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はじめての事業計画書作成!収支計画について

著者: 中小企業診断士  牧野 孝治

はじめての事業計画書作成!収支計画について

収支計画とは、簡単に説明すると「事業計画書の内容で事業を実際に行った結果、一定の期間で利益がどのくらい出て、手元にお金がどれだけ残るのかと、不足している資金をどのように賄うのかをシミュレーションするもの」だと考えてください。

そのため、資金調達時に銀行などから借り入れを行う際には、必ずと言って良いほど回収見込みがあるかどうかを判断するために、収支計画を細かくチェックされます。

融資などで事業計画書を用いる場合は、しっかりと作り込んでいったほうが良いでしょう。

しかし、具体的に収支計画はどのようにして作成すれば良いか、わからない方も多いのではないでしょうか。今回は「飲食店」の5年間の収支計画を立てるとして、収支計画の作成方法について簡単に解説をしていきます。



1.売上見通しを立てる

収支計画は大きく2つの要素から成り立ちます。1つは事業で得られる収入と、もう1つは事業を行うことで発生する支出です。当たり前ですが、事業を継続するためには収入が支出を上回り、利益を生み出し続けていなければなりません。また、融資などの場面では事業の成長性も問われます。

しかし、評価や決裁を得られる収支計画とするために「売上はとにかく右上がりで計画を立てればOK!」というわけではありません。売上の見通しを立てる上で、成長性ももちろん大切ですが、売上が増加する根拠を明確にすることも必要です。

そのため、根拠を明確に示すべく、売上を要素ごとに細分化するのが良いでしょう。今回の飲食店のケースでは、以下の表の様に年間売上を細分化することで、根拠が示しやすくなります。

例えば「1年後には年間売上6,000万円、5年後には18,000万円を達成する」と記載されていても、根拠が明確でないと本当に達成できるのかが相手に伝わりません。そこで、要素ごとに分解し、売上増加の要素を明確にした上で説明すれば、納得できる売上計画になります。

上記の表であれば「月間営業日数が3年後には5日増え、30日になっていること」と「4年後は1日の平均客数が前年比でプラス20人と大幅に増えていること」が明確に伝わるはずです。

その上で「経営が安定する3年後を目途に人員を増加させることで休業日を無くし、翌年には2店舗目を開業させる」といった根拠を事業計画書の本文で示すことができれば、信ぴょう性が高まります。


2.原価を計算する

売上を示したら、次は支出の根拠について記載していきます。まずは売上原価です。

飲食店であれば、お客様に提供する料理の材料費が売上原価に該当します。この原価は売上に比例して増加していきますので、変動費と呼ばれます。

そのため、以下の様に売上に対して何%といった割合で示すのが良いでしょう。

4年後に2店舗目が開業するので、仕入れ量の増加とメニューの見直しを行うことにより、変動費率の改善を見込んでいます。


3.固定費(販売管理費)の見通しを立てる

続いて固定費(販売管理費)を算出していきます。

ここでも固定費を細分化し、項目ごとに根拠を明確にしましょう。

①人件費

飲食店の固定費では、人件費が大きなウエイトを占めます。そのため人件費に関しては、金額だけでなく、事業計画書本文の中に「人員計画」も盛り込んでおきましょう。人員計画は「人数(雇用するタイミング)、雇用形態(正社員・アルバイト)、1人当たりの人件費」で構成すれば問題ないでしょう。

②店舗賃料

店舗の賃料です。1店舗目に加えて、4年後には2店舗目の出店を計画しているため、それに伴い賃料が上がる計画となっています。

③広告宣伝費

店舗の知名度を上げるために広告宣伝を予定しており、それに伴う費用を見込みます。1店舗目の出店時と2店舗目の出店時に広告宣伝費を多くかける計画です。具体的な広告宣伝費の手法については、事業計画書に盛り込むと良いでしょう。

④支払金利

後述する借入金に対する金利です。

⑤その他固定費

交通費・修繕費・水道光熱費・保険料・接待費などを、その他固定費として省略し記載しています。強調したい固定費があれば別項目として示しても良いでしょう。


4.店舗の出店に伴う一時支出

 1店舗目や2店舗目の出店時には、店舗の内装工事や設備導入など、一時的に大きな費用がかかるため、それらの費用を記載していきます。


5.必要なキャッシュを計算する

ここまで作成すれば、営業と投資キャッシュフローが明確になります。

全てのキャッシュフローをまとめると以下の通りになります。

次に累計キャッシュがどうなるのかも確認しましょう。

3年後までは、累計キャッシュフローがマイナスになっています。

つまり、プラスに転じるまでの費用は資金調達により賄う必要があります。

※ここでは説明を簡易化させるために反映しておりませんが、黒字転換後は税金の支払いもキャッシュフローに考慮する必要がありますのでご注意ください。


6.資金調達計画を立てる

次に、不足しているキャッシュをどのように賄うかを明確にします。全額自己資金で賄えない場合は、銀行などから融資を受ける必要があります。資金の調達計画を立てる際には、借入金や返済期間を含んだ計画とするようにしましょう。

また、資金調達時には開業などに伴う一時支出分の金額だけではなく、運転資金としてある程度余裕を持って調達するようにしましょう。目安として、半年分の固定費などが賄えるように、余裕を持った調達ができれば当面は安心です。


7.損益計算書としてまとめる

最後に5年後までの損益計算書を作成して、事業見通しを明確にしましょう。


【まとめ】

いかがでしたでしょうか。今回は収支計画の作成方法について確認しました。

表を用いて解説を行いましたが、場合によってはグラフを用いたりすることも有効な手段です。

また、収支計画は事業計画書のビジネスモデルを数値に落とし込んだものです。そのため、事業計画書本編の内容との整合性をしっかりとることを心がけましょう。

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著者プロフィール

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牧野 孝治

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1992年生まれ,京都府京都市出身。
2018年中小企業診断士登録
商社営業を経て、現在は経営コンサルタントとして活動中。
得意分野は、顧客目線で展開するマーケティング施策、低コストでITを活用しコスト削減と売上拡大、従業員のモチベーション向上施策立案、M&Aなど。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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