借用書の書き方・テンプレートや法的効力について紹介
借用書は金銭の貸し借りを明確に証明する書類であり、契約書と同等の法的効力を有します。
ただし、場合によっては法的効力が損なわれるほか、記載不備により法的効力が認められない可能性があるのです。
そこで本記事では、法的効力がなくなる4つのケースや、借用書の書き方、注意点を詳しく解説します。
また、連帯保証人を立てるケースと立てないケースのテンプレートも紹介していますので、これから借用書を作成する方はぜひご活用ください。
借用書とは
借用書は、金銭の貸し借りを明確に証明する書類です。借主が作成し、貸主に提出するのが通常です。
詳しくは後述しますが、借入金額・返済期日などを記載し、事実上は両者の同意の上で作成されます。
借用書の目的
借用書を作成する目的は、金銭の貸し借りの内容を明確化することです。借用書によって、貸主と借主がどのような条件で金銭の貸し借りを行ったのかが明確となります。
ここからは、それによってどのような狙いがあるのか解説します。
金銭トラブルの防止
もし借主が貸主に対し金銭の返済に応じない場合には、貸主は借用書を証拠として使用できます。そのため、後に起こりうる金銭トラブル防止につながるでしょう。
仮に貸主が返済を求めて訴訟を起こす場合に、借用書を証拠として提出することで請求がスムーズに認められる可能性が高くなります。もし借用書がない場合、貸主はお金を貸した事実と借主が返済を約束したことを自ら証明しなければなりません。
返済義務の認識
借用書を作成することで、借主に返済義務を強く認識させる効果が期待できます。金銭の貸し借りを口頭でしてしまうと、借主が言い逃れできると考える可能性があるからです。
借用書によって借主に返済義務を認識させることで、返済遅延や返済拒否などのリスクを軽減できます。
借用書が必要とされる場面
借用書の作成はどんな場面で必要とされるのでしょうか。ここでは、シーン別にそれぞれ解説します。
友人間・家族
友人や家族間など親しい間柄の場合でも、金銭の貸し借りには借用書を作成することを推奨します。
ただし、友人や家族などの個人間での借用書の時効は「原則5年」です。時効にさせないためには、借主に借金があることを認めてもらう、裁判をするなどの条件が必要となるため、注意してください。
なお家族間で金銭を借りた場合、税務署からは「贈与」とみなされ、贈与税が課税されてしまうケースがあります。贈与と疑われないためには、事前に条件を確認しておきましょう。
ビジネスシーン
個人と企業間や企業間同士の金銭の貸し借りでも、借用書が利用されることがあります。ただしビジネスシーンの場合、金銭消費賃借契約書が使用されることの方が多いようです。
これは、借用書が借主により単独で作成されるものであり、貸主がその内容に同意していることが保障されていないからです。したがって借用書は、金銭消費賃借契約書より証明力が弱いことがありうると考えられています。
金銭消費賃借契約書については、以下の記事で詳しく説明しています。
借用書の法的効力とは
借用書は契約書と同様、私文書に該当します。
通常、借主の法的義務を定める内容となっているため、仮に借金に関する裁判が生じた場合、借用書は証拠として提出が可能です。
法的紛争や返済義務に関する問題を解決する上で、借用書は重要な役割を果たします。
私文書から公文書にする方法
借用書を公証役場で作成し「公正証書」にすることで、借用書を私文書から公文書に変えることができます。
公証役場での手続きにより、公務員である公証人が立ち会い、文書を作成します。「公正証書」は公文書の一種です。
そのため、公正証書に、期限通り債務を支払わなければ、差押えなどの強制執行と呼ばれる法的手続きを受けることを認める旨を記載すると、借主が期限通りに支払わない場合に、裁判所の判決なしに強制執行ができます。
また、公正証書のほうが、そうではない書面よりも、証拠としての信用性が高い傾向にあります。
法的効力がなくなるケース
借用書の法的効力が失われる状況は、内容によって異なります。そのため、借用書を作成する際には、細心の注意が必要です。
ここからは、法的効力が損なわれるケースを4つ紹介します。いずれも、十分な配慮が求められる内容に該当するため、一つずつ確認していきましょう。
