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就業規則の作り方 介護支援の規程整備を

就業規則の作り方 介護支援の規程整備を

介護離職者は1年間に約10万人。

高齢者が増え現役世代が急減する今後、基幹業務を担う労働者の、突然の介護離職が企業の存続を危うくするかもしれません。

仕事と介護の両立支援を進め、介護離職を防ぐことは企業の大きな課題です。

今回は、介護休業などについて定める介護休業規程について説明します。


増加する要介護者等

健康寿命が延伸しました。2019年時点で男性が72.68歳、女性が75.38歳となり、2016年と比べて、男性が0.54年、女性が0.59年延伸しています。2019年の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳ですから、健康寿命との差は男性が8.73年、女性が12.07年となりました。この平均寿命と健康寿命の差が介護を必要とする期間です。厚生労働省「令和元年度 介護保険事業状況報告(年報)」によると、要介護(要支援)認定者数は令和元年度末現在で669万人となっています。介護保険制度が始まった平成12年度(2000年)は256万人ですから、高齢化社会の進展とともに、要介護者等も大きく増加したといえるでしょう。

【要介護(要支援)認定者数の推移】

平成12年度

平成17年度

平成22年度

平成27年度

令和元年度

256万人

432万人

506万人

620万人

669万人

(参考:厚生労働省「令和元年度 介護保険事業状況報告(年報)」)

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年も間近に迫り、要介護者等の減少は見込めません。労働者の介護離職を防ぐための取組が急務です。


介護休業制度とは

介護離職を防ぐための制度として、介護休業制度が設けられています。

【介護休業制度とは】

要介護状態にある対象家族を介護するため、対象家族1人につき3回まで、通算して93日間休業することができる制度

対象となる家族は、配偶者 (事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。通算で93日間の休業ですから、自分が介護を行うというより、仕事と介護を両立できる体制を整える期間としての意味合いが強いといえます。企業としても、職場復帰後の仕事と介護の両立に向けて、出来る限りの支援を行いたいものです。


対象となる労働者の要件

介護休業の対象となる労働者に関し、令和4年3月31日までに申出を行う場合と、令和4年4月1日以降に申出を行う場合とで要件が異なりますので、確認をしておきましょう。原則として、対象家族を介護する労働者(日々雇用を除く)が介護休業の対象ですが、パートやアルバイトなど、期間を定めて雇用されている方は申出時点で次の要件を満たすことが必要です。

令和4年3月31日までの申出

令和4年4月1日以降の申出

  • 入社1年以上であること。
  • 取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

令和4年4月1日からは、「入社1年以上であること」という要件が廃止されます。ただし、労使協定を締結している場合には、以下の労働者を対象外とすることができます。

  • 入社1年未満の労働者
  • 申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

介護休業に関する規定例

介護休業に関する規定例をみてみましょう。

【規定例】

第〇条(介護休業の対象者等)

  • 1 要介護状態にある家族を介護する労働者は、申出により、延べ93日間までの範囲で3回を上限として介護休業をすることができる。ただし、有期契約労働者にあっては、申出時点において、介護休業を開始しようとする日から93日経過日から6か月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない者に限り介護休業をすることができる。
  • 2 前項にかかわらず、労使協定により除外された次の労働者からの休業の申出を会社は拒むことができる。
      • ① 入社1年未満の労働者
      • ② 申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
      • ③ 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 3 要介護状態にある家族とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある次の者をいう。
      • ① 配偶者
      • ② 父母
      • ③ 子
      • ④ 配偶者の父母
      • ⑤ 祖父母、兄弟姉妹又は孫

手続き要件として、労働者は休業開始予定日の2週間前までに、書面等により企業に申出る必要があります。労働者からの申出があった場合、企業は、介護休業開始予定日及び介護休業終了予定日等を速やかに書面等で労働者に通知しなければなりません。

【規定例】

第〇条(介護休業の申出の手続等)

  1. 介護休業をすることを希望する労働者は、原則として介護休業開始予定日の2週間前までに、介護休業申出書を○○課に提出することにより申出るものとする。なお、介護休業中の有期契約労働者が労働契約を更新するにあたり、引き続き休業を希望する場合には、更新された労働契約期間の初日を介護休業開始予定日として、介護休業申出書により再度の申出を行うものとする。
  2. 会社は、介護休業申出書を受け取るにあたり、必要最小限度の各種証明書の提出を求めることがある。
  3. 介護休業申出書が提出されたときは、会社は速やかに介護休業申出書を提出した者に対し、介護休業取扱通知書を交付する。

介護休業中の給与は?

介護休業中の給与等についても定めておきましょう。

【規定例】

第〇条(給与等の取扱)

  1. 介護休業の期間については、基本給その他の月毎に支払われる給与は支給しない。
  2. 賞与については、その算定対象期間に介護休業をした期間が含まれる場合には、出勤日数により日割で計算した額を支給する。
  3. 定期昇給は、介護休業の期間中は行わないものとし、介護休業期間中に定期昇給日が到来した者については、復職後に昇給させるものとする。
  4. 介護休業により給与が支払われない月における社会保険料の労働者負担分は、会社が立て替えて翌月○日までに労働者に請求するものとし、労働者は、会社が指定する日までに支払うものとする。

なお、給与の支払がない場合、労働者は雇用保険から介護休業給付金を受け取ることができます。


その他の支援制度

介護休業以外の制度も確認しておきましょう。

介護休暇

対象家族が1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年10日まで取得できます。なお、令和3年1月1日から、時間単位でも取得できるようになっています。

短時間勤務等の措置

会社は、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差出勤制度、介護費用の助成措置のうち、1つ以上の制度を設ける必要があります。

所定外労働の制限

労働者が申請した場合、会社は所定外労働を免除しなければなりません(残業免除)。

時間外労働の制限

労働者が申請した場合、会社は、1か月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせてはなりません。

深夜業の制限

労働者が申請した場合、会社は深夜労働をさせてはなりません。

以上のように、労働者の仕事と介護の両立支援のため、介護休業制度をはじめとした支援制度が設けられています。しかし、これらが社会全体に広く普及しているとはいいがたい状況です。例えば、介護休業についてみてみると、平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間に介護休業取得者がいた事業所の割合はわずか2.2%にすぎません(厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」)。今後、高齢者の増加と現役世代の急減という時代を迎えます。労働者が介護離職しないで済むよう、支援の広がりが求められています。

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著者プロフィール

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角村 俊一

社労士事務所ライフアンドワークス 代表

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

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