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[契約書作成] 第2回:売買基本契約書作成の留意点

著者:柏木総合法律事務所 弁護士  金子 朝彦


[契約書作成] 第2回:売買基本契約書作成の留意点

1.はじめに

今回は、継続的に製品、商品、物品等を販売あるいは購入する企業の方々は、避けて通ることができない継続的売買の基本契約を作成する際の留意点について、ご説明します。

これらの契約は、売買基本契約あるいは取引基本契約等と呼ばれる類型の契約書です(本コラムでは、「売買基本契約」と呼びます。)。日本の民法では、売買契約は、口頭でも、あるいは、発注書と受注書(請書)を毎回交わしているだけでも契約は成立します。それゆえ、仮に、売買基本契約がなかったとしても、継続的な売買契約を取引先と行っていくことは可能です。

しかしながら、発注書や受注書は、細かい契約条件について定めていないことが多くシンプルな形式となっているものがほとんどでしょう。それゆえ、当事者間において、発注書及び受注書しかやり取りしていない場合、当事者間で紛争が発生した場合には、民法や商法の規定がそのまま適用されることになります。

当事者がそのような民法及び商法の規定に精通しており、これらの内容が自社(自身)にとって有利であると考えて、あえてそうしているのであれば問題ありませんが、そうでなければ、事前に売買基本契約書を作成し、個別の発注書・受注書のすべてに適用される条件を定め、万が一当事者間に紛争が発生した場合に備えておくことが、自社(自身)のリスクヘッジになります。

日本では、懇意の取引先、あるいは、信頼関係のある取引先であるから問題にはならないと考え、発注書・受注書やメールのみで売買を継続している企業が多いですが、万が一の場合に備え、事前に売買基本契約を締結しておくことをお勧めします。

2.売買基本契約書作成の際の具体的留意点

それでは、売買基本契約書を作成する際に、具体的に留意しておくべき事項について検討しましょう。前回同様、「売買基本契約書」のひな形を参考として末尾に掲載し、それに沿って特徴的な条項について解説します。

(1)基本契約性について(関連条文:「第1条 基本契約」)

第1条(基本契約)
本契約に規定する内容は、甲乙間において締結される次条に定める対象商品に関する個々の売買契約(以下「個別契約」という。)に対して適用される。ただし、個別契約において本契約と異なる事項を定めたときは当該個別契約の定めが優先して適用される。

契約当事者間の(継続的な)売買のうち、どの取引を売買基本契約の適用対象とするのか、その適用範囲を定める条文です。売買基本契約とは別に行う取引がある場合、この条項において、除外しておく必要があります。また、併せて、当該売買基本契約と個々の個別契約との優劣についても規定することが多いです。

(2)対象商品について(関連条文:「第2条 対象商品」)

第2条(対象商品)
本契約の対象となる商品(以下「商品」という。)は、甲が将来継続して製造、及び販売する商品とし、甲が乙に別途提供する最新のカタログに記載される商品をいう。

こちらも、上記(1)と同様、売買基本契約の適用範囲を定めるための条文です。対象となる商品で明確に適用対象とするかの選別が図れる場合には、非常に有効な条文です。

(3)個別契約の成立条件について(関連条文:「第3条 個別契約の成立」)

第3条(個別契約の成立)
個別契約は、商品の発注年月日、品番、数量、単価、納期、受け渡し場所等を記入した注文書等により乙が甲に発注し、甲がこれを承諾することによって成立する。

売買基本契約の適用対象である個別契約が、どのような方法で成立するのかを定める条文です。この規定がなくとも、民法522条以下に契約の成立に関する規定がありますが、解釈の問題に発展し両当事者の無用な争いが生じる可能性がありますので、本条文で、個別契約の成立条件を明確にしておく必要があります。注文書による契約の申込みに対して、受注書(請書)を発行して承諾することにより個別契約が成立する形がオーソドックスですが、買主が強い立場の場合、注文書による発注後、数日以内に売主から返答がない場合、売主が当該注文を受諾したこととみなすとの内容になっている契約もあります。

(4)検収について(関連条文:「第5条 検収及び受領」)