利息と遅延損害金が上限金利を超えている
法律では、利息や遅延損害金の利率に、下記のような上限を設けています。
元本の金額 |
【利息】 上限金利(年率) |
【遅延損害金】 上限金利(年率) |
~10万円未満 |
20% |
29.2% |
10万円以上~100万円未満 |
18% |
26.28% |
100万円以上~ |
15% |
21.9% |
そのため、借用書の内容がこれらの上限を超えている場合は、借用書の全体または一部が無効となる可能性があります。
したがって、借用書を作成する際には、法律で設定された金利を超えないように留意することが大切です。
制限行為能力者との取引
「制限行為能力者」との取引には、親権者や後見人の同意が必要です。「制限行為能力者」とは具体的に、未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人を指します。
万が一、同意を得ていない取引が行われた場合、あとになってその取引が親権者や後見人等によって取り消され、なかったことになる可能性があります。
そのため、制限行為能力者との取引においては、規定された同意の取得が不可欠といってよいでしょう。
公序良俗に違反する内容
借用書に公序良俗に反する内容が含まれている場合、その契約は無効となり得ます。
たとえば、借金の利用目的として、犯罪に該当する内容を記載したり、相手方に対して違法な行為を要求する内容を記載したりする場合などが挙げられます。
取引を行う際には、法的な規定や社会的規範を踏まえ、公共の秩序や法の遵守を考慮することが必要です。
時効を迎えている
借金の時効は、一般的に弁済期から5年間です。この期間を超え、借主から消滅時効により返済義務がないことを主張されてしまうと、貸主は返済を法的に要求できなくなります。
貸し手側も借り手側も、借金の時効に留意し、法的な期限を把握することが重要です。
借用書の書き方
借用書を作成する際は最低限、以下の情報を含む必要があります。
- 表題
- 作成日
- 貸主の名前
- 借入金額と日付
- 返済期日と方法
- 利息・遅延損害金について
- 借主に関する情報
- 連帯保証人に関する情報(連帯保証人を立てる場合)
これらの要素がない場合、法的効力が認められない、または十分でない可能性があるため、注意してください。
それぞれの詳細を、順番に確認していきましょう。
表題
表題には「借用書」と記載します。一般的には借用書と記載しますが、「借用証書」「念書」などと記載することもあります。
作成日
借用書を作成した日付を記入します。西暦・和暦の表記はどちらでも構いません。
貸主の名前
借用書には、貸主(お金を貸す側)の氏名や名称を明記します。
貸主が個人なら「〇〇様」「〇〇殿」、法人なら「〇〇 御中」と表記します。
借用書は、借主から貸主へ提出されるものであり、正確な貸主の識別が重要です。
借入金額と日付
続いて、借入金額と借入日を記載します。金額は「金 〇〇円也」と書くのが基本です。
借入日は、借主が実際に金銭を受け取った日にちを記入することが通常です。
返済期日と方法
借用書には、借りたお金の返済期日と返済方法を明確に記載しましょう。
返済方法は、一括返済または分割返済と明記します。返済スケジュールや方法に関する合意は、金銭消費貸借契約において重要な要素です。
利息・遅延損害金について
利息と遅延損害金に関する利率や計算方法を、借用書に詳細に定めます。
これらが明記されていない場合、貸主は借主に対し、合意した内容で利息や遅延損害金を支払うよう、法的に求めにくい可能性があります。
借主の情報
借用書に借主の氏名や法人名、住所を正確に記載し、借主の押印が必要です。
これにより借主の識別が確実になります。
連帯保証人の情報
連帯保証人がいる場合、同保証人の情報も明示し、本人の署名と押印を得ることが重要です。
借主が返済できなくなった際には返済を代行することがありえるため、保証人の明確な同意により、法的責任が確立されます。
借用書のテンプレート
借用書は、標準的な書式が特に定まっているわけではありません。
