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就業規則の作り方 みなし労働時間制とは?

著者:社労士事務所ライフアンドワークス 代表  角村 俊一

就業規則の作り方 みなし労働時間制とは?

実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ決められた時間を働いたと「みなす」ことができる制度がみなし労働時間制。「事業場外みなし労働時間制」、「専門業務型裁量労働制」、「企画業務型裁量労働制」の3種類があります。みなし労働時間制が適用されると、例えば、「事業場外みなし労働時間制」においては、所定労働時間が8時間であれば、実際の労働時間が7時間でも9時間でも、8時間働いたものとみなされます。実労働時間の過不足による賃金の控除や残業代の支払いはありません。ただし、事業場外という理由のみをもって、みなし労働時間制が適用されるわけではないので注意してください。今回はみなし労働時間制について解説します。


みなし労働時間制の種類

みなし労働時間制が適用されるのは次のとおりです。

【みなし労働時間制の種類と適用】

みなし労働時間制では、実際に労働した時間に関係なく、下記の時間を労働したとみなされます。

【各制度のみなし労働時間】


事業場外みなし労働時間制とは

事業場外みなし労働時間制は、労働者が事業場外で労働する場合で労働時間の算定が困難な場合に、原則として就業規則で定めた所定労働時間を労働したものとみなす制度です。

【就業規則の規定例】

労使協定の締結は義務付けられてはいませんが、労使協定があるときは、その協定で定める時間が当該業務の遂行に通常必要とされる時間となります。

【労使協定の規定例】

協定で定める事業場外のみなし労働時間が法定労働時間(1日8時間)を超える場合は、労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。8時間以下の場合は届け出不要です。


事業場外みなし労働時間制の注意点


事業場外みなし労働時間制の対象となるのは、労働者が事業場外で業務に従事するため使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な場合です。よって、事業場外でも使用者の指揮監督が及んでいる次のような場合は労働時間の算定が可能なので、みなし労働時間制の適用はできません。

① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合

② 無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合

③ 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

現在はスマートフォンや携帯電話が普及しており、また、勤怠管理についてもweb上で打刻や申請が可能なシステムもありますから、労働時間の算定が困難な状況はかなり限定的になると思われます。

【過去の裁判例】


裁量労働制の概要

専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務に労働者を就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。対象は19業務に限られており、労使協定の締結が必要です。

企画業務型裁量労働制は、事業運営の企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない業務について、労使委員会で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。

裁量労働制を含め、みなし労働時間制を導入している企業はそれほど多くありません。厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」によると、みなし労働時間制を採用している企業割合は13.0%です。種類別では、「事業場外みなし労働時間制」が11.4%、「専門業務型裁量労働制」が1.8%、「企画業務型裁量労働制」が0.8%となっています(複数回答)。

柔軟な労働時間制の1つである変形労働時間制を採用している企業割合(59.6%)と比べると、みなし労働時間制を導入している企業割合はかなり低い状況です。多様で柔軟な働き方の推進で導入企業が増えるかどうかは未知数ですが、導入に際しては要件等を確認の上、適切な運用をお願いいたします。

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著者プロフィール

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角村 俊一

社労士事務所ライフアンドワークス 代表

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

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