女性活躍推進法とは? 2022改正にも対応! わかりやすく解説
社会や企業において、自らの力を存分に発揮したいと希望する女性のために、「女性活躍推進法」という法律が制定されています。
2022年に内容が一部改正され、企業はこれまで以上に女性が働きやすい環境の構築を求められるようになりました。
そのために、企業がどのような取り組みを行うべきなのか、本記事でわかりやすく解説します。
女性活躍推進法とは?
女性活躍推進法で、実際に女性の活躍機会は増加しているのでしょうか。
まずは女性活躍推進法について、2022年の改正も含めてわかりやすく解説します。
女性活躍推進法とは
女性活躍推進法は、正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」と呼ばれます。
社会で働くことを希望する全ての女性が、個性を活かしながら能力を発揮できる社会を実現する目的で、2015年8月に成立、翌2016年4月に施行されました。
事業主(国・自治体・企業など)が女性が活躍しやすい職場環境を構築するにあたっては、次の義務が課せられています。
- 女性社員の就業状況調査、課題の分析
従業員に対する女性の採用・管理職の比率、男女間における勤続年数の開き、労働時間の状況などが項目に含まれます。 - 行動計画の策定・公表
調査した状況から改善点を見出し、具体的にどのような行動により改善するかを策定・公表します。例えば、女性管理職の比率が低ければ、積極的に管理職に昇進させるなどの方法があります。 - 行動計画の実施および効果の判定
先に決めた行動計画の実施状況を公表し、効果が現れたかどうかを判定します。
女性活躍推進法が施行された背景には、日本の働く現場において、女性の力を十分に発揮できる場が少ないという現状があげられます。
現在でも出産や育児をきっかけに離職する女性が多く、再就職後の雇用形態を見ても、男性に比べ非正規雇用者の割合が高くなっています。
そのため、賃金が低かったり雇用が不安定になったりするうえ、長期的なキャリア形成が難しくなっているのです。
少子高齢化が急速に進んでいる日本では、将来の労働力不足が懸念されています。労働力確保に向けて、企業における人材の多様性にも対応していかなくてはなりません。
この状況において、労働を希望する女性が状況に応じて働けるように、社会全体で取り組んでいく必要があります。
2022年の改正では何が変わった?
女性活躍推進法は、2022年4月から一部改正されます。
これまでは行動計画の策定や届け出などの義務化対象とされていた事業主は、常時雇用する従業員が301人以上いることが条件でしたが、2022年4月からは、101人以上の事業主へ対象が拡大されます。
従業員数が100人以下の事業主では努力義務とされていますが、どの規模であっても、女性が働きやすい職場環境づくりは必須の課題といえるでしょう。
また、「常時雇用する従業員」とは、正社員だけを指す言葉ではありません。
契約社員やパート・アルバイトであっても、次のいずれかに該当する従業員は、常時雇用する従業員とみなされます。
- 期間を決めずに雇用されている
- 1年を超えて雇用されている、もしくは1年以上の雇用が見込まれている
正社員以外の従業員が多数いる事業主は、この条件を見落とさないようにすることが重要です。
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女性活躍推進法のメリット
女性活躍推進法は、先にあげた義務を守らない場合でも、企業が罰則を受けることはありません。
しかし、この法律を遵守することで、働きたいと希望している女性と企業の両方に、多くのメリットがもたらされます。
本項では、両者が受けられるメリットについて詳しく解説します。
企業のイメージアップにつながる
女性活躍推進法を取り入れると、企業をあげて女性の活躍を応援している姿勢が世間にアピールでき、企業のイメージアップにつながります。
採用活動においても、他社に比べ福利厚生の面で競争力が上がり、企業価値の向上が期待できるのです。
女性が活躍できる場を多く提供している企業は社会的な評価を得やすく、労働機会の提供という社会的責任を果たすうえでも、企業にとって重要な課題となっています。
えるぼし認定とは
女性活躍推進法に基づく認定制度として、「えるぼし認定」という制度があります。
厚生労働省が実施しているものであり、認定を受けるには「えるぼし認定基準」を満たさなくてはなりません。
えるぼし認定は、採用・継続就業・労働時間等の働き方・管理職比率・多様なキャリアコースの5項目において基準が定められ、満たしている基準の数や内容によって、認定マークが3段階に分けられています。
認定マークは、自社のホームページおよび製品、求人広告などへの掲示が可能で、女性の活躍を推進している企業であると国のお墨付きを受けた証しだと言えるのです。
また、えるぼし認定よりもさらに高い水準を満たすと、「プラチナえるぼし」の認定が受けられます。プラチナえるぼしでは、情報公表項目の実績を、「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表する必要があります。
2022年1月末日現在で、えるぼし認定企業として全国で1,641社、プラチナえるぼし認定企業として全国で23社が認定を受けています。
公共調達や低利融資の優遇がある
えるぼし認定やプラチナえるぼし認定を受けた事業者は、公共調達において加点評価が受けられるほか、日本政策金融公庫の「地域活性化・雇用促進資金」において、低金利の融資を受けられる優遇措置も設けられています。
これは、えるぼし認定・プラチナえるぼし認定が、企業をあげて職場環境の改革を進めている証しのひとつだと考えられているためです。
さらに、5つのコースが設定された両立支援助成金を申請することもでき、目的に応じて適切な助成金を選ぶことが大切です。
なお、両立支援助成金のうち、女性活躍加速化コースについては、2022年3月末で受付が終了しました。