ビズオーシャンでは、ダウンロードが可能なテンプレートを複数取りそろえています。借用書の記入を考えている方は、以下のテンプレートを参考にするとよいでしょう。
【連帯保証人を立てないケース】
【書式のテンプレートをお探しなら】
【連帯保証人を立てるケース】
【書式のテンプレートをお探しなら】
借用書作成時の注意点
借用書を作成する際には、以下の点に留意してください。
- 1万円以上の借入には収入印紙が必要
- 手書きの場合は消えないペンで書く
- 金額は大字を使用する
- 署名捺印を忘れない
- 原本と写しの2通用意する
いずれも、十分に気を付けなければならない内容ですので、一つずつ確認しましょう。
1万円以上の借入には収入印紙が必要
借入金額が1万円以上の場合、借用書は課税文書となり、収入印紙が必要です。収入印紙を貼り忘れると過怠税が科されるため、作成の際には慎重さが求められます。
借入金額に応じて必要になる収入印紙の税額は、以下のとおりです。
借入金額 |
収入印紙の税額 |
1万円以上~10万円以下 |
200円 |
10万円超~50万円以下 |
400円 |
50万円超~100万円以下 |
1,000円 |
100万円超~500万円以下 |
2,000円 |
500万円超~1,000万円以下 |
1万円 |
1,000万円超~5,000万円以下 |
2万円 |
参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
※5,000万円以上の収入印紙の税額については、国税庁ホームページ等の公的機関のサイトをご参照ください。
手書きで簡単に作成する場合の注意点
借用書の作成は、手書きでも可能です。ただし手書きの場合、後から捏造されないようにいくつかの注意点があります。ここからは実際の借用書の見本とともに、以下の主な注意点についてそれぞれ解説します。
手書きの借用書の見本
手書きの場合は消えないペンで書く
借用書を手書きする場合は、改ざんを防ぐために、消えないペンの使用が必須です。
鉛筆・消せるボールペンの使用を避け、手書きした文書を印刷して保管しておくと、上書きのリスクを低減できます。
金額は大字を使用する
金額は「大字(だいじ)」と呼ばれる数字表記を使用することが通常です。
「1,2,3」というアラビア数字は、末尾に「0」を付け足せてしまうほか、一般的な漢数字でも「一」を「二」と書き換えることが可能なため、改ざんのリスクが生じます。
大字表記はこれらのリスクを軽減し、法的トラブルを未然に防ぐことができます。
代表的な大字の表記例は、次のとおりです。
一般的な漢数字 |
一 |
二 |
三 |
十 |
百 |
千 |
万 |
十万 |
百万 |
大字 |
壱 |
弐 |
参 |
拾 |
陌・佰 |
阡・仟 |
萬 |
壱拾萬 |
壱陌萬・壱佰萬 |
たとえば、額面に「200万円」と記載したい場合、以下のようになります。
OK:金弐佰萬円也
NG:金二百万円也
署名捺印を忘れない
借用書には、署名と捺印を両方行っておくほうがよいといえます。
署名は、自筆で氏名を記すことで法的効力を持ちます。また、連帯保証人がいる場合は、保証人の署名と捺印も必要です。
原本と写しの2通用意する
借主から貸主に借用書を提出する際、原本は「貸主」が保管するのが通常です。
借主は提出前に「写し」を用意して、自身でも保管しておくことが重要です。これにより、いつでも契約条件を確認でき、将来的なトラブルや不明瞭な状況を未然に防ぐこともできます。
まとめ
借用書は、契約書と同等に法的効力があります。ただし、本記事で紹介した4つのケースや、記載内容に不備がある場合では法的効力が認められない、または十分でない可能性があります。
なかでも、記載不備は未然に防げることであるため、本記事を参考にして、必須となる記載事項について把握しておきましょう。
また、テンプレートを活用することでも記載不備を防ぐことが可能です。
ビズオーシャンでは、借用書・金銭借用書のテンプレートをパターン別に多数ご用意しています。テンプレートをご活用いただくことで、正確な借用書を作成することができるでしょう。ぜひご活用ください。
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