帰化申請の手順と申請書類
帰化申請は、外国籍の人が日本国籍へとなることです。 同時に元の国籍は失いますが、日本では毎年1万~1万5千人が申請しており、大半が許可されています。サッカーや相撲の世界では帰化選手が多数おり結果を残しています。実業家の中では、ソフトバンクの孫正義氏なども帰化日本人です。このように、帰化はその人だけでなく、日本にとってもプラスです。このページでは帰化申請の手順・条件・費用・期間などと、そのために使える書類を紹介します。
なぜ帰化して日本国籍を取得するのか?永住権(許可)と何が違う?
帰化と永住の比較
帰化 | 永住 |
---|---|
日本の国籍を持つことができる | 外国籍のまま |
市役所に届ければ、自分の戸籍を持つことができる | 自分の戸籍は持てない |
日本の公務員になることができる | 一部を除き、日本の公務員になるのは難しい |
選挙権・被選挙権が与えられ、日本の国政に自由に参加できる | 一部の自治体を除き、選挙権・被選挙権は与えられず、日本の国政には自由に参加できない |
日本のパスポートを持つことでき、外国で日本政府の庇護が与えられる | 外国人の身分のままなので、日本人としての特権は与えられない |
強制退去制度の適用は受けない | 強制退去制度の適用を受ける |
再入国は申請しなくても自由にできる | 再入国は申請しないとできない |
日本に帰化する人は、なぜそれを選んだのでしょうか。将来、母国へ帰る気持があるなら、帰化するよりも永住許可の方が良いでしょう。一方、日本人として今後も日本で暮らしていきたいと考えるなら、帰化するのが良いのではないでしょうか。
帰化のメリット
- 帰化の許可がおりれば、権利・義務ともに日本人と同じ。
- 家族で同じ「戸籍」に入ることができる。
- 外国人にはない「住民票」ができる。
- 日本のパスポートは、たくさんの国へビザなしで行けるので、特に商用で有利。
- 外国人登録カードの所持義務もなくなり、わずらわしい入管手続きから完全に解放される。
デメリット
- 現在の国籍を失う。
- ある程度の日本語能力(小学校低学年レベル)が必要。
永住権のメリット
- 国籍を変える必要がない。
- 「在留資格」などの滞在条件を心配せずに仕事ができる。
- 永住許可は、銀行からの融資を受けやすい。
- 日本語能力はあまり問われない。
デメリット
- 外国人のままなので、入管手続きの際外国人登録カードの所持・提示義務はなくならない。
- 出入国の際に指紋や写真の提示が必要。
- 永住とはいえ、外国人のままなので、万が一の場合は国外追放もある。
帰化の種類
普通帰化・特別帰化(簡易帰化)・大帰化の3種類(この区分名はいずれも通称)が認められています。なお、国籍法には届出による国籍取得の規定があり、この場合、要件を満たしていれば届出のみで国籍を取得することができる。これを「帰化」と区別して「(届出による)国籍取得」といいます。
(1)普通帰化
一定の要件を満たす外国人に対して許可される帰化の通称です。婚姻による日本人とのつながりがない外国人の場合などが、これに相当します。
(2)特別帰化(簡易帰化)
婚姻など一定の要件(日本人とのつながり)を満たす外国人に対して許可される帰化の通称です。広義では普通帰化に含まれ、次のような緩和措置があります。配偶者が日本人である場合、居住要件は5年以上から3年以上に、さらに婚姻後3年以上経過していれば、居住要件は1年以上に緩和されます。
この場合、20歳未満でも帰化が可能です。
(3)大帰化
普通帰化や特別帰化の要件に満たない(あるいは満たすが本人が積極的に帰化を申し出ない)が、日本に特別な功労のある外国人に対して日本が国家として承認を行う帰化の通称です。本人の意思による自発的な帰化ではなく、一方的に国家が許可するものであるため、本来の国籍を放棄する義務は課されない、いわば「法的効力を持つ名誉市民権」です。
帰化の手順
(手順―1)自身の住所を管轄している法務局に申請します。15歳以上は本人が、15歳未満は親権者・後見人などの法定代理人が法務局または地方法務局へ出向き、書面による手続きを行ないます。
(手順―2)許否の結果が出るまでの期間は個々で異なりますが、およそ半年から1年を要します。
(手順―3)帰化申請の内容が認められた場合は、法務大臣による許可行為として官報に日本国内の現住所・帰化前の氏名・生年月日(元号表記)が告示掲載され、告示の日からその効力を生じます。告示における氏名表記に外国文字(アルファベット・ハングルなど)は用いられず、すべて日本語(漢字・平仮名・片仮名)に置き換えて表記されます。
