見積書でミス多発!ワークフローで見積り業務を効率化するまで
前回のコラムでは、申請書そのものにスポットライトをあてて、その意義や書き方のポイントなどについて深堀りしましたが、今回は前回の支払依頼書に続き「見積書」についてお話したいと思います。
見積書とは
皆さん既にご存じかと思いますが、見積書とは、取引に関する品目や数量、金額、期間などが記載された書類を指します。受注者が予めこれらの情報を共有することで、発注者は実際に取引や発注を行うか否かを検討・判断します。
ちなみに、見積書も商取引の中で発行される「証憑(しょうひょう)」の1つにあたります。そのため、他の帳簿類と同じく保存が義務付けられています。
見積書はなぜ必要?
見積書は、主に契約前の内容確認を目的としています。
具体的な契約の内容を書面に明記することで、後から「こんなに高くなるとは思わなかった」「思っていたのと違う」といったトラブルを回避することができます。
また、「相見積もり」といって、複数の企業間で同じ条件下での価格や内容を比較する際にも見積書が活用されます。
見積書の書き方
特に決まった書き方があるわけではありませんが、上段でも述べた通り、見積書は証憑の一種です。取引の証拠となるものなので、正確な内容を記載する必要があります。見積書に必要な項目は下記の通りとなります。
- タイトル
一番上に、大きく記載しましょう。
例:「見積書」、「御見積書」、「お見積書」 など - 日付
有効期限や納期にも関わることがあるため、日付(発行日)は重要な項目です。
必ず記載するようにしましょう。 - 見積書番号
必須項目ではありませんが、番号をつけておくことで、確認したいときにすぐに取り出せるなど書類の管理が容易になります。 - 発注者の情報
発注側の宛名を記載しましょう。なお、発注者の住所や電話番号は必須ではありません。
①宛先が会社の場合
(株)(有)など略さず正式に記載しましょう。
また、会社名の後に「御中」とつけましょう。
例:株式会社〇〇 御中
②宛先が担当者の場合
担当者がいる場合は、担当者名の後に「様」をつけましょう。
この場合、「御中」を使うと敬称が重複してしまうので不要です。
例:株式会社○○ ○○支店 部長代理 ○○○○様 - 受注者の情報
発注者が発注しやすいように、受注者の会社名、住所、電話番号など詳細な連絡先を記載しましょう。
また、特に規定はありませんが、見積書が正式に発行されたことを証明するためにも、会社名には社印(角印でも可)を押しましょう。この際、会社名や住所に重なるように、押印することがポイントとなります。 - 見積明細
商品名やサービス名、数量、単価、金額を正確に記載しましょう。 - 見積金額
総合計のほか、小計と消費税を記載しましょう。 - 備考欄
必要に応じて補足説明のためのスペースを設けておくと便利です。 - 納期
目安となる発注から納品までの期間を記載しましょう。
例:受注後1カ月以内 など - 有効期限
有効期限付の見積書の場合、受注者側で撤回することができないので、注意が必要です。また、発注者側が有効期限が切れたあとに発注を依頼した場合は、再度見積書を提出する必要があります。
見積書どうやって作る?
