職場復帰支援助成金
勤務している従業員が中途障害等の療養により、休職を余儀なくされることがあります。そして、職場復帰の時点で障害者に該当する場合もあります。
本人に働く意欲があり、職場の方でも戻ってきて働いてもらいたいと考えるものの、それまでと同じようにはいかないケースも出てくることがあります。
休職後、職場復帰してから本人の能力に合わせた職務開発や、その他職場復帰のために必要な措置を講じた事業主に支給される助成金として、「職場復帰支援助成金」があります。
このコラムでは、職場復帰支援助成金の要件等の概要を見ていきましょう。
「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が申請の受付等を行っています。
【事業主の要件】
次の全てに該当する事業主であることが必要です。
① |
対象障害者に対し、「職場定着支援計画」を作成し、機構の受給資格の認定を受けた事業主であること |
② |
計画期間内に職場定着にかかる措置に取組んだ事業主であること |
③ |
対象障害者を職場定着支援計画の期間を超えて雇用し、かつ、継続して雇用(対象障害者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であること)することが確実であると認められる事業主であること |
④ |
事業所において、次の(イ)~(ハ)の書類を整備、保管している事業主であること (イ)出勤簿等の出勤状況を確認できる書類 (ロ)賃金台帳等の労働者に支払われた賃金を確認できる書類 (ハ)離職した労働者の氏名、離職年月日、離職理由等を明らかにした労働者名簿等の書類 |
⑤ |
この助成金の申請に要する経費について、全額負担する事業主であること |
⑥ |
支給申請時点において、支給の対象となる対象障害者を解雇していない事業主であること |
⑦ |
対象障害者に対して、その職場復帰を促進するため、職場復帰の日から3か月以内に職場復帰のための措置を開始し、休職期間中も含めて、常用雇用労働者としての雇用を継続する事業主であること |
⑧ |
対象障害者を支給対象期の第1期の場合は措置実施後6か月以上、第2期の場合は第2期支給対象期の初日から6か月以上の期間継続して雇用し、その労働者に対して、各支給対象期分の賃金を支給した事業主であること |
【対象となる障害者】
次の全てに該当する障害者が対象となります。
① |
申請事業主に雇用される常用労働者であること |
② |
職場復帰の日の時点で、次の(イ)~(ニ)のいずれかに該当する者であること (イ)障害者雇用促進法第2条第2号に規定する身体障害者 (ロ)障害者雇用促進法第2条第6号に規定する精神障害者 (ハ)平成27年厚生労働省告示第292号で定める特殊の疾病(難病等)にかかっている者 (ニ)高次脳機能障害であると診断された者 |
③ |
医師の意見書により、②の障害等に関連し、1か月以上の療養のための休職が必要とされた者であること |
④ |
就労継続支援A型事業における利用者でないこと |
⑤ |
申請事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること |
【職場復帰支援の内容】
中途障害者等に対して、職場復帰後の本人の能力に合わせて、次の①または②(②に伴う③あり)の職場復帰のための措置を講じる必要があります。
① ≪ 時間的配慮等 ≫
時間的配慮とは、次の(イ)~(ハ)のいずれかに該当する措置を継続的に実施するものであること。
(イ)医師の意見書及び対象障害者の同意の下の労働時間の調整(勤務時間の変更や通勤時間の短縮のための本人の転居を要しない勤務地の変更を含む)
(ロ)通院または入院のための就業規則等に規定する有給休暇制度以外の特別な有給休暇を与えること
(ハ)独居を解消し親族等と同居するための対象障害者同意の下の勤務地変更
② ≪ 職務開発等 ≫
次の(イ)~(ハ)のいずれかに該当する措置を継続的に実施するものであること。
(イ)外部専門家の支援を得て行う職務開発
(ロ)外部専門家による支援の結果、休職前に従事していた職務について実施できない業務がある場合に、これを踏まえた職種の転換
(ハ)外部専門家による支援の結果、必要と認められる支援機器の導入、スロープ設置等の対象障害者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行のための施設整備
※外部専門家とは、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所その他の対象障害者を支援する障害者就労支援機関の支援者です。
③ ≪ ②に伴う講習 ≫
次の(イ)~(ハ)の全てに該当する講習であって、②の措置の実施に伴い、新たな職務に従事することとなった対象障害者に対して実施するものであること。
(イ)対象障害者の障害特性に応じて、新たな職務の遂行に必要となる基本的な知識・技術を習得するための講習であること
(ロ)講習の時間が1回につき1時間以上であること
(ハ)講習の講師が、講習の内容に直接関連する職種の経験が3年以上ある者であること
【支給額】
対象障害者1人あたり、下表の「支給月額」に支給対象者が支給対象期中に実際に就労した月数(ただし、支給対象者の出勤割合が6割に満たない月は除く)を乗じて得た額が支給されます。
支給月額 |
支給対象期間 |
各支給対象期間における支給限度額 |
6万円 (4.5万円) |
最大1年 (1年) |
36万円×2期 (27万円×2期) |
※( )内は中小企業以外
職場復帰支援内容③にあたる職務開発等に関する措置に伴い講習を行った場合、上記の額に加えて、講習に要した要件に合致する対象経費に応じて、下表の額がプラスされます。経費要件がありますので、必ずご確認ください。
要した経費 |
支給対象期における支給額 |
支給対象期間 |
5万円以上10万円未満 |
3万円(2万円) |
1年(1年) |
10万円以上20万円未満 |
6万円(4.5万円) |
|
20万円以上 |
12万円(9万円) |
【支給申請手続き】
※職場定着支援計画書作成の留意点
・対象障害者ごとに作成する必要があります。
・1年以上の計画期間を定めなければなりません。
・計画の開始日は、措置を実施した日(職務開発等の施設整備の場合、職場復帰の日または施設整備が完了した日のいずれか遅い日)とすることとされています。
※申請書の書き方等不明な点は、機構の各都道府県支部にお問い合わせください。
【併給調整】
障害者雇用納付金制度に基づく助成金(障害者作業施設設置等助成金等)の支給対象となった同一の施設整備の場合には、当該助成金は支給されません。
【参考:職場支援員の配置助成金】
この度は職場復帰支援助成金についての概要をお伝えしましたが、他に「職場支援員の配置助成金」も用意されています。障害者の業務の遂行に必要な援助や指導を行う職場支援員を配置(雇用)または委嘱した場合に助成されるものです。支援員の配置等を検討中の事業主の方は当該助成金を検討してみてはいかがでしょうか。
助成金の支給申請を検討される場合には、要件等守らなければならない事項がありますので、必ず機構のホームページ、パンフレット等をよく読み確認の上、不明な点は機構各都道府県支部に問い合わせる等していただきますようお願いします。