第5条(検収及び受領)
1 乙は、商品の納入後速やかに受入検査を実施し、合格したもののみを受け入れる(以下「検収」という。)ものとする。乙は、受入検査の結果、商品が、その種類、品質、仕様又は数量等に関して本契約または個別契約の内容に適合しないこと(以下「契約不適合」という。)を発見したときは、ただちに甲に書面にて通知する。
2 乙が甲に対し、商品の納入日から7営業日以内に前項の契約不適合の通知を行わなかった場合、納入された商品は受入検査に合格したものとみなす。
3 第1項の通知を受けた場合、甲は、納入した商品を調査することができる。
4 甲の調査の結果、契約不適合が認められる場合には、甲は、商品の補修、代品を納入又は返金にて対応するものとする。
5 甲は、乙による受入検査の結果に関し、疑義又は異議のあるときは、遅滞なく乙にその旨申し出て、甲乙協議のうえ解決するものとする。

納入された商品の検収規定については、売買基本契約に定めることを強くお勧めいたします。会社間の売買基本契約には、特に検収の定めがない場合、商法526条が適用され、買主には、遅滞なく納入された商品を検査する義務が定められています。そして、買主は、商品に種類、品質、数量に関し契約不適合を発見したときは、直ちに売主に対して、通知をしなければ、売主に対し、契約不適合を理由とする責任追及を行うことができなくなってしまいます(直ちに発見できない契約不適合がある場合でも、買主は、商品の納入から6か月以内に、不適合を発見し、売主に通知する必要があります。)。

このような商法の規定は、当事者においても見落としがちなので、お互いのためにも検収に関する規定は、売買基本契約に定めておくべきです。

検収の規定として定めておくべき内容としては、①買主による受入検査の実施の有無、②受入検査を行わない場合の納品完了の基準、③受入検査結果に対する売主の異議申立方法等を規定することになります。

(5)所有権の移転及び危険負担について(関連条文:「第6条 所有権及び危険負担」)

第6条(所有権及び危険負担)
商品の所有権及び危険負担は、検収をもって、甲から乙に移転するものとする。ただし、代金の支払いが完済されるまで商品の所有権は移転しない旨の特約がある場合にはそれによるものとする。

危険負担とは、当事者の責めに帰さない事由により商品が滅失・毀損したような場合において、どちらがその生じた損失を負担するかという概念です。民法536条に規定がありますが、所有権の移転時期とともに、危険負担についても規定するのが通常です。

(6)支払条件について(関連条文:「第7条 支払い」)

第7条(支払い)
乙は、商品の代金を、甲が乙に商品を納入した日の属する月の翌月末日までに、甲の指定する銀行口座に振込にて支払うものとする。但し、個別契約において前払金あるいは部分払を支払う定めをした場合は、個別契約の条項が本契約に優先して適用される。

売主にとっても、買主にとっても、いつ、どのように商品代金の支払いが行われるのかは、重要な関心事です。これについては、明確に、売買基本契約において定めておく必要があります。

(7)契約不適合責任について(関連条文:「第9条 契約不適合」)

第9条(契約不適合)
1 甲は、ただちに発見できない契約不適合があり、これにつき、乙から検収後6か月以内に申し出があった場合、修理、部品の交換、代品交換又は返金に応じるものとし、その後に発見された商品の契約不適合については、甲の故意又は重大な過失による場合を除き、一切の責任を負わないものとする。
2 前項の定めは、乙の甲に対する損害賠償請求及び解除権の行使を妨げるものではない。

売買契約においては、万が一納入された商品に不具合があった場合の責任に関する規定も重要です。旧民法では、「瑕疵担保責任」として規定されていましたが、改正民法では、562条以下において、「契約不適合責任」に文言が変更となりました。法律論としては、かなり大きな改正部分ですが、「契約不適合」の内容自体は、従来の「瑕疵」の解釈と大きく異なるものではないと考えられています。しかしながら、今後は改正民法と文言を合わせた方が良いでしょう。

改正民法では、「契約不適合」が認められた場合、細かい要件を別とすれば、①履行の追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求、④解除の選択肢があります。期間制限については、買主は売主に対し、不適合を知ったときから1年以内に契約不適合を通知しなければならないとされています。

このような、改正民法と異なる内容、期間の契約不適合責任を当事者で定めたい場合には、売買基本契約において、明確に規定しておくべきでしょう。

(8)解約予告について(関連条文:「第17条 解約予告」)

