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介護保険とは? 制度の仕組みや保険料、サービス利用の流れを解説

介護保険とは? 制度の仕組みや保険料、サービス利用の流れを解説

介護サービスを利用した際にかかる費用の一部を、保険料と税金で負担する介護保険制度。

原則として40歳以上のすべての人が被保険者となり、保険料の支払い義務が発生します。

40歳を超え、65歳の誕生日を迎える前までの第2号被保険者では、雇用者はその保険料を給料から天引きのうえ収める必要があります。

今後も見込まれる高齢化の進展による介護ニーズの拡大から、その重要性が増すことが予想される介護保険制度。

その概要と仕組みをよく知って、必要な手続きを正しく行いましょう。


この記事の監修者
サプナ社会保険労務士法人代表 一般社団法人組織と個人の在り方研究会代表理事  特定社会保険労務士 

介護保険とは

介護保険は、被保険者の介護費用を社会全体で負担するための仕組みです。

まずは介護保険の基本とその仕組み、第1号と第2号に分けられる2種の被保険者についてなどを解説します。

介護保険の基本

介護保険は、介護を必要とする人を社会全体で支える仕組みとして、2000年に施行された公的な保険です。

背景として、高齢化の進展に伴う介護ニーズの増大、核家族化の進行などの高齢者を支えてきた家族をめぐる状況変化、従来の老人福祉・老人医療制度の限界が挙げられます。

介護保険は、保険を運営する「保険者」と、保険に加入して保険料を負担する「被保険者」により構成されます。

「保険者」は市区町村および特別区(以下、市町村)です。

市町村は介護保険事業計画の作成や保険料の徴収、介護が必要かの認定等を行います。

また、市町村とともに国、都道府県が、それぞれ役割をもって支える仕組みです。

「被保険者」は40歳以上の方です。

自分の親の介護が必要になる年代で、介護費用を支え合うことに理解が得られやすいと考えられたからです。

保険対象となる介護費用は、介護を必要とする人が少ない負担で支援を受けられるようにするため、保険料と税金等で50%ずつ負担して運営されています。

介護保険の仕組み

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介護保険の基本的な考え方は、以下の3つです。

  1. 単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするのではなく、自立を支援する
  2. 利用者が総合的な保健医療サービス、福祉サービスの中から、選択して受けられる
  3. 給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用

介護保険を利用したい場合は、まず保険者(市町村)に要支援・要介護認定の申請を行います。

保険者(市町村)は申請者の要介護度を調査し、決定・通知します。

介護保険制度は公的な保険であるため、「介護が必要」と判定されなければサービスを利用することはできないのです。

サービス事業者は、在宅・地域密着型・施設など様々なサービスを提供していますが、保険者の認定結果により保険で利用できるものが決まってきます。

介護サービス利用にあたっての負担は、1割(一定所得者は2〜3割)を利用者が、残りの9割(一定所得者は7〜8割)を保険料と税金で1/2ずつ負担します。

介護保険利用にあたっては、「被保険者」の立場で介護保険制度に参加していることが必要です。

第一号被保険者・第二号被保険者の違い

介護保険の被保険者は、65歳以上の高齢者が対象となる第1号被保険者と、40~65歳未満の第2号被保険者に分かれます。

介護保険サービスを利用できるケースは以下の通りです。

  • 第1号被保険者が「要支援・要介護」状態になった場合は、その原因は問わずにサービスを利用できる
  • 第2号被保険者は、加齢に起因する「特定疾病」によって「要支援・要介護」になった場合のみ利用できる

介護保険において、保険料は以下の通り徴収されます。

  • 第1号被保険者は市町村が徴収
  • 第2号被保険者は医療保険者が医療保険料とあわせて徴収

介護保険で受けられるサービスの種類

介護保険で受けられるサービスには、さまざまな種類があり、「要介護」「要支援」といった判定により保険で受けられる範囲が異なります。

以下に、介護保険で受けられる介護サービスのうち、代表的なものをまとめてみました。

介護の相談・ケアプラン作成

居宅介護支援

利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、ケアマネジャーがケアプランを作成し、そのプランに基づいて適切なサービスが提供されるよう、事業者や関係機関との連絡・調整を行います。

居宅介護支援は、特定のサービスや事業者に偏ることがないよう、公正中立に行うこととされています。

自宅に訪問・施設に通う

訪問介護(ホームヘルプ)

訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの介護(身体介護)や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活の支援(生活援助)をします。

通所介護(デイサービス)

自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。

食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供します。

生活機能向上グループ活動などの高齢者同士の交流もあり、施設は利用者の自宅から施設までの送迎も行います。

訪問入浴

利用者の身体の清潔の保持、心身機能の維持回復を図り、利用者の生活機能の維持又は向上を目指して実施されます。

看護職員と介護職員が利用者の自宅を訪問し、持参した浴槽によって入浴の介助を行います。

福祉用具を使う

福祉用具貸与

利用者の心身の状況、希望及びその生活環境等をふまえ、適切な福祉用具を選ぶための援助・取り付け・調整などを行い、福祉用具(手すり、歩行補助杖、車いす、特殊寝台など13品目)を貸与します。

