相手と信頼関係を築くコミュニケーション術
仕事の成果を上げる第一歩は、相手との信頼関係構築から
営業・交渉・プレゼン・面談など、社内外でのコミュニケーションの質の高さが、仕事の成果に密接に関連しています。ビジネスチャンスをつかむも逃すも、コミュニケーションの成果次第だと言っても過言ではありません。
米国を代表する社会心理学者であるロバート・チャルディーニは、「人は好意を持っている人からの要請を受けると、それに積極的に応えようとする」心理を説いています。
これがまさに、ビジネス・コミュニケーションにおける信頼関係構築の大切さを物語っています。
そのための重要なスキルとして、今回は相手にペースを合わせる「ペーシング」という考え方をご紹介しましょう。
実践心理学を活用したコミュニケーション術
実践心理学NLPのスキルに「ペーシング」というものがあります。これは文字通り、「相手とペースを合わせること」。ペースを合わせる対象は、相手の姿勢・動作・言葉・話し方などです。お互いのペースが合って「息が合う」状態になると信頼関係が作られ、相手を望ましい状態にリードしていくことができます。
ここで「望ましい状態」とは、例えば営業の成功、クレーム処理、交渉相手を動かすなど、コミュニケーションを通じて達成したい目標のことを指します。つまりペーシングを行う最終的な目的は、それぞれの目標を達成するためであることを忘れてはいけません。
ペーシングをする対象と方法
ここで具体的に、ペーシングする対象とそのやり方をお伝えしましょう。
① 【体の状態】(姿勢、重心の位置、手足の位置、表情)
親近感を作る方法の一つは、相手と同じ姿勢をとることです。例えば、相手が腕を組んだら、こちらも腕を組むという方法です。さりげない姿勢や動きを合わせると良いでしょう。
② 【動作・リズム】(うなずき、まばたき、呼吸)
相手のうなずくリズムや呼吸にペースを合わせると、「息が合う」状態が作りやすくなります。呼吸を合わせるには観察力が必要ですが、これができれば相手が意識せずに心を開いていくようなペーシングができます。
③ 【言葉・感情】
相手が話したフレーズやキーワードをそのまま使うと、相手は「きちんと聴いてもらっている」と感じます。例えば、「今日は良く晴れて気持ちいいですねー」⇒「そうですね、気持ちいいですねー」という具合です。
④ 【話し方】(声の大きさ、高さ、スピード)
相手が話す声の大きさ・高さ・スピードにペースを合わせる方法です。例えば、相手が大きい声・高い声・早口でクレームを言っている場合などは、こちらも大きい声・高い声・早口で対応することで、相手は「真剣に話を聴いてもらっている」という感覚を持つでしょう。
「相手を尊重し、相手に近づこうとする姿勢」が重要
上手にペーシングができたら、お互いの「息が合っている」「同調している」感じになってきます。きちんと観察しましょう。それが確認できたら、次に相手をリードしていきましょう。
例えば、大声で早口にクレームを言う相手にペーシングした場合、お互いのペースが合ってきたら、徐々に口調を自分のペースにしていきます。少しずつ声を小さく、遅くしていきます。相手もそれに同調してくるようであれば、ペーシングが成功しているという確認が取れるわけです。そしてこの場合の目標は、「相手の立場を汲み取る適切なクレーム処理ができること」ということになります。
なお、これらの方法を使うときに大切なことは「相手を尊重し、相手に近づこうとする姿勢」です。このスタンスがなければ、本当の意味での信頼関係を作ることはできません。そのスタンスを持って、ペーシングを実践に生かしていきましょう。
今回のポイント(まとめ)
・信頼関係を築く第一歩は、相手の状態と自分のペースを合わせるというスタンス
・ペーシングの対象は、「身体の状態」「動作・リズム」「言葉・感情」「話し方」など
・ペーシングのスキルは、「相手を尊重し、相手に近づこうとする姿勢」が前提となる