第17条(解約予告)
甲又は乙は、理由の如何を問わず、6か月の予告期間をもって本契約を解除することができる。

売買基本契約は、ある程度長期間継続することが想定されている契約です。それゆえ、契約当事者の事業の状況も、長い契約期間の中で刻々と変化していきます。会社には、いい時もあれば、悪い時もあり、様々な要因により、取引先との契約を継続できない事由が発生する可能性があります。そのためにも、ある程度の期間をおいて解約予告することにより、一方的に契約を解除できるとの条項を入れておく方が良い場合があります。ただし、継続的契約の法理というものがあり、この解約予告条項があれば、必ず長年続けて来た契約を予告期間のみで解除できるわけではありませんので、この点、留意ください。

(9)契約解除(関連条文:「第18条 契約の解除」)

第18条(契約の解除)
1 甲又は乙は、相手方が次の各号のいずれかに該当したときは、催告その他の手続を要しないで、ただちに本契約及び個別契約並びに甲乙間の一切の契約の全部又は一部を解除することができるものとする。また、この解除は損害賠償の請求を妨げない。

  • (1)監督官庁より営業の取消し、停止等の処分を受けたとき
  • (2)支払停止又は支払不能の状態に陥ったとき、又は不渡り処分を受けたとき
  • (3)信用資力の著しい低下があったとき又はこれに影響を及ぼす営業上の重要な変更があったとき
  • (4)第三者より差押え、仮差押え、仮処分、その他強制執行、競売の申立て又は公租公課の滞納処分等を受けたとき
  • (5)破産、商法上の整理、民事再生、会社更生手続開始の申立て等の事実が生じたとき
  • (6)解散の決議をし、または他の会社と合併したとき
  • (7)前各号に準ずる不信用な事由があったとき
  • (8)災害、労働争議その他により、本契約又は個別契約の履行を困難にする事由が生じたとき
  • (9)相手方に対する詐術その他背信行為があったとき

2 甲又は乙は、相手方が本契約又は個別契約に違反した場合、相当の期間をおいて催告のうえ本契約及び個別契約の全部又は一部を解除することができる。
3 甲又は乙は、自己に第1項各号の一にでも該当する事由があるとき又はそのおそれのあるときは、ただちに相手方に通知するものとする。

継続的な売買の場合、買主にも売主にも、特定の事象が発生した場合には、売買基本契約を継続したくないとの意向があるかと存じます。売買基本契約は、ある程度長期の期間を定めて行われますので、契約解除事由については、民法の任意規定に任せず、事由を個別に列挙しておくことが、何かが発生した際に、不本意な契約を継続しないで済むことにつながります。一方当事者の信用不安等がその典型例だと思います。

(10)契約期間(関連条文:「第21条 有効期間」)

第21条(有効期間)
本契約の有効期間は、本契約締結の日より1年間とする。ただし、期間満了の3か月前までに甲乙いずれからも書面による改定、終了等の意思表示がないときは、本契約は自動的に1年間延長されるものとし、以後も同様とする。

契約期間の条項も設けるべき条項の一つです。売買基本契約は、基本的には問題がなければ、長期継続することを想定しているケースがほとんどですので、当初の契約期間が1年や2年であるとしても、問題がなければ自動的に契約が更新される自動更新条項を入れるべきでしょう。

以上が、売買基本契約書を作成する際の一般的に留意すべき条項になります。
売買基本契約は、様々な業種において多用する可能性が高い契約類型です。取引先や商品の特質によりアレンジを加えて、契約締結までの時間を短縮することができますので、一度、自社の雛形を作成しておくことをお勧めいたします。

以上

売買基本契約書 ひな型

売買基本契約書 ひな型

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著者プロフィール

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金子 朝彦

柏木総合法律事務所 弁護士

2010年弁護士登録(第一東京弁護士会)、公益財団法人日本動物愛護協会監事(2016~)
長谷川俊明法律事務所を経て、現在、柏木総合法律事務所。主な担当事件は、国内民商事訴訟、国内及び国際商取引、国内外企業法務、人事・労務法務等。
著書に、『最新 債権法の実務』(共著・新日本法規出版株式会社)、『最新モデル 会社契約 作成マニュアルCD付』(共著・新日本法規出版株式会社)等がある。

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