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採用のミスマッチを防ごう 入社直後にやること

著者:一般社団法人日本テレワーク協会 相談員  小山 貴子

採用のミスマッチを防ごう 入社直後にやること

1. 入社日には「働くときの基礎知識」を

いよいよ入社日。採用担当としては「あー、やっと入社までこぎつけることができた。あとは現場で頑張ってくれれば・・・」と、自身の手が少し離れたことを感じる日でもあります。ただ、ここは気を抜いてはいけないところです。昨今、この段階でもさまざまな工夫が必要だと思うからです(新入社員であれば、入社日に式の後、新人研修がスタートする会社もあるかと思いますので、引き続き手を抜けない状況であると思います)。

御社は新入社員研修の目的を何においていらっしゃいますか?この研修は、社会人としてのルール、マナーの習得や基本技術の取得に偏りがちですが、それ以上に大切にしなければならないことがあると思います。私も新入社員研修の提案や依頼をいただきますが、「働く時の基礎知識」をテーマに時間をいただくことが多くなりました。主な内容としては、以下となります。

  • 働く心構え
  • 労働基準法の理解(実際に働く場面に則して法的にどう判断をされるのか具体的な内容)
  • 社会保険の基礎知識(給与明細の見方等も)
  • ハラスメントの知識

学生のうちから「ブラック企業」「ホワイト企業」という言葉を知っている人も多いですが、正しい法を知らずに「こういうものがブラック、こういうものがホワイト」という感覚で、言うなれば浅い知識で発言しているのを折々に聞くことがあります。

ハラスメントの思い込みの影響は甚大です。上司や先輩から「これはダメだよ!」と言われただけで「人格否定だ!」「ハラスメントだ!」という認識でいたり、人事や相談窓口に都度問い合わせをしたり、ということを見聞きしたこともあります。ハラスメントは一般的には上司から部下にベクトルが向かうと思いがちですが、逆もまた真なり。上司や先輩のパソコンスキルが低いことを揶揄することもハラスメントです。もちろん、上司や先輩たちもハラスメントを学ぶ必要がありますが、新入社員が学ぶことの必要性も感じます。どんな仕事にも「やってはいけないこと」があり、それを理解する必要があります。特にリスクを伴うような場面では、周りの人が咄嗟にその人に触れてしまうこともあるでしょう。「自分を守る」というベクトルが違った方向に行っているのであれば、それを初期に正す必要を感じます。また、そのような姿勢でいると、上司や先輩からも仕事を教えてもらえなくなったり、徐々に孤立したり、自ら職場を苦痛の空間にしてしまう人もいます。現場配属前に正しい情報を得て、自ら職場をより良い空間にしていってもらいたいものです。


2. 人生で最も素直になっている1日

中途採用の人は、新入社員に比べて入社日に手が離れることが多いでしょう。ただ、ここでも初日にいきなり現場配属するのではなく、研修の時間に充てることをお勧めしています。中途採用者の入社初日というのは、「人生で最も素直になっている1日」と言われます。

「もう一度、一からやり直そう!」

「白紙からスタートだ!」

転職者はこんな風に考えているものです。そのような大事な1日に、総務の担当者が就業規則や会社概要のみを説明するにとどまっていませんか?それすらも実施されてない企業も多くあるでしょう。また、実務的な仕事をすぐにさせてしまっていませんか?ましてや本来的な業務も与えず単純作業をやってもらったり、「周りの人がやっていることを見ていて」というような話で終わっていたりするのであれば、人事の考え方を根本から変える必要があると思います。人間が素直な気持ちで物事を受け入れられる時期は最大の教育チャンスです。

多くの新入社員が同じ日に入ってくる大企業では、研修の仕組みが整っていますが、中途採用者がばらばらに入ってくる中小企業では、きちんとした中途採用者向けの研修システムができあがっていないことがほとんどです。中途社員の離職理由には、「初日から放っておかれた」ということが多いとも言われています。中途採用の社員に早く会社になじんでもらい、会社の一員として、自覚とやる気を出してもらうため、そして中途採用社員の定着率を向上させるためにも、そういう素直な1日にこそ、社長や会社の思いを伝え、理念を共有する機会を作るべきではないでしょうか(これまでの転職者の状況をお聞きした上で、上記「新入社員研修」で話をさせていただいた「働く時の基礎知識」の内容も必要だと思う会社には、中途採用者にも同じ内容の研修を実施しています)。


3. さまざまな試み~1日でも早く「仲間」に

他にも入社初日の工夫にはさまざまなことが挙げられます。

皆さんが所属している会社では、従業員のプロフィールがお互いに分かるようになっていますか?もちろん個人情報の領域ではなく(住所やプライベートの携帯番号などではなく)、これまでどんな経験をしてきたか、得意な業務はどんなことか等のことをイメージしています。

現場に配属されると、職場に所属している人達のことはほぼ分からないところから始まります。自分が知っている情報はほぼ0の中、他の方には自分のことが知られているという状況になります。自分だけが知らないことを質問するのはなかなかできないものです。徐々に知っていけばいいという考えの方もいらっしゃるかと思いますが、スピードが早い環境下、のんびり人を知りながら徐々に仕事をしていくということも悠長なものです。1日でも早く「仲間」になれる仕組みが必要でしょう。

メンター・メンティー制度を設け、「分からないことがあれば、まずはこの人に聞く」ということを明確にするにも一つの方法です。メインで面倒を見る人がいたとしても、組織、職場全体で新しく来た人の成長を促すようにしたいもの。他の人は知らん顔では、いい雰囲気の職場とは言い難いでしょう。

入社して1か月、3か月、半年・・・決まった時期に人事が面談をする場も設けたいものです。中途採用の人が感じる違和感を真摯に受け止めていくと、非常にいい意見が出てくることがあります。人事の役割として、個人の状態の確認と共に、所属する組織をより良くしていくためという観点を持ち、優先度高く、面談を実施してみてください。


4. リファーラル採用~「いい人」の紹介は従業員から

もしまだ採用を続けていく必要があるようであれば、このタイミングで「いい人がいたら紹介して欲しい」と新入社員や中途入社者にお伝えしてみてください。リファーラル採用の重要性が言われて久しいですが、従業員に「いい人がいたら紹介して!」だけではなかなかいい人は紹介してもらえません。「会社が思ういい人」の定義を明確にし、ターゲットになる人はどんな人か、どんなところにいるのか等を伝え、「知り合いであればこの人」ということを具体的にイメージしてもらう。ここまですると、やっと「自社のことを宣伝してくれる」行動を起こしてもらえるようになります。是非次の「いい人」に巡り合うことができるようにさまざまな工夫を凝らしてみてください。

リファーラルが行われる確率が高いタイミングは、入社直後から数年の間です。入社した喜びが高い時は知り合いに自分の会社の話をしようとします。その時を逃してなるものか。学生の内定者であれば、内定時代から「いい人を紹介して!」という声かけをすることも非常に有効です。「こんな後輩を紹介して欲しい」と言ってみれば、すぐ面接までこぎつけることができるでしょう。

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著者プロフィール

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小山 貴子

一般社団法人日本テレワーク協会 相談員

1970年生まれ。12年間のリクルート社勤務後、ベンチャー企業の人事、社労士事務所勤務を経て、2012年社会保険労務士事務所フォーアンド設立。ただいま、テレワーク協会の相談員と共に、人事コンサル会社の代表取締役、東証一部上場企業の非常勤監査役、一般社団法人Work Design Labのパートナー、東京都中小企業振興公社の専門相談員等にも携わる。2年半ほど横浜と大分の2拠点生活を実施中。

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