不良債権とは? 概要や回収方法・処理の仕方を解説
不良債権とは、回収できていない売掛金や貸付金のことです。
不良債権が増えると、企業の経営や資金繰りに大きなダメージを与えてしまうため、対策が必要になります。
今回は、不良債権の基礎知識から、危険水準の設定方法、回収の方法などを解説します。
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不良債権とは?
不良債権とは、簡単に言うと「期日を過ぎても回収できないお金のこと」を指します。
ここでいう「不良」とは、回収できないまたは回収の可能性が低いという意味です。そして「債権」とはお金をもらう権利を意味します。
例えば、取引先に商品を掛け売りしたものの、その取引先が支払日を過ぎていて、督促しても支払ってもらえない場合、その売掛金は不良債権となります。
もし、この不良債権を回収できないと売上金を丸々損してしまうことになるため、普段から売掛金の回収漏れがないかしっかり管理することが大切です。
不良債権の具体例
不良債権には、以下のようなものが挙げられます。
- 売掛金:売上を売掛金で計上し、その売掛金が期限を過ぎても支払われない
- 立替金:取引先が負担するお金を立て替え払いしたが、取引先がその立替金を支払わない
- 貸付金:従業員に貸付を行ったが、従業員が貸付金を返済しない
- 未収家賃:副事業で賃貸業を行っているが、借主の家賃滞納が続いている
どの勘定科目であれ、本来受け取る権利があるお金が支払われていない場合は不良債権となります。
上記勘定科目の中身を定期的に精査し、未回収の債権を管理することが大切です。
不良債権比率とは
債権の残高に占める不良債権の割合を、不良債権比率と呼びます。計算式は以下の通りです。
不良債権残高 ÷ 債権の全体残高
なお、支払期日を何日過ぎたら不良債権とするか、一般企業における明確な規則がないため、それぞれの企業で不良債権の定義を定める必要があります。
実務では支払い漏れや請求漏れ等もあるため、支払いが遅れたものが全て不良債権となるわけではありません。
しかし支払い期限過ぎても相手方から何の連絡もない場合、不良債権化を疑うべきです。
不良債権とする基準の例として、支払期限が過ぎ、かつ後述する支払い督促を行っても回収できない債権は不良債権に該当するでしょう。
不良債権比率の危険水準
先の通り、自社における不良債権を定義して、不良債権比率を求めたら、次は不良債権比率の危険水準を決めるようにします。こちらも独自の水準が必要です。
設定基準の一つとして、自社の営業利益率を参考に不良債権比率の危険水準を決めると良いでしょう。
例えば自社の営業利益率が10%であるならば、不良債権比率を1%にするなどです。
不良債権が貸倒れとなった場合、その売上金が丸々損となります。
上記の例ですと、不良債権比率を10%と設定した場合、もしその不良債権が全て貸倒れとなると営業利益の全てが吹き飛んでしまいます。そのため、営業利益率よりも低い貸倒率を設定することが重要です。
不良債権の回収方法
ここまで紹介した通り、不良債権は経営をするにあたって観察して、対処すべきものです。
不良債権を回収するためにはどのような方法があるのでしょうか。段階を追って説明します。
電話などで連絡を取る
期日を過ぎても支払いがない場合、まずは相手方に電話やメールで連絡をします。
その際に、自社側のミスが無いかは確認しておきましょう。
請求書・伝票の内容に誤りがないか、送付に間違いがなかったかなどを確認してから連絡をしてください。
連絡する際は請求書のコピーや、メールを転送で送付するなど、証跡も残しつつ分かりやすい説明ができると、相手方との話し合いがスムーズになります。
督促状の郵送
電話やメールで解決しない場合、次の手段として督促状を送付することになります。
督促状に記載する内容は、督促状の送付日付、債権の発生日、債権の内容、請求書のコピーなどを添付した上で、支払期限を明確にして速やかに支払うよう促します。
また、督促状を郵送する際は、郵便局の配達証明を用いることをおすすめします。
配達証明とは一般書留とした郵便物や荷物について、配達したという事実を証明するサービスです。
配達証明により、郵便物が届いていないと言われるリスクを避けることができます。
内容証明郵便による督促
