約束手形と為替手形の違いは? 収入印紙の貼り方・ポイントも解説!
約束手形・為替手形を振り出す際は、収入印紙を貼り付けなければなりません。
収入印紙は誰が貼るのか、印紙税額はいくらなのかなど、押さえておくべきポイントが多くあります。
この記事では、手形の違いや印紙税額、収入印紙の貼り方など、収入印紙の基礎知識をわかりやすく説明します。
約束手形とは
まずは、約束手形について、為替手形との違いや利用するメリットなどを解説します。
為替手形との違い
そもそも手形とは、将来のある期日に一定の代金を払う・受け取ることを約束する証券のことです。手形を作成することを「手形を振り出す」と言い、振り出した人を「振出人」と言います。
手形は、大きく分けて約束手形と為替手形に分類できます。
約束手形は、手形の振出人Aが受取人Bに対して、手形代金を一定の期日までに支払うことを約束する有価証券のことです。
つまり、約束手形では手形作成者である振出人AがBに代金を支払う形になります。
一方、為替手形は、手形の振出人Aが手形の支払人Bに対して、一定の期日までに受取人Cに手形代金を支払ってもらうことを約束する有価証券のことです。
つまり、AがBに対して債権を有していて、CがAに対して債権を有している場合に、BがCに支払う形で決済をまとめる場合などに使われます。
約束手形・為替手形は、額面10万円以上の手形を振り出す際は印紙税がかかります。
手形の不渡りとは
手形が支払い期日を迎え、支払い請求をしたにも関わらず、支払いの拒絶や預金残高不足などで支払いが行われないことを「手形の不渡り」と言います。
6ヶ月以内に不渡りを2度起こすと、約束手形の振出人や為替手形の引受人(手形の支払人)は銀行取引の停止処分となり、事実上の倒産となるので注意が必要です。
約束手形、為替手形の印紙税額
印紙税額は、手形に記載される金額に応じて変わります。国税庁によると、印紙税額は以下の通りです。
金額 |
印紙税額 |
10万円未満 |
非課税 |
10万円超100万円以下 |
200円 |
100万円超200万円以下 |
400円 |
200万円超300万円以下 |
600円 |
300万円超500万円以下 |
1,000円 |
500万円超1,000万円以下 |
2,000円 |
1,000万円超2,000万円以下 |
4,000円 |
2,000万円超3,000万円以下 |
6,000円 |
3,000万円超5,000万円以下 |
1万円 |
5,000万円超1億円以下 |
2万円 |
1億円超2億円以下 |
4万円 |
2億円超3億円以下 |
6万円 |
3億円超5億円以下 |
10万円 |
5億円超10億円以下 |
15万円 |
10億円超 |
20万円 |
手形金額の記載のないもの |
非課税 |
一覧払手形等 |
200円 |
収入印紙を貼るときのポイント・注意点
ここからは、約束手形と為替手形における収入印紙について、押さえておきたいポイントを説明します。
収入印紙に消印として割印を押す
額面10万円以上の手形、つまり課税対象となる手形を振り出す際は、収入印紙と手形に半分ずつかかるよう割印を押しましょう。
この割印は消印の役割を果たします。消印とは、一度使った収入印紙が再度使用されることを防ぐものです。
額面10万円以上の手形については、割印を押印することで印紙税を納付したとみなされます。割印を押していない場合、手形としては有効ですが、過怠税の対象となるので必ず押しましょう。
割印は、銀行への届出印である必要はなく、署名でも問題ないとされています。
収入印紙なしの約束手形・為替手形は無効になる?
そもそも、収入印紙なしの約束手形・為替手形で取引が進むことは原則ありません。取引の前に、受取人や銀行から指摘が入るためです。
万が一、収入印紙がないまま取引が進んだ場合でも、手形自体は無効にはなりません。
しかし、収入印紙を貼ることは印紙税法で定められているため、収入印紙が貼られていない場合は過怠税が課されます。
この場合の過怠税は、本来払うべき収入印紙の3倍です。収入印紙の貼り付けは徹底しましょう。
約束手形、為替手形の印紙は誰が貼る?
そもそも印紙税とは、課税文書を作成したものが負担する税金のことです。
また、収入印紙とは、印紙税や登録免許税など国に対して税金や手数料を支払うために発行される証票のことです。有価証券の受取を証明する領収書には、収入印紙の貼付が必要となります。
前述の通り、約束手形・為替手形は課税文書に該当し、額面10万円以上の手形を振り出す際は収入印紙を貼り付け、印紙税を納める必要があります。
印紙税法に則ると、原則として「手形を完成させた人」が収入印紙を貼る義務を追うことになります。この「手形を完成させた人」は手形の種類によって変わります。
約束手形の場合は、手形を振り出す時点で手形として完成しています。そのため、振出人が収入印紙を貼る義務を負います。
一方、為替手形の場合は振出人と引受人(支払人)の間でどちらが負担するか、取り決めることが多いようです。
振出人から見た約束手形と為替手形を利用する3つのメリット
約束手形や為替手形を利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に3つご紹介します。
メリット1:資金繰りの猶予が生まれる
手形を使用すれば、手形を振り出した時点で金銭の支払いが発生したことにあたります。振出人は取引の後すぐに代金を支払う必要がないため、資金繰りの猶予が生まれます。
手形を使うメリットは、手形が交付されてから代金の支払いが完了するまでの期間が長いことです。この期間は手形サイトと言います。
支払期日までの期間は最大で120日まで設定されており、中小企業庁によると平均で110日とされています(2024年2月時点)。
これは特に、製造業や建設業者など、仕入れから売上代金の計上までの期間が長い事業者にとって魅力的であると言えるでしょう。
メリット2:支払いを延長しても金利がかからない
銀行融資では借入期間に応じた支払利息が発生する一方、手形取引は、支払利息が不要という特徴があります。
つまり、手形の振出人は、一定の期日までに商品やサービスの購入代金のみを支払えば良いということです。
支払いまでの期間が長くても金利がかからないというのは、支払い側にとっては大きなメリットです。
例えば、従来、銀行融資で仕入れ資金を調達していた企業は、手形を活用することで仕入れコストを抑えることができるでしょう。
メリット3:社会的に信頼度が高いことの証明になる
手形を利用するためには、支払い側が、手形を発行する金融機関の審査に通過する必要があります。
そのため、手形を利用できるということは、支払い側が銀行から与信を受けており、社会的信頼度が高いことの証明になります。
たとえば取引先に対して、口約束で「支払いを延期したい」と伝えても信用されるのは難しいかもしれません。
いっぽう手形取引は、銀行から与信を受けていることが後ろ盾として機能するため、取引先からの信用を得やすくなるでしょう。
収入印紙の基礎を押さえ、円滑で確実な約束手形、為替手形取引を
ここまで、約束手形と為替手形について、違いや使用するメリット、印紙税額や収入印紙を貼り付ける際の注意点などをお話ししました。
印紙税の納税は法律で義務付けられています。基礎を押さえて、正しく対応することで対外的な信頼アップにつながります。
この記事が、円滑で確実な約束手形・為替手形取引の参考になれば幸いです。
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