福祉用具を利用することで日常生活上の便宜を図り、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。

訪問・通い・宿泊を組み合わせる

小規模多機能型居宅介護

利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行います。

短期間の宿泊

短期入所生活介護(ショートステイ)

補足解説:自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などが、常に介護が必要な方の短期間の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練などを提供します。

施設等で生活

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

補足解説:入所者が可能な限り在宅復帰できることを念頭に、常に介護が必要な方の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練、療養上の世話などを提供します。


介護サービス利用料の自己負担額の割合

介護サービスにかかる費用の負担は、1割(一定所得者は2〜3割)を利用者が、残りの9割(一定所得者は7〜8割)を保険料と税金で1/2ずつ負担します。

居宅サービスを利用する場合は、要介護度別に利用できるサービス量(支給限度額)が定められています。

《支給限度額》

要支援1 50,320円
要支援2 105,310円
要介護1 167,650円
要介護2 197,050円
要介護3 270,480円
要介護4 309,380円
要介護5 362,170円

※支給限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担となります。

介護保険施設利用の場合は、1割(一定以上所得者は2〜3割)負担のほかに、居住費、食費、日常生活費の負担も必要になります。


介護保険にまつわる事務手続き

従業員が40歳に達すると、介護保険の第2号被保険者となります。

40歳に達した日とは「40歳の誕生日の前日」であり、介護保険料の負担は「40歳の誕生日の前日の属する月」の保険料から徴収します。

  • 誕生日が5月1日の場合:前日は4月30日⇒介護保険料は4月分から徴収
  • 誕生日が5月2日の場合:前日は5月1日⇒介護保険料は5月分から徴収
  • 誕生日が5月31日の場合:前日は5月30日⇒介護保険料は5月分から徴収

社員が65歳以上になると介護保険の第1号被保険者となり、介護保険料は年金からの天引きか、市区町村に直接納めることになります。

65歳になる従業員がいる場合は「65歳の誕生日の前日の属する月」より、給与から介護保険料を徴収する必要がなくなります。

混乱を避けるため、控除開始、控除終了のタイミングで、本人に説明するようにしましょう。

従業員が要介護状態の家族の介護や世話のために仕事を休める制度には、介護休業と介護休暇があります。

介護に関する相談があった場合は、状況をヒアリングした上で手続きを進めます。


介護保険制度の将来性

2000年の施行から20年以上を経て、介護保険制度を取り巻く状況も大きく変化してきました。

さらに、今後も介護保険制度をめぐっては、以下の通りさまざまな懸念が指摘されています。

1.認定者数増加で保険料負担額が増大のおそれ

介護保険制度は原則3年を1期とするサイクルで財政収支を見通し、事業の運営を行っています(2021年から第8期)。

65歳以上の高齢者数は年々増加し、2025年には3,677万人となり、2042年にはピークを迎える予測(3,935万人)です。

65歳以上の第1号被保険者、40〜65歳未満の第2号被保険者ともに、保険料負担が増加することが想定されます。

2.介護保険サービス利用料負担額増大のおそれ

要介護認定者の増大に伴い、ケアマネジメント費の有料化や現役世代並み所得基準の見直しが検討されています。

要介護にならない健康管理が重要になってきます。

3.介護予防の強化

高齢者が気軽に通える体操や運動の場である「通いの場」を拡充したり、データを活用した科学的介護を推進することで、身体的自立を促す介護予防の強化が図られていきます。


介護保険のまとめ

介護が必要になってしまった人を、社会全体で支えるための仕組みとして、2000年に施行された介護保険制度。

原則として40歳以上のすべての人が被保険者であり、保険料の支払い義務を負います。

介護保険制度を運営する保険者は市区町村や特別区といった自治体ですが、65歳未満の第2号被保険者の保険料に関しては給料から天引きして収める必要があります。

介護保険制度の仕組みをよく理解し、正しく手続きを行いましょう。


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監修者プロフィール

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三浦 睦子

サプナ社会保険労務士法人代表 一般社団法人組織と個人の在り方研究会代表理事 特定社会保険労務士

大手不動産デベロッパーの本部スタッフとして組織人事や営業支援に関わる。

高校教諭を経て人材派遣会社の教育トレーナーに転職。

500名規模の正社員・契約社員の採用から育成、評価制度、昇給昇格制度を構築する。

2011年に独立し、社会保険労務士として雇用の専門家としてコンプライアンスを踏まえた

やりがいのある組織作りのために日々活動している。

当事者意識・気づき重視のため、体験型プログラムを中心に開催している。

育児・介護・治療との両立、若手や女性の活躍、シニアの再雇用など、その会社ごとの

「より良い働き方」とは何かを経営者とともに考えて支援している。

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