約束手形とは? 仕組みや小切手との違い、メリット・デメリットを徹底解説!
約束手形の扱いに不安を感じていませんか?
特に、資金繰りに悩む経営者にとっては、手形の仕組みや使い方を正しく理解することが重要です。小切手との違いが分からず、トラブルにならないか心配な方もいるでしょう。
本記事では、約束手形の仕組みや発行方法、企業経営に役立つメリットと避けるべきデメリットを、専門家の見解を交えながら詳しく解説します。
手形の知識を深め、資金繰りをスムーズにするためにぜひお読みください。
約束手形とは?
約束手形とは、手形を振り出した人(振出人)が、お金を受け取る人(受取人)に対して、一定期日に一定金額を支払うことを約束する有価証券のことです。
約束手形は、代金の決済期日を先に延ばすことができます。手形振出日から支払期日までの期間を「手形サイト」と呼ばれており、資金調達の猶予期間を設けることが目的です(仕入れ代金決済の場合、仕入高/支払手形 XXX で仕訳します)。
一方、受取人も支払期日まで現金を手にすることはできません(支払期日において、支払手形/当座預金 XXX で仕訳されます)。
約束手形の仕組み
手形の発行には、事前に取引のある金融機関で「当座預金」の開設が必要です。
約束手形の振出人は、手形を発行した時点では決済資金を用意する必要はありません。支払期日までに資金を用意すればよい仕組みとなっているため、手形発行には一定の信用を有することが不可欠です。
約束手形の発行方法
- 売主が商品やサービスを提供します。買主は商品やサービスの対価を支払う義務が生じます。
- 買主は、商品やサービスの対価を約束手形で支払うことができます。買主は手形振出人として、支払い期日に手形の決済が必要です。
- 売主(手形受取人)は代金決済を受けるため、受けとった約束手形を自社の取引銀行に提示します。
- 手形振出人の銀行は、支払期日に手形振出人の当座預金から約束手形の金額を引き落として、決済をします。
- 手形受取人から約束手形の提示を受けた銀行は、手形受取人に対して支払を行い、取引は終了します。
約束手形と小切手の違い
約束手形と小切手はいずれも有価証券であり、似たようなものと思われがちですが、明確な違いがあります。ここからは、約束手形と小切手の違いについて解説します。
振出人の支払いのタイミング
約束手形と小切手の違いは、振出人の支払いのタイミングです。振出人は約束手形を振出することによって、支払いを繰り延べすることができます。
手形振出の時点では現金での決済が必要がないため、手元に資金がない場合でも、一時的に支払義務の回避が可能です。支払いまでの猶予期間ができ、資金繰りが楽になる効果があります。
ただし、手形の期日には支払義務が発生しますので、期日までに資金を用意することが必要不可欠です。
小切手は、約束手形のように支払いが繰り延べになることはありません。振出した時点で支払い義務が発生するため、小切手に記載した金額が当座預金に入っている必要があります。
振出人にとっては多額の現金を持ち歩く必要がなく、手形帳さえあれば支払いできることが利点です。
受取人の現金化のタイミング
約束手形と小切手では、受取人が現金化できるタイミングも異なります。
約束手形は、記載された支払期日まで現金化することはできません。期日前に銀行へ譲渡して現金化することもできますが、手数料が発生します。また、支払期日後3営業日以内 に銀行へ持ち込む必要があるため、期日管理が大切です。
小切手の場合、受取人はすぐに現金化することができ、発行後10日以内に現金化しなければなりません。
先日付小切手(さきひづけこぎって)を発行して、手形と同じように使用するケースもあります。ただ、先日付小切手は記載されている発行日以前でも決済できることに注意が必要です。
約束手形を発行するメリット・デメリット
ここからは、約束手形を発行するメリット・デメリットを、振出人と受取人それぞれの立場から解説します。
約束手形のメリット
【振出人のメリット】
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約束手形を振り出す際に決済資金を用意する必要がないことが、振出人の資金繰りのうえで大きなメリットです。
通常、支払いの繰り延べ期間中には金利が発生しますが、約束手形の場合は決済日までの金利相当額の負担の必要がありません。決済は支払期日に自社の取引銀行によって自動的に行われるため、売買代金等を送金する必要がないことも利点と言えるでしょう。
【受取人のメリット】
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約束手形の決済は、取引銀行で支払期日に自動で行われます。受取人は事前に銀行に取立依頼を行うことで、売買代金等を自動的に回収することができます。
また、受け取った約束手形を銀行に譲渡して手数料を支払って現金化することも可能です。支払手形に裏書を行い、他社に譲渡して自社の支払いに充てることができるのも、約束手形のメリットです。
約束手形のデメリット
【振出人のデメリット】
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支払期日に決済ができない場合、手形は不渡りとなります。不渡りの事実は広く世間に公開されるため、自社の信用悪化は避けられません。さらに、手形不渡りが2度起こった場合には銀行取引が停止され、事実上の倒産に追い込まれてしまいます。
また、手形は銀行によって取り立てているため、支払を延期することはできません。資金が用意できない場合も、取り立てに回さないで欲しいといった交渉はできないと思ってください。
【受取人のデメリット】
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振出人が決済日に支払いができない場合、手形は不渡りとなり、受取人が現金を手にすることはできません。また、手形譲渡によって現金化した場合や、裏書を行って他社に譲渡した後に不渡りが起こった場合、振出人の代わりに決済代金の支払いを求められるリスクがあります。
さらに、決済日までの金利は請求できないことも、資金的にはデメリットとなるでしょう。
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不渡手形とは? 種類や不渡りになった場合の経営への影響をわかりやすく解説約束手形の印紙税額
約束手形には印紙税が課されます。手形の金額に応じた印紙税額や、収入印紙が不可欠な理由について解説します。
収入印紙額一覧
約束手形または為替手形の印紙税額は以下のとおりです。
記載された手形金額 | 印紙税額 |
---|---|
10万円未満 | 非課税 |
10万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
00万円を超え500万円以下 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 2千円 |
1千万円を超え2千万円以下 | 4千円 |
2千万円を超え3千万円以下 | 6千円 |
3千万円を超え5千万円以下 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 2万円 |
1億円を超え2億円以下 | 4万円 |
2億円を超え3億円以下 | 6万円 |
3億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 15万円 |
10億円を超えるもの | 20万円 |
出典:印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
収入印紙は必要不可欠
約束手形には印紙税が課されるため、収入印紙を貼付することで納付を行います。
手形は法律に基づき国によって効力が担保されており、取り立てまでの事務作業は銀行への依頼が必要です。その効力や作業の対価として、振出人に対して印紙税が課されていると考えられます。
約束手形に規定の印紙を貼付しなかった場合、印紙税額の3倍の過怠税が課されます。これは罰金のため、本来の印紙税額に課税されることに注意が必要です。ただし、税務署の指摘前に気づいて印紙を貼付した場合は、過怠税は本来納付する印紙税の1.1倍に軽減されます。
約束手形についてのまとめ
約束手形は、振出人が受取人に一定期日に一定金額を支払うことを約束する有価証券です。発行後すぐに支払いが必要となる小切手とは異なり、期日まで支払いが猶予されるため、資金繰りに役立つ決済方法です。
振出人と受取人の双方にとって便利な反面、不渡りとなった場合のリスクは大きく、現金化までに時間がかかるといったデメリットもあります。約束手形の特徴や取り扱いのルールを十分に理解して、会社の資金繰りにうまく活用していってください。
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