督促状を送付しても話し合いが解決しない、または返答をもらえないといった状況になると、内容証明を利用しましょう。
内容証明とは、一般書留郵便物の内容文書について証明するサービスです。
いつ、いかなる内容の文書が誰から誰あてに差し出されたか、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明する制度です。
内容証明により、相手方に対し自社が債権回収に本気であると伝える効果があり、また最悪のケースとして裁判に訴える場合、自社が相手方に対し債権回収の督促を行ったという証拠の一つとなります。
裁判・訴訟
最終的な債権回収の方法が、裁判・訴訟です。裁判の種類には少額訴訟と民事訴訟の2つがあります。
- 少額訴訟
60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用でき、原則として即日結審です。
債権額が60万円以下の場合は、少額訴訟が素早く進められるでしょう。
参考:少額訴訟 | 裁判所
- 民事訴訟
債権額が60万円より大きく、督促で解決しない場合に用います。
ただし民事訴訟の場合、基本的には弁護士を介入する訴訟となるため結審まで長引く可能性もあり、時間とお金を要します。
債権額とのバランスを考慮し、民事訴訟に踏み切るか検討するとよいでしょう。
不良債権の会計時の処理方法
不良債権を起こしてしまった場合、会計処理の方法はどうすればよいのでしょうか。
貸倒引当金繰入
まず一つが「貸倒引当繰入」として計上する方法です。
例えば、200万円の債権があったとして、そのうちの20万円が貸し倒れリスクが高いと判断した場合、その20万円を貸倒引当金繰入として損金算入が可能です。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
貸倒引当金繰入 |
200,000 |
貸倒引当金 |
200,000 |
なお、法人税法では貸倒引当金繰入できる金額に制限があります。
企業の規模により繰入できる金額の条件が異なるため、自社の状況に合わせて最も有利な条件を採用すると良いでしょう。
貸倒損失
実際に回収が不可能になってしまった場合には、貸倒損失として損金算入します。
上述の20万円の債権が回収不能となり、貸倒損失を計上するケースだと以下のようになります。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
貸倒損失 |
200,000 |
売掛金 |
200,000 |
貸倒引当金 |
200,000 |
貸倒引当金戻入益 |
200,000 |
この場合、貸倒損失20万円を借方に計上しますが、既に20万円を貸倒引当金として計上しているため、同時に貸倒引当金を取り崩し、貸倒引当金戻入益を20万円計上します。
なお、貸倒損失は自社が自由に計上できるわけではなく、相手方の倒産や長期間に渡る未回収などの場合、法人税法で要件が定められています。
不良債権の回収が不可のケース
不良債権が回収できないケースとして、以下のものが挙げられます。
- 相手側の倒産
- 相手方の現金不足
- 相手方の所在不明
- 債権の時効到来
倒産や現金不足など、あらゆるケースが考えられますが、なかでも法定時効(売掛金や貸付金など債権の種類により時効期間は異なります)が到来すると、基本的に債権を請求できる権利を失ってしまいます。
このような回収不可を避けるためにも、不良債権を少しでも取り戻す手段を覚えておきましょう。
たとえば、相手方が倒産した場合は債権者集会に参加して、相手方の残余財産から回収する手段があります。
その場合、全額回収することは困難でも一部を回収できる可能性があります。
こうした貸倒れのリスクを避けるためにも、日常的に債権残高をチェックし、支払期日を超過していた場合には、早急に支払いの連絡や督促などのアクションを取ることが大切です。
不良債権についてのまとめ
不良債権は、企業にとって経営にダメージを与えかねないリスクがあります。
今回紹介したように、不良債権については自社の基準を定めて日常的に確認し、危険を察知した際には、回収不可とならないように迅速に対処することを心がけてください。
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