部下育成プラン
バラツキの原因を考える
求められる行動がとれる社員ととれない社員の違いは、能力ややる気の差ではなく、やり方がわかっているかどうかに起因することの方が圧倒的に多いという研究結果を第1回目でご紹介しました。
しかし、できない社員ができる社員と比較される場合、どうしても結果で比較されてしまいます。それは、他人と比べる場合、結果で評価するのが最も解りやすいからに他なりません。しかし、それでは結果に至るプロセスは重視されません。そうすると、極端な場合、結果さえ出せればプロセスなんかどういでもいいということになりかねません。つまり、何をやってでも結果を出すという方向に向かってしまいます。
向上のために取り組む具体策は何か
私はよくセミナーなどで『プロセスなき成功は偶然の産物にすぎない』という言葉を使います。厳密にいえば、偶然ということはないのですが、本人に自覚がなく、たまたまうまくいったと思った場合、通常、そのプロセスというのは意識されていません。ですから、その行動は再現性がないのです。
そういう理由から、部下育成プランには、必ず目標とともにそこに至るプロセスを明確にさせる必要があります。おそらく、社員ごとに経験年数や蓄積された知識・技術・ノウハウには差があります。それは仕方ないことですが、各社員が、各々次のステップを目指すことを考えれば、取り組むべき具体的な行動は個々に違ってたとしても、評価の対象は向上のためにどういうプロセスを踏み、実践しているかという行動そのものということになりますから、本人の目標達成度が尺度になることは明らかです。
経験による違いを考慮する
上記のように、個々人の行動と目標達成度を評価の対象にしてしまえば、他人との比較という視点は持ち込まれないので、できる社員できない社員という人との比較をされることがなくなり、自分の行動だけに集中できるようになります。
そもそも経験の違う社員を一律に評価するのは無理がありますし、経験の浅い社員のモチベーション低下につながりかねない危険を孕んでいます。
このシートにあるように、個々の社員ごとに「向上のために取り組む具体策」はレベルの差はあっても、評価の視点は目標として設定している行動を実行したかどうかの1点に絞るのが、個々の社員の貢献意欲を維持するうえで最も重要なポイントです。
具体策の優先順位の付け方
具体策の優先順位については、その部下にとって業務上のボトルネックになっているプロセスを探り当てることから始めて、ボトルネックを解消する手立てとして有効と思われることを1番に持ってくるのが良いと思われます。
例えば、電話営業からアポをとって初回訪問に持ち込むというプロセスを考えた場合、訪問に結び付けられない社員は、電話で話す内容や手順、相手の都合を聞きだす前に切られてしまうなど、どこかに決定的な問題があることが多いのです。例えば、相手に電話の目的の目的がよく伝わってない時点で訪問のアポ取りをしようとすると警戒をされるのが普通です。この場合、まずは、アポ取りまでの手順を見直す必要があります。
評価基準について
向上のために取り組むべき具体策が決まったら、それを細かく行動に落とし込んでいきます。本シートでの評価は四半期ごとになっていて、ABCの段階評価で示されています。このシート自体は、総合評価としての使用が前提になると思われますので、これで充分だと思います。ただ、実際には、やはり行動に対する評価指標が必要になってきます。
例えば、居酒屋などの飲食店でいえば、ひと組のお客様に対して本日のお勧めメニューを何回提案して実際に何回注文が取れたかといった注文率のような指標です。こういう指標を設定して始めて行動が結果に結び付いているかどうかを確認することが可能になります。