帰化申請時に提出するもの
- 帰化申請書
- 帰化動機書
- 宣誓書
- 履歴書
- 生計概要を説明する書類
- 親族概要を説明する書類
- 事業主の場合、事業概要を説明する書類・財務諸表・確定申告書(控え可)
- 会社役員の場合、法人登記簿謄本
- 社員の場合、在職証明書、給与証明書、社員の納税証明書(コピー可)、自宅・勤務先付近の略図
- 国籍証明書、もしくは国籍を有しないか帰化により現在の国籍を失うことを証明できる書類
- 外国人登録原票記載事項証明書・自動車運転免許証
- その他、法務局から追加提出指示を受けた書類
そのほかに呈示するもの
- 卒業証明書
- 技能証明・有資格証明書
- 事業主の場合、事業における許認可証明書
- 事業主の場合預貯金残高証明・有価証券証明・不動産登記簿謄本(登記事項証明書)
- その他、法務局から呈示指示を受けた書類
帰化申請における添付書類は、国籍・所得の内容・出生地・家族の状況・住居の状態などによって個別に異なるため、取得のタイミングが大変重要です。また、国籍証明書などは帰化できることがある程度定まってから取得しないと、手続きが煩雑になる恐れもあるので注意が必要です。
帰化申請の条件は?
ここでは、普通帰化の条件を述べます。
- 引き続き5年以上、日本に住所を有すること
- 20歳以上で、本国法(帰化前の母国の法令)によって行為能力(民法上の言葉で単独で法律行為をなし得る地位または資格の事をいう)を有すること
- 素行が善良であること
- 自己または生計を一にする配偶者、またはその他の親族の資産や専門技能によって生計を営むことができること
- 国籍を有さず、または日本の国籍取得によって元の国籍を失うべきこと
- 日本国憲法施行下において、日本政府を暴力で破壊したり、それを主張する政治活動などに参加を企てたり、それを行なった経験がない者であること。ただし、国民の自由意思によるその国籍の放棄を認めない国が存在するとした場合、その国の国籍を有する者からの帰化申請については、状況により上記⑤の母国籍の喪失の可能性を問わない事例もある。
帰化の費用・期間は?
法務局への申請手続きの費用は無料です。個人によって必要書類が異なるため、申請を行なう法務局または地方法務局に相談して下さい。
申請の期間は、一般的には半年~1年で、提出時期は随時です。準備書類が複雑なので、作業を代行してくれる代行サービス会社に依頼するのも良いでしょう。本人が行なう場合は、仕事を休んで何度か法務局に出向き、事前の相談や書類の確認などに時間を取られますが、プロに任せれば時間の節約になります。帰化申請の代行サービスは、主に弁護士・司法書士・行政書士が請け負い、その報酬額は、一般申請者1名につき20万円~25万円、会社役員・自営業者は25万円~30万円程度です。代行サービス会社へ支払う費用は会社ごとに、また申請者の職業によっても変わりますが、それは各社、それぞれが手続きを円滑に進めるためのノウハウを持っており、作業工程が異なるからです。
申請に使える書類
帰化申請の書類の中には、政府が発行する正式なものでなくても良い書類があります。無駄のない速やかな申請のためにも、形式が指定されていない書類を紹介します。
申請人が自分で作成する書類
- 帰化許可申請書(下記資料1、2)
- 履歴書(15歳未満は不要。重要な経歴は証明資料を添付)
- 宣誓書(15歳未満は不要)
- 生計の概要を記載した書面
- 事業の概要を記載した書面(個人事業・会社経営の場合)
- 自宅・勤務先などの付近の略図
- 帰化の動機書
上記⑨「帰化の動機書」は俗に「作文」とも呼ばれます。必ず帰化申請者本人が自筆で書き、最後に署名するもので、15歳未満の子供は不要です。書き方や字数は自由で、よほどの場合を除き、許可・不許可への影響はありませんから、リラックスして書いて下さい。主に以下のようなことを書くと良いと思います。
- 今まで日本で生活してきた経緯
- 日本での生活になじんでいること
- 本国に帰る意思はないこと
- 今後も日本で日本人として生きていくという意志
ちなみに法務省ガイドラインによれば、「例えば渡日に至った経緯と動機、日本での生活に対する感想、本国に対する思い、今までに行なった、または今後行ないたい社会貢献などを書く」とあります。