【例文付き】介護事故報告書の書き方とは? 記載時のポイントも紹介
介護施設内で利用者が転倒した、スタッフが利用者の所有物を破損させたといった事故が起こった場合「介護事故報告書」を作成して、施設のある自治体に提出する場合があります。
介護事故報告書に書くべき内容はある程度定められていますが、施設内のスタッフや利用者家族など多くの人に読まれることを考えて、書き方にも注意しなければなりません。
この記事では、介護事故報告書の書き方や、書く際のポイントを解説します。
介護事故報告書とは
介護事故報告書は、介護現場における事故が発生した際に、行政機関へ報告するために作成する文書です。
介護施設で起こった事故のうち、「死亡事故」と「医師の治療が必要な事故」は、発生時に国が定める基準に基づいた事故報告が必要です。
介護事故報告書に事故発生の詳細な経緯や内容を記載することで、再発防止策の策定や、施設内での安全対策の強化に役立ちます。
また、家族への事故経緯の説明に使用される場合もあります。そのため、誰がいつ読んでも分かりやすい記載に努めなくてはなりません。
なおこれら2つ以外の事故も報告が必要かどうかは、地方自治体ごとに異なります。施設のある自治体に、あらかじめ確認しておいてください。
介護事故報告書の書き方・ポイント
転倒時の介護事故報告書に記載すべき内容は、次のとおりです。
- 発生日時と場所
- 対象者の情報
- 事故の概要
- 事故発生時の対応
- 事故発生後の状況
- 原因と再発防止策
ここからは、それぞれの書き方やポイントについて解説します。
発生日時と場所
事故が発生した日付と時刻、具体的な事故現場の場所を明記します。
日付は年号まで、場所は施設内のどの部屋・スペースかまで明確に書いておきます。
対象者の情報
事故に遭った利用者について、以下の情報を記載しましょう。
- 氏名(フルネーム)
- 年齢
- 性別
- 要介護度
このほか、自治体によっては、以下の情報の記載が求められる場合もあります。
- 被保険者番号
- 被保険者証記載の住所
- 介護サービスの提供開始日
- 生年月日
- 認知症高齢者の日常生活自立度
どういった情報が必要なのか、報告先の自治体にあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
事故の概要
事故の具体的な経緯を詳細に記載する、重要な項目です。
書き方のポイントは、時系列に沿って箇条書きをすることです。読み手が事故の状況を理解しやすくなる書き方を意識してください。
どう書くか迷ったら、5W1Hで情報を整理するところから始めましょう。5W1Hとは以下の単語の頭文字を取ったもので、情報を分かりやすく伝える際に活用されます。
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(誰が)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- How(どうやって)
事故発生時の対応
事故が起きたときに行われた対処や、診断結果を記載します。
特に医療機関を受診した場合には、病院名や受診方法(救急・外来・往診など)と、診断結果を明記することが大切です。
事故発生後の状況
事故後の利用者の経過や、家族への連絡状況を伝える項目です。
介護事故報告書の提出期限は、基本的に事故発生から5日以内です。
そのため事故発生後の状況欄には、提出までの間に何が行われたのか、提出までの進捗や状況を説明すると良いでしょう。
原因と再発防止策
原因と再発防止策は、介護事故報告書に不可欠な部分です。どちらも、丁寧かつ客観的・現実的な内容の記載に努めてください。
事故原因は、以下3つの異なる観点から洗い出しましょう。
- 本人(利用者)要因
- 職員要因
- 環境要因
再発防止策は、洗い出した内容を踏まえて考えます。報告書に記入する際は、具体的な行動を挙げることが望ましいです。
「職員がより注意して業務に取り組む」といった抽象的な内容に留まらず、「対応職員の数を◯人増やす」「ベッドの配置を◯◯へ移動する」など、具体的に記載してください。
介護事故報告書の例文
介護事故報告書の例文を、施設内で起こりやすい以下の4つの事故を想定して紹介します。
- 転倒
- 誤嚥(ごえん)
- 誤薬
- 物損
なお、自治体によっては介護事故報告書のフォーマットが用意されていることもあります。その場合は、指定のフォーマットを利用してください。
