金銭消費貸借契約とは? 作成時のポイントや注意点を解説
金銭消費貸借契約とは、お金の貸し借りに関する契約のことです。
貸し借りした金額や返済期間などを契約書に明記し、証拠として残すことで後のトラブルを回避できます。
この記事では、金銭消費貸借契約の基礎知識や作成時のポイント、注意点をわかりやすく解説します。
金銭消費貸借契約とは
消費貸借契約とは、種類や品質が同じものを返す代わりに金銭などを受け取れる契約のことで、「金銭消費貸借契約」は金銭に特定した契約を指します。
簡単に説明すると、お金を借りて、約定日には同額の金銭と約定された利息を渡すという契約になります。
金銭消費貸借契約は従来、借主や貸主に対して借り入れたお金と同額の金銭を返還することを約束して、貸主から金銭を受け取る「要物契約」でした。
しかし、2020年4月の民法改正において、貸主から金銭の受け取りがない場合でも、借主が金銭を返還することを約束しただけで契約が成立したと考える「諾成的金銭消費貸借契約」 が認められるようになりました。
契約では次のような項目について合意が行われ、履行を確実にするために契約書を作成します。
- 賃借する金額
- 返済期日
- 返済方法
- 利息
- 遅延損害金
- 期限の利益喪失
- 相殺
金銭消費貸借契約書に定められる項目
ここでは、金銭消費貸借契約書に定められる項目を詳しく見ていきましょう。
1. 当事者間の合意
貸主がお金を貸し付け、借主が借り入れることを明記します。
2020年4月の民法改正によって、借主が金銭を返還することを約束しただけで契約の成立が認められるようになりました。
2. 合意した金額
貸し借りするお金の具体的な金額を記載します。
最終的には、合意した金額を受け取るか、同じ金額の返還を約束することで契約が発効します。
3. 返済期日
借入金の返済をいつまでに行うかを記載します。
支払金利の扱いに影響するため、明確に記載する必要があります。
また、早期返済については民法上、任意規定となるため、早期返済についての扱いが明記されるかどうかは契約によって異なります。
4. 返済方法
民法上、金銭消費貸借契約は持参債務に該当するため、返済は債務者が債権者の住所または営業所に持参して行うことになりますが、契約書上、現金交付の場合もあります。
実際には、貸主借主双方の利便性を優先して、銀行振り込みにしているケースが非常に多いといえます。
5. 利息の支払い規定
民法上、金銭消費貸借契約は無利息で行うのが原則ですが、契約書上で規定することにより、貸主は利息を受け取ることができます。
金額に定めがないときや商事債権の場合、令和2年の改正民法にもとづいて法定利率は3%となります。
この利息は3年に1度見直しが行われます。
当事者間で約定金利が決められた場合は、利息制限法によって上限が規定されます。
6. 遅延損害金
借主が約定された返済期限を守らなかった場合、懲罰的に加重された税率を貸すことができるとされています。
その場合でも、前述の利息制限法で定める上限利息の1.46倍が上限です。
ただし、営業的金銭消費貸借上の場合、債務の不履行による賠償額の元本に対する割合が年20%を超えるときは、超過分が無効となります。
7. 協議合意による時効の完成猶予
民法改正において、協議を行う旨について書面(または電磁的記録)による合意があった場合は、消滅時効が完成するのを一定期間妨げることができる規定が新設されました。
それまでは時効を止めるために、裁判上の請求を行う必要がありましたが、民法改正によって手軽に時効停止が行えるようになりました。
8. 連帯保証
貸主は、貸金回収が滞るリスクに対して保証をとることによって対応しています。
その際に、「連帯保証人」として保証をとることで、貸主に請求することなく連帯保証人から延滞分を取り立てることが可能になります。
金銭消費貸借契約書の作成時のポイント
金銭消費貸借契約書を作成する際は、次のようなポイントを意識しましょう。
1. 原則貸主が作成する
貸主・借主の双方が署名捺印するのであれば、どのような書面でも構いませんが、金利や返済方法、返済期間について貸主に不利がないよう条項を定めておく必要があります。
そのため、貸主が指導権をとって契約書を作成するのが通常です。
双方で合意をとっても、借主に任せると、貸主にとって不利な契約書になることも考えられるため、貸主側は十分注意しましょう。
2. 話し合い後に作成し、日付も記載する
金銭消費貸借契約は、話し合いによって細かい条件を決めることになるため、その内容を織り込んだ契約書の作成は必須です。
話し合いを行ってから作成することで、「知らなかった」「聞いていない」という話の食い違いも防げるでしょう。
また、契約成立の時期を特定するために、日付も必ず記載しましょう。
裁判で証拠書類として採用されるためにも、日付を特定することは重要です。
3. テンプレートを使用すると効率化できる
テンプレートには、契約書に記載しなければならないことが網羅されており、貸主が有利になるような契約書条項が入っています。
「うっかり合意することを忘れた」というミスも防げるでしょう。
また、テンプレートによって項目が決められているため、貸主・借主の双方が契約書の内容を信用して締結ができるメリットがあります。
4. 公正証書にする
契約書は公正証書にするのが望ましいといえます。
公証人が内容を確認するため、法律上問題がある記載を指摘してもらえる機会が生まれるだけでなく、「強制的に契約を結ばされた」などの言いがかりにも対応できます。
また、契約内容にもよりますが、公正証書にすることによって契約違反があった場合に、裁判で勝訴判決を勝ち取ることなく、公正証書を債務名義として強制執行をかけることができます。
公正証書の作成には費用がかかりますが、契約書の控えを当事者以外が持つことにより、安心できる点もメリットといえます。
金銭消費貸借契約書を作成する際の注意点
金銭消費貸借契約書を作成する際は、いくつか注意点があります。
後のトラブルを防ぐためにも、必ずチェックしておきましょう。
1. 無利息か利息をつけるかを明確に決めておく
民法上、金銭消費貸借契約は無利息が原則となるため、利息をとる場合にはしっかり約定しておくことが必要です。
仮に商事債権であったとしても法定利率は3%に過ぎず、これ以上の利息を収受することはできません。
また、約定利息の上限は利息制限法の制限を受ける点にも注意が必要です。
契約書で高い利率を定めても、利息制限法を超過した分の利息は無効となります。
2. 遅延損害金が発生する場合はその割合を明確に決めておく
民法上、約束通り返済が行われなかった場合はペナルティとしての遅延損害金を定めておくことができます。
定めがない場合は請求できないので注意が必要です。
遅延損害金の割合については、利息制限法で限度が定められており、利息制限法で定める上限利息の1.46倍を上限とする必要があります。
ただし、営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の元本に対する割合が年20%を超えるときは、超過部分が無効となります。
3. 公正証書にする場合は作成を弁護士に依頼する
公正証書を作成する場合は、公証人の面前で作成することになります。
公証人は、主に法務省で仕事をしてきた裁判官、検察官、法務局長、事務官の経験者から任命されているため、内容についての法的検証は十分であるといえます。
弁護士経由での公正証書作成も可能で、自分にとって有利な条項を引き出せるメリットがあります。
金銭消費貸借契約のまとめ
金銭消費貸借契約の基礎知識や作成時のポイント、注意点をわかりやすく解説しました。
お金の貸し借りには、トラブルが付き物です。
借主・貸主が合意した内容を契約書によって証拠として残すことで、無用なトラブルを回避できます。
契約書を作成する際は本記事で紹介したポイントを押さえて、双方が内容について十分に納得したうえで契約を締結しましょう。
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