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融資(借金)の活用方法

融資(借金)の活用方法

前回の記事で、出資について取り上げました。出資を受ける、つまり株式を買ってもらうことで、返済不要な資金を調達できると紹介しています。

今回取り上げるのは、もう一つの資金調達方法、融資です。融資、つまり借金をするというのはどういうことなのか?その活用方法を少しだけ。


この記事の著者
  税理士 

どんなときに借りる?

これから事業をはじめようとしている方からすると、そもそも借金というのはどういうときにするものなのか、実はよくわかっていないのではないでしょうか?一般的な会社員生活をしている人だと、借金をする理由は概ね、以下の2つではないかと思います。

・生活費が足りなくて仕方なく
・住宅や自動車といった高額なものを購入する

この分類は、そのまま事業に転用することが可能です。事業上の借金は「運転資金」「設備投資資金」に大別されます。


運転資金とは?

運転資金とは、事業における一般的な支出を賄うためのお金です。支出は具体的に、以下のようなものが該当します。

・小売業や卸売業、飲食業等では商品の仕入れ代金
・人件費
・店舗や事務所、駐車場等の賃借料
・水道光熱費、日常的な消耗品
・税金や社会保険 その他諸々

業種により金額や種類は大きく異なりますが、それでもこれらの支出がまったく存在しない事業はありません。その支出を賄うためには、手元にある程度のお金が必要です。

ところが、以下のような状態のときにはお金が不足することがあります。

・売上はあるのだが、代金の回収は少し先のことで、いまは手元にお金がない

・これまでより規模の大きな仕事がしたいが、大きな仕入れが先行するため、そこまでお金に余裕がない

・急激な環境の変化により、仕事に急ブレーキがかかってしまった 等々

前の2つは、事業規模が大きくなってきたときによく起こる現象です。これまでよりも大きな仕事をしようとすると、そのためのお金もよりたくさん必要となってきます。

そして最後の例は、ここ最近(2021年)で多発しているものです。感染症の世界的な流行もあって、あらゆる業種でさまざまな影響が出てきました。人や物の流れが止まってしまった結果、売上が減少し、それによって手元資金が心もとなくなってしまった。そんな企業が数多く存在します。

このような状態になったときに、選択肢は2つです。

・お金がないので諦める

・運転資金を借りてきて、時間稼ぎをする

前者を選択した時点で、事業は終了です。しかし、それでは困ってしまうので、借金をして時間稼ぎをしつつ、状況の改善を図ろうとする。これが運転資金を借りる目的です。


設備投資資金とは?

そしてもう一つの借金が設備投資資金です。事業をしていると、様々な段階で色々な設備が必要になります。

・独立開業をするに当たり店舗や事務所が必要だ
・新しい機械装置を導入して、生産性を向上させたい
・新システムを導入して、業態変更を図っていきたい

創業期から成長期、変革期に至るまで、どのような時期でも設備投資は必要不可欠です。また近年は無形のもの、つまりソフトウェアやシステムの導入に伴う設備投資がとても重要になってきました。
ITやDXと呼ばれるような分野は、実は小規模な法人でこそ重要です。システムへの適切な投資をすることで、大企業には難しい小回りの効いた、速度感のある事業経営を実現することができます。

しかし、設備というのは有形、無形問わず高額です。購入できるようになるまで待っていては、タイミングを逃してしまう恐れがあります。商売において、タイミングというのは何よりも大切です。

そこで設備投資資金として借金をして、購入資金が貯まるまでの時間を省略します。まずは設備を買って導入し、それで事業の効率化を実現して、その後に借金を返していけば良い。そんな考え方です。


借金とは「時間を買うこと」である

運転資金と設備投資資金、2つの借金をご紹介しました。さて、2つの説明の中で共通の単語が出てきました。それは時間です。そう、借金における最大のポイントは、この時間との戦いだと言えます。

【運転資金】

とりあえず手元のお金を増やして持ちこたえる。その間に代金の回収、経費の見直し、業態の変更など課題の解決を図り、事業環境が好転するように経営努力する。

【設備投資資金】

お金が貯まるまでの時間を省略して設備を導入する。設備を活用して成果を生み出す必要がある。そしてそれは、借金の返済に支障が出ないくらいの速度感が必要である。

どちらの借金にしても、時間制限があることに注意が必要です。当たり前ですが、借りたお金は返さなければいけません。手元のお金が保たれているうちに、一定の成果を生み出し、滞りなく返済が進められるように結果を出さなければならないのです。

ところが、実際に事業を続けていると、その辺りの切迫感が薄れてきてしまう人が少なくありません。「とりあえず借りられたから、まぁいっか・・・」みたいに考えてしまう社長さんがチラホラ。

どのような理由であれ、借金をした以上、常に時間との戦いを続ける必要があります。


実は大切、借金の目的

ところで「運転資金」と「設備投資資金」という区分、大した問題ではないと思われた方も多いのではないでしょうか?意外と気楽に考えている社長さんが少なくないのですが・・・実はここ、結構大切なポイントだったりします。

銀行や信用金庫といった金融機関から借金をする場合、大概はその使途について、あらかじめ申請をする必要があります。実はこの申請どおりに借りたお金を使わないと、金融機関から出禁を喰らったり、以降の取引が停止されることがあります。それくらい、借金の目的は明確にしておく必要があるのです。

たまに「設備投資で借りたけど、まぁ運転資金に回しちゃおうか・・・」みたいに気軽に考えてしまう社長さんがいますが、これは言ってみれば契約違反です。一度違反をしてしまえば、あっという間にその情報は広がってしまい、以降の取引に多大なる悪影響を残します。

また、明確に違反はしていなくても、借金を繰り返しているうちに、なんのために借りていたのだかわからなくなってしまう社長さんも珍しくありません。最初は設備投資資金で借りていたけど、借り換えなんかを繰り返しているうちになんだかわからなくなって・・・。
「あれ?なんでお金借りたんだっけ?」みたいになってしまうことも。

以上を踏まえると、借金をするときには

・時間制限を意識する
・当初の目的を忘れない(現状改善、業態変更等)

これらについて、しっかりと覚えておくことが大切です。

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著者プロフィール

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髙橋 昌也

税理士

プロフィール
1978年川崎市産まれ。
2006年税理士試験合格、2007年に独立開業。東京地方税理士会川崎北支部所属。同年、FP資格取得。
開業当初より「ちいさなお仕事の支援」に特化して事業を展開。
単なる税務にとどまらず、顧客の事業計画策定を支援するなど業務全般の支援を実施。

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