糸で綴じる製本のやり方とは? 「糸かがり綴じ」と「和綴じ」の方法を解説
糸で製本をしたいけどやり方がわからない、具体的な糸の縫い方や製本の手順を知りたいという人も多いのではないでしょうか。糸で綴じる製本方法には、主に2つの代表的な手法があります。
この記事では、糸かがり綴じと和綴じの特徴や詳しい製本手順について紹介します。
糸で製本したいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
糸で綴じる製本方法とは
ここでは、糸で綴じる製本方法のうち代表的な「糸かがり綴じ」と「和綴じ」の2種類について解説します。
糸かがり綴じ
糸かがり綴じとは、本の背の部分を2本の糸を使用して縫い合わせる製本方法です。分厚い冊子にも対応可能で、縫製の強度が高いため、仕上がりが丈夫という特徴があります。
長期間にわたって繰り返し使用する本や、多くのページをしっかりと固定する必要がある書籍に適しています。
糸かがり綴じは、耐久性が求められるテキストブックや図鑑、楽譜などに採用される方法です。
和綴じ
和綴じは、日本の伝統的な製本方法で、本の背の部分を手作業で糸で綴じます。特に手漉きの和紙を使用した文献に見られる手法で、開いたときにページが平らになるのが特徴です。
和綴じには「四つ目綴じ」「亀甲綴じ」「麻の葉綴じ」といった縫い目のパターンがあり、それぞれ縫い目のデザインが異なります。
縫い方によって、機能的なだけでなく装飾的な価値を持たせた製本が可能です。
用意するもの
ここでは糸かがり綴じ、和綴じそれぞれで用意するものを紹介します。
糸かがり綴じ
糸かがり綴じで用意するものは以下のとおりです。
- 表紙
- 中紙
- 穴あけ用のカッターもしくはハサミ
- ペンや鉛筆
- 定規
- 針と糸
- 木工用ボンド
- クリップなどページを固定するもの
糸はある程度の強度が必要です。表紙や中紙の分厚さに合わせて強度を選択しましょう。
和綴じ
和綴じで用意するものは以下のとおりです。
- 中紙
- 目打ち
- ペンや鉛筆
- 定規
- 針と麻糸
- クリップなどページを固定するもの
和綴じで使用される糸は基本的に麻糸で、中紙は和紙を採用します。
糸で綴じる製本のやり方
ここでは、実際に糸で綴じる製本のやり方を製本方法ごとに紹介します。
糸かがり綴じ
糸かがり綴じの手順を紹介します。
印刷したページを並べる
まずは印刷したページを正しい順番に並べます。ページ数が多いときは、画像のように数ページごとに分けて小分けにした束を作りましょう。
綴じ穴を開ける
二つ折りにした折り目の部分に、定規で均等になるように穴を開ける位置に印をつけます。その後カッターやハサミで糸が通るほどの切れ目を入れましょう。
糸で縫う
画像のように、2本の糸で一束ずつ縫い合わせます。まずは束ごとに縫うように紙の向きに縫っていき、その糸に対して横向きになるように束をまとめます。
全ての穴に糸が通ったら、糸を慎重に引き締め、縫い始めと終わりの部分を結びましょう。糸の端は1センチほど残して切ります。
背に糊を塗って固定する
糸を綴じた後、本の形を整えてから、クリップなどでページをしっかりと固定します。固定した状態で、背の部分に木工用ボンドを塗ります。
このとき、糊がページ内部に入り込まないよう注意が必要です。
背表紙をつける
糊が乾いたら、背表紙を糊で貼り付けます。糊が完全に乾いて固定されたら、完成です
糊の乾燥時間には十分注意し、確実に乾かしてから次の作業に移りましょう。
和綴じ
和綴じの手順を紹介します。
印刷したページを並べる
まず、印刷されたページを正しい順番に並べます。和綴じでは見開き部分が隠れるため、ページの中心に5mm程度の余白を持って印刷するのがポイントです。
穴あけ作業の前にページがずれないようにクリップで固定します。
綴じ穴を開ける
定規を使い、穴の位置が均等になるように印をつけます。綴じ穴は紙の端から1.5センチ程度内側になるように印をつけましょう。
目打ちで、ページを傷つけないよう慎重に真っ直ぐ穴を開けます。穴の間隔は製本する本の大きさに応じて調整してください。
糸で縫う
ここでは、和綴じのなかでも一般的な縫い方である「四目綴じ」の手順を紹介します。
1.裏表紙から数ページめくり、上から2番目の穴に背表紙側から針を通す
2.同じ穴から一周させるようにして糸を通す
3.一つ隣(内側)の穴に糸を通して、2と同じように一周させる
4.3のときと逆の表紙側から針が出てくるので、その状態でもう一つ隣の穴に糸を通す
5~11.それを繰り返すことで1のときに刺した穴まで糸を通す
12.全ての穴、表・裏の両面に糸が通っていることが確認できたら玉止めをして完了
糸が緩むことがないように各工程で、糸をピンと張らせた状態で進めましょう。
糸で綴じる製本のメリット・デメリット
ここでは、糸で綴じる製本のメリット・デメリットをそれぞれ詳しく紹介します。
メリット
糸で綴じる製本方法のメリットは、ページ数が多い冊子でも綴じられることです。耐久性が高いため、ページ数に制限がありません。
強度が高い分長持ちして、長期保存にも向いています。また、完成品には針金を使用していないため安全です。
和綴じの場合は、デザイン性が高いのもメリットといえます。デザインにもこだわった製本をしたいのであれば、和綴じが最適です。
デメリット
糸を使う製本方法のデメリットは、作成に手間とコストがかかることです。
糸かがり綴じや和綴じのような手作業による製本は、綴じる位置を正確に測ったり均等に穴を開けたり、特に自作の場合はかなりの時間がかかります。
手間やコストがかかるため大量生産にも向いていません。印刷会社に依頼する場合でも、中綴じ・無線綴じよりもコストがかかります。
また、和綴じなどの伝統的な手法は、専門的な技術を要するため、職人や専門スタッフが必要です。経験や技術が不足していると、綴じが甘くなり耐久性に問題が出る恐れがあります。
そのため、糸で綴じる製本は一般的な出版物や量産を目的とした資料には適さず、限定版や特別な出版物、手作りのノートやアルバムなど、個性を重視する本で採用される傾向があります。
まとめ
糸で綴じる製本には、「糸かがり綴じ」と「和綴じ」という2つの代表的な手法があります。
糸かがり綴じは、縫製の強度が高く仕上がりが丈夫になり、和綴じは完成品のデザインや見栄えが良いのが特徴です。
とはいえ、糸による製本は手間や時間がかかるためコストが高いです。自作であれば大量生産するのが難しく、業者に依頼する場合でも比較的コストがかかります。
特別な出版物や手作りのアルバムなどを作成する際に、おすすめの製本方法です。