが損をしないために、扶養控除とは何か、制度を受けられる条件や金額はどうなのかを専門家がわかりやすく解説していきます。
まずは、自分が扶養控除対象者であるのか、基本的なところから見ていきましょう。
扶養控除とは
扶養控除とは、納税者が親や子供、親族を扶養している場合に、納税額を減額することができる制度のことです。
一定の条件を満たすことで制度を受けることができます。まずは、扶養控除について詳しく見ていきましょう。
扶養控除とは何か
扶養控除の説明の前に、まずは扶養家族についてです。
扶養家族とは、世帯主の収入で養っている家族のことをいい、配偶者・子供・父母・兄弟姉妹などが扶養家族に当たります。
家族の中で収入が多い人が主にその家族の世帯主となります。
16歳未満の子供については、2011年の児童手当制度創設の関係から、扶養控除が適用されなくなりました。
加えて、2023年1月1日以降は、国外居住親族を扶養親族とするための条件見直しが行われ、「年齢30歳以上70歳未満の非居住者の場合、以下のものに限られる」という制限が加わることとなりました。
- 留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者
- 障害者
- 扶養控除の適用を受けようとする居住者からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者
扶養控除とは扶養家族がいる場合に適用されます。扶養家族の人数に応じて、一定額を差し引いてもらえる制度のことをいいます。
家族を養っている人の税負担を、少しでも軽くしようという目的で作られました。
ただし、扶養家族になるためには、家族の所得が重要であり、完全に無報酬である必要はありません。
※参考:財務省|扶養控除の見直しについて(22年度改正)
扶養控除の2つの定義
扶養には、「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があります。
扶養控除を考える場合、税制上の扶養のことばかりを考えがちですが、社会保険上の扶養も考えなければなりません。
この2つには一部違うところがありますので、注意が必要です。
1.所得制限に関する「税制上の扶養」
税制上の扶養とは、年間の所得金額が48万円以下である必要があります。給与に換算すれば103万円になります。
また、原則親族(6親等内の血族または3親等内の姻族)であることが求められ、世帯主と同一生計でなければなりません。同一生計とは、同居していることが原則ですが、仕送りをしている場合も含まれます。
ほかの人が扶養控除などの申請をしていない場合に限り、税制上の扶養に該当したならば、扶養対象者に税金がかかりません。
税制上の扶養においては、交通費は所得に含まれません。
2.健康保険や年金に関する「社会保険上の扶養」
続いて、社会保険上の扶養についてです。
社会保険上の扶養とは、健康保険や各種年金のことをいいます。本来は、国民は一人ひとり健康保険や各種年金に加入する必要があります。
しかし、扶養を受けることにより、扶養者の加入する健康保険や年金に加入することができます。それにより、負担金額を軽減する効果があります。
社会保険上の扶養の場合、交通費は含まれますので注意が必要です。
また、扶養になるためには、3親等内の親族で同居ないしは扶養可能な親族であることが求められ、税制上の扶養より要件が厳しくなっています。
扶養控除の対象となる適用条件
扶養控除を受けるには、いくつかの条件を満たす必要があります。
条件とは何か、注意すべき点は何かを知ることで、あなたが損することなく扶養控除制度を受けることができます。
扶養控除の対象者
扶養控除を受けることができるのは、以下の要件をすべて満たす場合に限られます。
- 配偶者以外の親族(※1)
- 原則生計を一(いつ)にしている(※2)
- 扶養者が国外居住親族で年齢30歳以上70歳未満の場合、以下に該当する場合
- 留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者
- 障害者
- 扶養控除の適用を受けようとする居住者からその年において生活費又は教育費
- 扶養者の年間所得金額が48万円以下または給与で年額103万円以下
- 青色申告者の事業専従者として、その年に一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと
(※1)ここでいう親族とは、6親等内の血族または3等身内の姻族をいいます。また、配偶者には別途控除制度があります。
(※2)生計を一とするとは、単身赴任や遠方の学校に通学している子供に仕送りしているなども含まれます。
なお、その年の12月31日現在において、16歳以上である人が対象となります。繰り返しになりますが、15歳以下の人は2011年より児童手当が支給され、扶養控除の支給は廃止されました。
扶養控除の対象者外となるケース
扶養控除の対象外のケースとしてよくあるのは、アルバイトをいくつか掛け持ちしている場合です。
それぞれのアルバイト報酬(給与)が少額であっても、すべてを合算して103万円を超える場合は注意が必要です。
雇用主側は少額であっても、その金額を報告する義務があります。少額だからといって報告を怠ると、ペナルティが課される場合がありますので注意してください。
扶養控除の金額
区分 |
控除額 |
|
一般の控除対象扶養親族 |
38万円 |
|
特定扶養親族 |
63万円 |
|
老人扶養親族 |
同居老親等以外の者 |
48万円 |
同居老親等 |
58万円 |
扶養控除の金額は、扶養する親族の年齢と同居の有無によって変動します。ここでいう年齢は、扶養している人の年末時点の年齢となるので注意しましょう。
上の表を見ながら、詳しく説明します。
16歳以上より扶養控除の対象となり、16〜18歳、23〜69歳までは一般の控除対象扶養親族となり、控除額は38万円となります。
19~22歳の場合、特定扶養親族となり増額され、控除額は63万円です。また、70歳以上の場合、老人扶養親族となり、同居の有無により控除額が48~58万円となります。
ここで注意が必要なのは、長期療養のため入院している老人扶養親族の場合です。その場合は、「同居」として認められていますので、覚えておきましょう。
扶養控除を受けるには?
配偶者の場合、ほかの扶養親族とは異なった手当があり、手続きが必要となります。
配偶者の場合、所得によって一律に控除の有無を判断するわけではありません。配偶者控除と配偶者特別控除により、また配偶者の所得によって段階的に控除額が調整されます。
さらに、配偶者が所得を得ることに対しても一律に控除がなくなるというわけではなく、段階的に減額されることになっています。
一方で、納税者本人の所得により控除額の金額が決まります。給与の場合、年末調整を受ける際には、配偶者控除等申告書 に所定の事項を記入して提出する必要があります。
配偶者は扶養控除ではなく「配偶者控除」となる
配偶者は、扶養控除とはまた違う取り扱いとなります。
ここでは、配偶者控除とは何か、どのような場合に適用されるのか、所得の条件などを詳しく説明します。
配偶者控除:103万円の所得制限
配偶者の場合、配偶者控除を利用することができます。
配偶者控除とは、配偶者以外の扶養控除に相当する制度をいいます。扶養控除とほぼ適用要件は同じですが、本人の所得が1千万円を超える場合は配偶者控除を利用することができません。
また、扶養控除が給与所得103万円を超過すると控除額が0円になってしまうのに対して、配偶者控除の場合、103万円を超過しても1千万円を超えなければ控除できる手段があります。
それは次の項目で説明します。
配偶者特別控除:103万円を超える所得
配偶者の所得が48万円(給与であれば103万円)を超える場合は、配偶者控除は利用できなくなります。
しかし、配偶者の所得に応じて一定の控除を受けることができます。これを配偶者特別控除といいます。
配偶者特別控除は、配偶者控除と同じく38~133万円まで順次減額されます。配偶者本人の所得が1千万円までの場合利用することができますが、配偶者控除と同じく、900万円を超える場合は一定金額を減額されることになります。
扶養控除についてのまとめ
扶養控除とは、家族を養っている人の税負担を少しでも軽減するための制度です。扶養控除や配偶者控除は、所得要件や同居の有無などによって適用形態が異なります。
これらは自動的に計算されるものでなく、申告することによって適用されるものになりますので、忘れないように申告することが肝心です。
ぜひ一度、扶養控除を見直す機会にお役立てください。
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