さて、ここまで見積書の意義や書き方についてお話してきましたが、皆さんは見積書をどのように作成しているでしょうか。
もしかすると、まだ手書き!という方もいらっしゃるかと思いますが、恐らく多くの企業では、便利な表計算ソフト「エクセル(excel)」を使用しているのではないかと思います。
確かに、エクセルは業種を問わず広く普及しているため、誰でも使うことができ導入しやすいというメリットがあります。
しかし、その一方で上記のように項目が決まっていたとしても、
「入力に時間がかかるし、ミスも多い……」「担当者によってフォーマットや見積り条件がバラバラ……」といった不満を抱えている方も少なくないのではないでしょうか。
そこで以下にエクセルによる見積書作成のデメリットをまとめてみました。
エクセルによる見積書作成のデメリット
- 入力ミスの多発
エクセルの見積書作成でよくある問題として1番多く挙がるのが、入力ミスの多発です。上記で説明したように、見積書は記入すべき項目が多いため、手入力ではどうしても記入漏れや内容の誤りが起こりがちです。 - 形式や入力項目のバラつき
担当者により形式や見積条件にバラつきが出てしまうこともエクセルによる見積書作成のデメリットです。
入力すべき項目が多いこともそうですが、たとえ会社で規定のフォームがあったとしても、意図せず書式や数式を変更してしまい、担当者ごとに違った見積書フォームになってしまっているケースも少なくありません。さらに、規定のフォームの刷新があった場合、どれが最新版のもの分からず、新旧のバージョンが混在してしまうケースも考えられます。 - 管理が属人化しやすい
エクセルによる見積書作成のデメリットとして、管理が属人化しやすいという点も挙げることができます。例えば、担当者がそれぞれエクセルで見積書を作成し、各自のPCにデータを保存し、独自で保有しているということはないですか。このような場合、担当者の不在や退職時に引き継ぎが上手くいかず、顧客対応に悪影響が出る可能性もあります。 - 確認の手間がかかる
担当者によって見積書の形式にバラつきがある場合、内容を確認する承認者の負担も大きくなります。例えば、見積書自体をPCで作成していても、結局は紙に印刷した上で承認者へと回付し、押印してもらう必要があります。また、メールで見積書の承認依頼を行っている場合も同様で、承認者は「メールを開封」「ファイルをダウンロード」「エクセルファイルを開く」という余計な手間がかかってしまいます。 - 管理負担が大きい
見積書は作成・承認が済んだらそれで終わりというものではありません。
例えば、発行された見積書には管理のための番号が割り当てられるのが一般的ですが、エクセルで作成された見積書は一元管理することができないため、通し番号を割り当てることができずに管理が煩雑になりがちです。
また、顧客管理システムなどに登録する際には、エクセル見積書の内容を再度入力する必要があるなど、管理の負担が大きくなってしまいます。
ワークフローで見積業務を効率化
さて、なにかと大変そうな見積書の作成ですが、エクセルをワークフローシステムに変え、電子化することで、下記の観点から先述の多くの課題を解決し、効率化を実現することができます。
- フォーマットの一元管理
ワークフローシステムを導入することで、見積書をシステム上で一元管理することが可能になります。見積書のフォーマットを更新する場合は、システム上で変更を反映できるため、担当者ごとにバラバラの形式の見積書フォーマットを使ってしまったり、管理が属人化するということを回避できます。 - 手入力によるミスを防止
メーカーにもよりますが、ワークフローシステムには、入力内容の自動チェックや、事前設定している項目から選択する形式に対応する機能を搭載したものがあります。そのため、エクセルの見積書作成で多発していた入力ミスを大幅に減らすことができます。 - 誰でも簡単に操作可能
こちらもメーカーによりますが、ワークフローシステムには、ITやプログラミングの専門知識がなくても、誰にでも簡単に操作できるよう配慮されている製品が数多く存在します。
このような製品であれば、紙の見積書のように直感的に作成できるため、ITツールへの苦手意識がある方や業務経験が少ない方でも安心して利用できます。また、社内での普及の観点からも、違和感が小さいため、幅広い活用が期待できます。 - 管理負担を軽減
ワークフローシステムで作成された見積書は、データとしてシステム上に保存されます。
過去の見積書を確認したいときは、速やかに検索でき、必要に応じて出力することも可能です。また、印刷やファイリングの手間が無く、物理的な保管場所も必要としないため、手間やコストといった管理の負担を大幅に削減することができるでしょう。 - 業務効率が大幅改善
ワークフローシステムで見積書を電子化することで、業務効率の改善も見込めます。
例えば、見積書の作成から承認、管理までシステム上で完結することができるので、わざわざオフィスに戻って印刷し、承認者へと回付して押印してもらういわゆるハンコ出社の必要はありません。
また、見積書以外の申請書にも対応しているので、ワークフローシステムを導入することでテレワークやリモートワークなど新しい働き方を実現することも可能になります。
まとめ
一見すると、シンプルで作業時間がそれほどかかっていないと思われがちな見積書の作成ですが、一連の業務を整理してみると、思いのほか複雑であることが分かると思います。
例えば、代理で起票する営業アシスタントがいたり、承認者が複数いたりと、多くの人物が関わっていたり、見積金額によっては承認者の分岐条件についても検討する必要が出てきます。
こうなったときに、やはりエクセルでは対応しきれない部分が多く、かなりの時間と手間を割くことになるのではないでしょうか。
見積書の作成自体を効率化し、その分の時間を本来注力すべき業務に充てることで、生産性を向上させるためにも、また何より大切なお客様に迷惑かけないためにも、今一度見積書の電子化を一考してみてはいかがでしょうか。