時短勤務とは? 適用の条件・導入の目的・メリットなどを解説
時短勤務制度は、積極的に取り入れている企業と、まだ検討中の企業とで二分している印象です。厚生労働省が定めるところによると、現在は施策を段階的に踏んでいる状況です。
2022年10月より新たに実施される施策をきっかけに、時短勤務を積極的に取り入れる企業も増えるかもしれません。
そもそも時短勤務とはどういう勤務のことをいうのか、定義や目的などを改めて見ていきましょう。この記事では、現在時短勤務を積極的に導入している企業の事例も挙げて解説します。
時短勤務とは?
はじめに、時短勤務とは何かを説明します。定義や目的を知り、時間勤務への理解をより深めてください。
時短勤務の定義
時短勤務(短時間勤務)とは、1日の労働時間を短縮して勤務することを指します。この時短勤務制度は、1日の所定労働時間を原則として6時間としています。
時短勤務制度は、育児・介護休業法により、労働者が仕事と育児や介護などを両立できるために定められたものになります。
企業が時短勤務を導入する目的
時短勤務制度が策定された背景の一つとして、少子高齢化問題があります。いままで社会では仕事と家庭を両立できる環境整備が整っていませんでした。そのため、結婚や出産などのライフイベントのたびに就労か家庭に入るか、どちらか一つを選ばざるを得ない状況にありました。
そんななか、働き方改革により、仕事と家庭の両立であるワークライフバランスを進める動きがあります。時短勤務もその一環です。
時短勤務が導入された背景の一つとして、2021年に育児・介護休業法を大きく改正したことが挙げられます。この法改正により、育児および介護の両立を目指した施策が、段階的に実施される見込みです。内容は次のとおりです。
【2022年10月1日から実施】
- 産後パパ育休(出生育児休業)の創設
- 育児休業の分割取得が可能に
【2023年4月1日から実施】
- 育児休業取得状況の公表化の義務化
企業が時短勤務を導入するメリット・デメリット
時短勤務を導入するにあたり、企業にはどのようなメリットやデメリットがあるのかを見ていきます。
時短勤務のメリット
時短勤務を導入するメリットとして二つ挙げられます。
- 採用時のブランディング効果を高められる
企業が時短勤務制度を導入することで、育児や介護に重きを置いている求職者にとって魅力的に写ります。
- 従業員の離職リスクを低減できる
すでに企業で働いている従業員のなかにも、育児や介護の都合で時短勤務を希望している人もいるかもしれません。
そういった方はもちろん、従業員のためを想った職場環境の拡充により「この会社はちゃんと社員のことを考えている会社だ」と思われるようになり、離職者の低減が見込めます。
時短勤務のデメリット
時短勤務にはデメリットもつきものです。二つ挙げますので、詳しく見ていきましょう。
- 従業員同士による格差、差別、不満が起こりやすい
いくら職場環境を充実させたとしても、それだけですべてうまくいくわけではありません。
育児や介護で時短勤務制度を使いたい人もいれば、一方でそういった都合がなく、時短勤務制度を必要としない人も当然存在します。
たとえば、家庭の都合で時短勤務制度を使うにしても、人が抜けた分の仕事のしわ寄せが誰かにいく可能性があります。必要とする側としない側で溝ができ、トラブルに発展するケースもあるため注意が必要です。
- 収入が減少するケースがある
時短勤務は勤務時間が通常より減少するため、それに応じて収入も減少します。その他、時短勤務だからといって不当・不利益な扱いをすることは当然禁じられています。
しかし、仕事内容の都合上、時短勤務の人には任せられないような仕事もあるかもしれません。
昇進や賞与の査定の際に、プラスになる材料が少ないという状況になる可能性もあるため、こちらも注意が必要です。
時短勤務に該当する条件は? 対象者・非対象者
時短勤務は、誰もが適用される制度ではありません。対象者となる人、非対象者となる人がいますから、当てはまるかどうか確認しましょう。
時短勤務の対象者
下記の要件がすべて当てはまる人が、対象者となります。
- 3歳に満たない子を養育する労働者である
- 1日の所定労働時間が6時間以下でない
- 日々雇用される者でない
- 短時間勤務制度が適用される期間に、現に育児休業をしていない
- 労使協定により、適用除外とされていない
つまり、上記を詳細に説明すると、時短勤務は男女どちらも利用が可能です。また、夫婦共に時短勤務を選択することもできます。もともとの労働時間が時短勤務制度の原則6時間以下の場合、または日雇いの従業員は、制度の適用対象ではありません。
現在、育児休業を取得している従業員は、重ねて短時間勤務制度を適用することはできません。労働者と使用者間の取り決めのなかで、何らかの理由で従業員が時短勤務適用対象外となっているケースもあります。
時短勤務の非対象者
では、非対象者となる要件を見てみましょう。
- 日々雇用される従業員
- 入社から1年未満の従業員
- 1週間あたりの所定労働日数が2日以下である従業員
- 業務の性質等を考慮して、短時間勤務制度の適用が困難な業務にあたる従業員
上記からわかるとおり、基本的に短時間しか勤務していない人はもとより、短期間しか会社に在籍していないような従業員は、短時間勤務制度の適用対象にはなりません。
そのため、パート・アルバイトの方などは対象にならないケースが多いようです。
時短勤務を導入している会社の事例
ここでは、時短勤務を導入している企業の事例を見てみましょう。導入したことによる効果がどのようなものかを知ることができます。
トヨタの時短勤務は、4時間から可能
上記にも記載がありますが、トヨタではワークライフバランスの支援策の一環として従業員が4時間、6時間、7時間から勤務時間を選択できる施策を行っています。
対象になるのは事務や開発業務に携わり、小学生4年生までの子供を持つ社員です。
トヨタはその他社員の定着率を高めるため、6歳までの子供をもつ社員は夜勤を免除され、時短勤務も利用することができます。
ヤフー株式会社では、子供が小学校を卒業するまで時短勤務が可能
ヤフー株式会社は子供が小学校を卒業するまで、1日の所定労働時間を5時間までに短縮することが可能です。
その他、子供が小学校を卒業するまで、1日あたり1時間半までの時差出勤を認める「育児時差出勤」も導入しています。
各種社会保険完備だけでなく、団体定期保険や所得補償制度など、従業員に万が一があった場合の備えも行っており、職場環境作りを積極的に取り組んでいる企業というイメージが定着しています。
時短勤務についてのまとめ
2022年10月から新しい施策が実施される、時短勤務について紹介しました。まとめると、以下のとおりです。
- 時短勤務とは、1日の労働時間を短縮して勤務することをいう(原則6時間)
- 時短勤務を導入するには、メリットとデメリットがある
- 時短勤務の制度には対象者と非対象者がいる
- 対象者は、条件がそろえば時短勤務が適用される
時短勤務の導入に悩んでいる経営者は、制度を深く知ることでより身近に感じることができるでしょう。メリットやデメリットをふまえながら、制度の導入に役立ててください