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年俸制とは? 月給制との違いや会社のメリット・デメリットを解説

年俸制とは? 月給制との違いや会社のメリット・デメリットを解説

年俸制とは、従業員の成果・業績に応じて賃金額を決定する賃金制度のことをいいます。

実際の労働時間に関係なく、企業と対象となる従業員の間で合意のうえ、毎年支給額を決定します。年俸制は、正社員以外にも適用可能です。

年俸制には、経営計画が立てやすいなどのメリットがある一方、デメリットもあるので注意が必要です。

本記事では、年俸制の定義やメリット・デメリットを詳しく解説します。


この記事の監修者
弁護士法人山本特許法律事務所  パートナー弁護士 

年俸制とは?

年俸制とは、実際の労働時間に関係なく、従業員の成果・業績に応じて賃金額を決定する賃金制度のことをいいます。

支払方法としては、年俸額を12等分して支払うか、年俸額を14等分または16等分して、夏と冬のボーナス(賞与)に相当する分を6月と12月に支払う形のいずれかが一般的です。企業と対象となる従業員とで、毎年支給額を合意して決めます。

年俸制と月給制の違い

年俸制は、名前のとおり支払われる給与の額を年単位で決めます。一方で、月給制は、給与の額を月ごとに決めます。

年俸制の場合は、支給対象となる年の途中でその支給額が変更になることは、通常あり得ません。月給制の場合は、毎月の労働時間などによって、支給される金額が変わる可能性があります。

年俸制は、実際の労働時間と連動しない給与の定め方であるため、業務の成果を重視する成果主義を背景として用いられることが多いといえます。

正社員以外にも年俸制は適用される

年俸制は、給与の支払いについての合意方法のひとつです。支給対象となる従業員が正社員であるか、パートやアルバイトであるかどうかは問いません。

年俸制を取る場合には、契約書に年俸制を取ることを明記することになります。もっとも、労働時間に関係なく、成果重視で年俸制の給与とすることが多いため、短時間労働が多いパート・アルバイトの方にはなじみにくいといえます。

年俸制はいくらから?

年俸制の給与がいくらなのか、また、どの役職から年俸制にするべきかなど、特に明確な基準や決まりはありません。

年俸制は、成果主義と親和性が高い給与の支払方法ですが、なかでも管理監督者と機密事務取扱者は、年俸制を定めやすいといえます。

労働基準法によると、管理監督者と機密事務取扱者には、労働時間に関する規制がなく、労働時間が法定労働時間を超えても割増賃金を支払う必要はありません。

一般社員の場合、年俸制を採用しても、法定労働時間を超えて働くと残業代を支払う必要があるため、年俸制の意義が下がります。


年俸制を採用するメリット

ここでは、年俸制を採用するメリットを見ていきましょう。

経営計画が立てやすい

年俸制は労働時間を考慮することなく、年単位で給与を決める制度です。そのため、企業は、年俸制を採用している従業員の人件費をあらかじめ把握することができます。人件費の変動要素が少なくなるため、経営計画が立てやすいのがメリットです。

もっとも、従業員全員が年俸制を採用していなければ、確定している人件費は一部のみです。その場合、経営計画という点におけるメリットは、限定的といえるでしょう。

年俸制は賞与なしにもできる

ボーナス(賞与)とは、給与が支払われている労働者に定期的に支払う給与と別に支払う、いわば「特別な給与」です。ボーナスを支給するかどうかは、企業と労働者との合意によって決定します。

年俸制は年単位で給与を決める制度なので、ボーナスを年俸に含めて計算するかどうかも、企業と労働者で決めれば良いということになります。また、ボーナスの支払いは法律上の要請ではないため、年俸制のもと、支給しないことも可能です。


年俸制のデメリット

メリットが多い年俸制ですが、デメリットもあるため、どちらもしっかりと理解しておきましょう。

人件費を変更できない

年俸制は年単位で給与を決める制度です。そのため、仮に年俸制を採用した従業員が期中において成果を出せず、給与の減額をしたいと思っても、対象となる年の途中で金額を変更することはできません(懲戒処分による減給は除く)。

なお、年俸制の代わりに、半年単位で給与を決める「半期年俸制」という制度設計もあります。この場合は、半年単位であれば、人件費を変更できるということになります。

残業代の支払いは別途生じる

年俸制のもとでも、従業員が「1日8時間」の法定労働時間を超えて労働した分については、残業代を支払う必要があります。

あらかじめ残業時間を見越して、「みなし残業代」を支払う形で年俸制を定めることは可能ですが、みなし残業代分の残業時間を超えて勤務がなされた場合は、残業代が別途発生します。

ただし、裁量労働制において、みなし労働時間を1日8時間以内と決めれば、深夜労働以外、残業代は発生しません。また、管理監督者と機密事務取扱者は、法定労働時間の規制が適用されないため、深夜労働を除いて残業代の支払いは不要です。


税金面で年俸制のメリットはあるのか?

年俸制を採用することで税金面の影響が考えられるのは、所得税と社会保険料です。それぞれ、どのような影響があるのでしょうか。

所得税は、年俸制と月給制で最終的な違いはありません。年末調整を行うことを前提とすると、どちらも税務上、課税対象は同じ「給与所得」として捉えられ、計算は年単位で行われるためです。

一方の社会保険料は、次のどちらの支払方法にするかによって、金額が変わる可能性があります。

  • 年俸額を12カ月で均等に分割して、支払いを受ける方法
  • 年俸額を14等分もしくは16等分し、夏と冬のボーナス(賞与)に相当する分を6月と12月に支払う方法

一般的に、後者の方が社会保険料は高額になります。


年俸制についてのまとめ

年俸制の定義や、月給制との違いなどについて解説しました。

年俸制は、経営計画が立てやすく、賞与の有無も企業と労働者の合意によって決められるメリットがあります。一方で、年の途中で給与を変更することはできず、残業代は別途発生するなどの注意点もあります。

年俸制について正しく理解し、自社に取り入れるかどうかを検討しましょう。

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監修者プロフィール

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上米良 大輔

弁護士法人山本特許法律事務所 パートナー弁護士

2009年弁護士登録。大阪市内の法律事務所を経て、2012年にオムロン株式会社に社内弁護士第1号として入社、以降約7年にわたり企業内弁護士として、国内外の案件を広く担当した。特にうち5年は健康医療機器事業を行うオムロンヘルスケア株式会社に出向し、薬事・ヘルスケア規制分野の業務も多数経験した。

2019年、海外の知的財産権対応を強みとする山本特許法律事務所入所、2021年、弁護士法人化と共にパートナー就任。知的財産権案件、薬事規制案件を中心に、国内外の案件を広く取り扱う。

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