ビジネス文書の書き方 第11回 書式(5) お詫び状・リコール案内状①
この連載では、ビジネス文書の適切な書き方をお伝えします。
ビジネス文書には、一定の書式があります。今回は、お詫び状4種の文例を見てみましょう。また、リコール案内状について2回に分けて紹介します。
お詫び状のマナー
仕事上におけるミスや対応の悪さが原因で、苦情が寄せられたりトラブルが起こったりした場合、誠意を持ってお詫び状を出さなくてはなりません。その際に注意したいのは、
- すぐに
- しかるべき立場の者が
- 先方のしかるべき立場の人に
- こちらの落ち度をきちんと認め
- 再発防止の具体案を入れて
書くことです。
事実関係を述べ、当方の落ち度や責任の所在を書き、謝るべきことについてはきちんとお詫びします。謝罪の言葉に続いて、事情の説明や事後の対処方法を記述し、今後二度と同じミスを犯さないという決意を表しましょう。ただし、当方の責任外のことには言及しないようにします。
印字した文書より手書きの文面のほうが、先方に誠意を伝えやすいでしょう。ファクスやEメールで送付するのは軽い印象を与えかねないため、避けたほうが賢明です。また、はがきよりも封書で送るほうが、より丁重です。
お詫びを述べるだけでなく、会社へのダメージを最小限に抑え、今後の先方との取引や関係をスムーズに進めることを念頭に置きましょう。
【電話対応の苦情へのお詫び状】
電話応対に対する苦情は頻繁に起こります。先方の言い方に原因があるケースもありますが、反論しにくいものです。納得いただけるよう丁寧にお詫びすれば、トラブルが長引くことは少ないでしょう。
【接客態度の苦情へのお詫び状】
接遇に関するクレームでは、顧客側が感情的になるケースが少なくありません。まずは顧客の憤りを収めていただけるよう、しかるべき責任者の名前で、不快な思いをさせたことをお詫びし、ご指摘に感謝の意を表し、今後に向けた反省の弁で締めくくりましょう。
【納品延期のお詫び状】
納期の遅延はお客様にご迷惑をおかけするだけでなく、自社の信用問題にもつながります。丁重にお詫びを述べるとともに確実な予定を伝え、今後は十分注意する旨の決意を書き添えましょう。
【請求書金額誤記のお詫び状】
請求書の誤りは重大なミスです。連絡を受けたら速やかに確認し、誤りがあれば丁重にお詫びしましょう。改めて正しい額面を連絡し、今後の手続きや誤った請求書の処理などについてもお願いすることが必要です。
リコール案内状のマナー
リコールとは、設計・製造上の過誤などにより製品に欠陥があることが判明した場合に、法令の規定または製造者・販売者の判断で、無償修理・交換・返金・回収などの措置を行うことです。法令に基づくリコールと、製造者・販売者による自主的なリコールとに大別されます。
ここでは、企業が自主的に行うリコールについて、消費者に広く告知を行う際の案内状の書き方を紹介します。
<事実を正しく伝える>
リコール案内状では、何よりも事実を正しく伝えることが大原則です。企業や担当者の保身のために事実を隠したり根拠のない推測を公開したりすると、問題を大きくしてしまいかねません。謝罪の仕方によっては世論で炎上する場合もあるため、十分に配慮しましょう。
リコール案内状を出すことで、
- 製品事故を未然に防ぎ、人命や健康、財産を救うことができる
- 会社の売上やブランドの損失を最小限に食い止めることができる
- 迷惑をかけた相手の信用を、もう一度つなぐことができる
といったメリットが生まれます。
<案内状に盛り込む要素>
リコール案内状には、次の6つの要素を盛り込みます。記載順も、この要素の順番の通りです。社内で決定された事項を確認し、必要な要素が揃っているか確かめてください。これが揃っていない段階で案内状を書く場合は、社内確認中である旨を添え、取り急ぎ安全を最優先するために案内状を出す旨を伝えましょう。
1.対象製品の明示
リコール対象製品を明確にします。
- 会社名
- 製品名
- リコールの種類
「〇〇社製の△△製品を、どのようにリコールするのか(交換・返金など)」
を明記します。確実に読んでもらうため、必要最低限の事柄だけを記します。
2.危険性、事故の状況、その原因
事故の状況と原因を簡潔に伝えます。
- 生じる危険の種類や性質(部品欠落、感電、健康被害など)
- 事故によって生じうる被害の程度(人体への影響、重大性など)や発生状況、原因
実際に事故が発生したわけではなく、自社の検査過程で危険を発見したものであれば、危険性としてその旨を書き添えます。
3.消費者に取ってほしい対策
事故を防ぐために、消費者に対策行動を依頼します。
- 該当製品かどうかの確認
- 該当製品であった場合の注意
- 点検を要する場合は点検のお願い
- 製造元や販売元への連絡、製品の返送など
消費者が確実にその行動を取れるよう、分かりやすく説明しましょう。
4.事業者の対応(リコールの種類)
会社としてのリコール方法と対応を伝えます。
- 引き取り、交換、修理、点検、返金のいずれか
- 本体、部品のいずれか
単に回収する旨だけではなく、交換か引き取りか返金か、また本体か部品のみか、具体的な内容を明記します。
修理などで消費者宅を訪問する場合は、日程調整が必要である点についても記します。リコール直後は問い合わせが集中する可能性があるので、訪問日程が先になってしまう可能性も事前に申し添えておくと良いでしょう。
5.製品の特定方法
消費者の手元にある製品が、今回のリコール対象製品かどうかの特定方法を伝えます。製造番号など識別できるものがどこに記載されているか、写真やイラストを使って伝えましょう。
- 名称、型式、製造番号
- 型式や製造番号を表示している箇所
- 製品を限定する情報(製造または輸入時期、販売期間、地域性を含む販路など)
消費者の立場に立ち、どこを見れば良いのか一目で分かる案内を心がけましょう。
6.連絡先
消費者が確実に連絡できる方法を伝えます。
- 会社名
- 返送を依頼する場合は、送付先名と住所
- 電話番号(フリーダイヤルが基本)
- 連絡可能な曜日および時間帯
- その他の問い合わせ先(ホームぺージURL、QRコード、メールアドレス、ファクス番号)など
以上が、必ず入れるべき要素です。
なお、以下については案内状の最後に書き添えます。
- これまでの回収率や経緯
- リコール対応が遅れた場合の説明
- 行政命令の経過
- お詫び
意外に感じるかもしれませんが、お詫びの言葉は最後に記します。リコールにおいては、まず事実を伝えることで注意を喚起し、一刻も早く消費者の安全を図ることが最優先だからです。
次回は、リコール案内状の文例を紹介します。