転倒事故
施設内で利用者が転倒した場合の、介護事故報告書の例文は以下のとおりです。
発生日時 |
◯◯年◯月◯日(◯) ◯時◯分 |
---|---|
発生場所 |
施設B 利用者Aの居室(北側の収納棚前) |
対象者の情報 |
氏名:利用者A 年齢:83歳 要介護度:1 |
事故の概要 |
■利用者Aが自室で転倒 昼寝から目覚めてトイレに行こうとして自分のベッドから下りたところ、自室の収納棚前にタオルや本が落ちていることに気付かず踏んだため、滑って転倒 ■通報後に看護スタッフが到着・支援 看護スタッフが3分後に現場に到着。 左腕に転倒による軽い打撲傷が見られたため、湿布を貼った。 |
事故発生時の対応 |
看護スタッフが応急処置を施し安定させる |
事故発生後の状況 |
経過観察後も異常なし 家族には〇月〇日に連絡済、「本人にも落ち度があったので仕方ないです、お気になさらないで」と言われる。 |
原因と再発防止策 |
■原因
■再発防止策
|
誤嚥事故
食事やおやつの時間に、誤嚥(ごえん)事故が起きた場合の報告書の例文は以下のとおりです。
発生日時 |
◯◯年◯月◯日(◯) ◯時◯分 |
---|---|
発生場所 |
施設B 共用スペースのリビングエリア |
対象者の情報 |
氏名:利用者A 年齢:75歳 要介護度:2 |
事故の概要 |
■利用者Aがリビングエリアで食事中に誤嚥 昼食のサンドイッチをうまく嚥下できなかったため、せき込む ■介護士が迅速に対応 その場にいた介護士が異変に気付き、状態を確認 |
事故発生時の対応 |
介護士が利用者Aの背中をさすってせき込みを鎮め、担当医師:〇〇さんへ連絡 |
事故発生後の状況 |
せき込み後に安定 往診時も問題なしとのことで、経過観察中 家族には〇日に報告済 |
原因と再発防止策 |
■原因 食事終了の時間が迫っていることに焦った利用者Aが、サンドイッチを急いで食べようとしたこと ■再発防止策 ゆったりと食事できる時間を確保するため、◯月◯日からはランチタイムを10分延長する |
誤薬事故
利用者に誤った薬を渡し、利用者が体調不良になってしまった場合の介護事故報告書の例文は、以下のとおりです。
発生日時 |
◯◯年◯月◯日(◯) ◯時◯分 |
---|---|
発生場所 |
施設B 利用者Aの個室 |
対象者の情報 |
氏名:利用者A(認知症) 年齢:72歳 要介護度:3 |
事故の概要 |
■利用者Aが自室で誤薬 スタッフBから手渡された薬を服用してから約30分後、気分が悪くなったと自ら通報 ■通報後に介護士・看護スタッフが迅速に対応 介護士と看護スタッフが直後に到着、状況を把握 |
事故発生時の対応 |
看護スタッフが症状を確認し、同日◯時に〇〇病院を受診(救急) |
事故発生後の状況 |
担当医師による処置をしてもらい、施設で経過観察 〇日現在、吐き気はなく、異常なし 家族には〇日に報告・謝罪済 |
原因と再発防止策 |
■原因
■再発防止策
|
物損事故
施設内で利用者の所有物を壊してしまった場合に作成する報告書の例文です。
発生日時 |
◯◯年◯月◯日(◯) ◯時◯分 |
---|---|
発生場所 |
施設B 利用者Aの個室 |
対象者の情報 |
氏名:利用者A 年齢:88歳 要介護度:1 |
事故の概要 |
■介護士が利用者Aの部屋の掃除中に、窓際に置いてあったAの観葉植物を落とした ■落下時の衝撃で植木鉢が割れて、土と破片が室内に飛び散った |
事故発生時の対応 |
安全確保のため、介護士が利用者Aに靴を履かせたうえで、応接間へ移動させる その後、介護士が掃除 |
事故発生後の状況 |
植木鉢の損傷のみで利用者Aには影響なし <施設内にあった植木鉢を代用品として提供 家族には〇日に報告・謝罪済、「安いものなので気にしないでください、今後は代わりのものはこちらで用意するので、また同じことがあったら教えてください」と言われる。 |
原因と再発防止策 |
■原因
■再発防止策
|
まとめ
介護事故報告書には、事故の発生日時や場所、対象者の情報、事故の概要と発生時の対応、および発生後の状況と事故の原因を踏まえた再発防止策を記載します。
事故が起こると動揺してしまうかもしれませんが、今後の対策を検討するためにも、介護事故報告書はすみやかに、かつ詳細に作成しましょう。
今回紹介した例文も参考にしながら、分かりやすい報告書の作成に努めてください。