試用期間中でも社会保険の加入は必要? 対象条件や罰則について解説
社会保険は、主に会社員を対象とする健康保険と厚生年金保険の総称です。法律によって加入対象が定められていますが、正式雇用前の試用期間中の労働者については、どのように定められているのでしょうか。
今回は、試用期間中の労働者の社会保険加入の条件や違反した場合の罰則について解説します。人材雇用の際に試用期間を設けている会社の人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
試用期間中も社会保険加入の対象となる
健康保険や厚生年金保険等の社会保険は、適用事業所で働く労働者が加入対象となります。
派遣社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトでも、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上の人は必ず加入しなければなりません。また、4分の3未満の短時間労働者であっても、一定の条件を満たした人は加入対象です。試用期間中であっても上記の対象条件に該当すれば、入社日から社会保険の適用対象です。
ただし、臨時に雇用される労働者で以下のような一定の条件に該当した場合は、適用事業所で働いていたとしても社会保険の適用除外です。
- 日々雇い入れられる者(1カ月を超え引き続き使用されるに至った場合を除く)
- 2カ月以内の期間を定めて使用される者(2カ月を超え引き続き使用されるに至った場合を除く)
- 事業所又は事務所で所在地が一定しない者に使用される者
- 季節的業務に使用される者(継続して4カ月を超えて使用されるべき場合を除く)
- 臨時的事業の事業所に使用される者(継続して6カ月を超えて使用されるべき場合を除く)
労働者から拒否されても、社会保険加入処理が必要
仮に労働者から社会保険の加入を拒否されたとしても、加入義務の条件を満たす場合は社会保険への加入が法律で義務付けられています。
また年金事務所では、繰り返し指導を受けているにも関わらず手続きを行わない事業主に対して、立入検査を実施することがあります。その場合事業者は遡って加入手続きを行い、保険料を支払わなければなりません。
事業主が故意に従業員の加入手続きを行わなかった場合、悪質と判断されれば、健康保険法第208条に基づき、事業主に6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることもあります。
2カ月以内であっても社会保険加入の対象
令和4(2022)年10月以降、厚生年金保険法および健康保険法では、2カ月以内の期間を定めて雇用され、その定めた期間を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者に対しては、社会保険適用対象になると定められました。
2カ月以内でも正式採用を前提とした試用期間である場合には、社会保険の加入が必須です。反対に、契約期間が2カ月と決まっており、その期間を超えて雇用されることが見込まれない場合は、社会保険の適用対象外です。
参考:令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構
社会保険の加入は入社1日目から
社会保険の加入日は、雇用関係が生じた日からになるため、試用期間であったとしても入社1日目になります。試用期間終了後からではありませんので、注意してください。
試用期間中に社会保険に加入しなかった際の罰則
ここからは、試用期間中の労働者が社会保険に加入していなかった場合に、事業主に生じる罰則について解説します。
1.6カ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金
健康保険法第48条では、
「適用事業所の事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を保険者等に届け出なければならない」
と定められています。違反した場合には、健康保険法第208条に基づき、事業主に6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることもあります。
2.加入指導が発生する
社会保険加入対象となる従業員の加入手続きを怠った企業には、年金事務所の加入指導が発生します。
また、繰り返し指導を受けているにも関わらず手続きを行わない事業主に対しては、立入検査が実施されます。さらに、遡って加入手続きを行い、保険料を徴収される可能性もあります。
試用期間中の社会保険のまとめ
事業主は、試用期間中であるかどうかにかかわらず、一定の条件を満たす労働者を社会保険に加入させなければなりません。派遣社員や契約社員、パート・アルバイトでも、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上あれば、加入義務が生じます。
違反した場合は、年金事務所からの指導が行われ、過去に遡って保険料を懲役されることもあります。悪質な場合は懲役や罰金刑を課される可能性もありますので、対象の労働者がいる場合は、試用期間中から社会保険への加入を怠らないようにしてください。
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