その他のコースについても、申請時点で受付が行われているかどうかを確認するようにしましょう。
ワークライフバランス向上で、優秀な人材が定着する
女性が働きやすいと感じる環境は、女性のみならず男性も同じように感じるものです。
仕事のやりがいを感じられる職場は、全ての社員が働きやすく、雇用の機会と待遇が男女問わず平等に確保されるようになります。
ワークライフバランスが重視される昨今では、仕事と家庭の両立度合いを個々で考えられる職場が求められます。
このような職場であれば優秀な人材が集まるうえ、人材の定着にもつながります。女性が、育児や介護などで働く時間や日数が制限されても、働き方そのものの評価が下がらなければ、仕事へのモチベーションを保つことが可能です。
離職を余儀なくされた場合でも、再就職のサポートがあれば、女性が働きやすい環境が構築でき、ライフスタイルに応じたさまざまな働き方や生き方を選択できる社会へと変化していくのです。
女性活躍推進法における企業の義務、4つのステップ
女性活躍推進法を遵守するにあたって、企業は4つのステップを経たうえで義務を果たす必要があります。
各ステップにおいて適切な対応を行い、継続的な取り組みを行う姿勢が求められます。具体的に、どのように取り組んでいけば良いのか、流れに沿って見ていきましょう。
1.状況を把握し、分析する
最初に、従業員の雇用管理区分を確認します。
これは、後述する基礎項目や選択項目を分類するのに、管理区分ごとの状況把握が必要なケースがあるためです。企業ごとの雇用管理の実情に合わせて、例えば次のように区分するのが一般的です。
- 総合職、地域限定総合職、一般職
- 技術職、事務職、営業職
- 正社員、パート
次に、自社の業務において、女性がどのぐらい活躍しているのかを、基礎項目に基づいて把握します。
基礎項目とは、「採用者に占める女性労働者の割合」「管理職に占める女性労働者の割合」「平均継続勤務年数の男女間の違い」「労働者の平均残業時間等の状況」の4つです。
この4つの数値を基に、自社の課題がどこに潜んでいるのかを把握し、解決すべき優先順位を決めます。
基礎項目にプラスして、追加することで状況が把握しやすくなる項目(選択項目)を決めます。採用、配置・育成・教育訓練、キャリアコース、職場風土改革、賃金格差、定着などがあるため、企業の実情に応じた項目を選択し、より詳細な課題を分析しましょう。
2.一般事業主行動計画を策定する
課題が分析できたら、課題を解決するための一般事業主行動計画を策定します。
ここで注意したいのは、女性活躍推進法が10年間の時限立法である点です。期限内に数値目標を達成できるように、計画を立てなくてはいけません。
行動計画に含むべき項目は、計画期間・数値目標・目標達成のための取り組み内容・実施時期の4つです。行動計画の策定では、女性を過度に優遇すると、男女雇用機会均等法に対する違反行為となるため、内容の十分な精査をする必要があります。
また、計画が作成できたのち、社内での周知と外部への公表が必要です。
社内周知については決められた方法がないため、企業ごとに労働者全員が把握できる方法を採ります。外部公表は、自社のホームページへ掲載するか、もしくは女性活躍推進企業データベースへの掲載が一般的です。
3.都道府県労働局に届け出る
一般事業主行動計画が策定されたら、企業を管轄する都道府県労働局に届け出ます。
これは女性活躍推進法8条1項により義務付けられているため、記入例に従って書類を作成し、必ず届け出ましょう。
届け出の方法は、電子申請・郵送・直接持参のいずれも可能です。様式は、所定の書式以外にも、必要事項が記載されていれば他の書式でも受理されます。
4.取り組みを実施し、効果を測定する
計画の届け出が完了したら、計画に沿って取り組みを実施します。
確実な目標達成のために、定期的に達成状況を確認したり、取り組みの実施状況を点検・評価したりする行動が重要です。
状況によって、計画通りにうまく進まないことがあれば、計画の変更が求められるケースもあるでしょう。その場合には、状況把握・課題分析に戻り、目標や計画を立て直すと、取り組みがスムーズに行える可能性もあります。
女性活躍推進法の課題
女性活躍推進法に沿って、女性が活躍できる場を増やそうと取り組む企業も増えています。
その一方で、課題が浮き彫りになっているのも事実です。どのような課題があるのでしょうか。
社員の意識改革が進みにくい
社員の意識改革が進まないうちに、女性活躍推進法に沿って策定した計画を実行することはできません。
女性活躍という言葉だけが独り歩きしてしまい、実際にどのような行動を起こせばいいのか、社員が理解していないという企業も多く見られます。
まずは、女性活躍推進法の意図を社員全体へ周知し、職場環境の整備が職場全体にもたらすメリットを理解してもらうことが必要です。
管理職になりたい女性が少ない傾向がある
組織を上げて管理職の女性を増やそうとしても、ワークライフバランスを考えると、女性が管理職を目指しにくい傾向が見られます。
モデルとなる管理職女性が身近にいないと、男性社会の傾向が強い日本の企業で、自ら管理職を目指す女性が少ないのも納得できるでしょう。
女性ならではの気遣いやコミュニケーション能力は、管理職にとって大変重要なスキルです。企業側から、女性管理職のロールモデルを示し、キャリア像を提示することも一つの方法です。
出産・育児・介護で辞めざるを得ない
女性が長く働き続けたいと思っても、出産・育児・介護などの理由で辞めざるを得ないケースも多く見られます。この傾向は、30代の女性を中心に見られるため、「M字カーブ現象」と呼ばれ、日本の特徴だと言われています。
しかし近年では、時短勤務やフレックス制、テレワークなどの多様な働き方ができるようになり、M字カーブは改善される傾向があります。
女性活躍推進法には課題も残りますが、まずは社内に制度を周知し、広めていくことが大切です。これにより、誰もが働きやすい職場環境が整い、一人でも多くの社員が長く働ける結果につながるでしょう。
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