もしも経理をやることになったら…経理の仕事シリーズ 経理業務Q&A②
初めて経理担当になった方向けに経理の仕事を紹介する、経理の仕事シリーズ。
今回は、経理担当者が迷いやすい「交際費」について解説していきます。
1.交際費にはどのようなものが認められますか?
一概に「交際費」といっても、どこまでが交際費として認められるかは分かりにくいです。
交際費は国税庁HPにこのように定義されています。
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。
このことから、取引先との「接待」「慶弔」「贈答」「慰安」などが交際費に含まることが分かります。ここからは、それぞれの項目を解説していきます。
①接待
接待は、取引先との関係性を良好にするために行われます。
具体的には「取引先との食事会」「取引先との接待ゴルフ」「取引先への手土産」などが該当します。
ここで気を付けなければならないポイントがあります。
先ほどの国税庁HPで定義された交際費の定義を確認すると「法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待」という文言があります。
交際費に計上するためには「その得意先、仕入先その他事業に関係ある者等」に対する接待であることが必要です。
つまり、事業以外での接待などは交際費に該当しません。
例えば、「社長家族の旅行代」「仕事以外のプライベートでの食事代」などは接待費には計上出来ません。
②慶弔
慶弔金とは「結婚祝い」「出産祝い」などの慶事、「香典」などの弔事の際に支払われるものです。慶弔金においても、取引先など事業に関係する人に対して支払われたものを交際費として計上することが出来ます。
③贈答
取引先への贈答であるお中元、お歳暮などが該当します。
私的な贈答は交際費として計上することが出来ません。また、あまり高額な贈答品は経費算入が認められない可能性があることから、常識の範囲内での贈答にする必要があります。
④慰安
取引先との旅行やゴルフなどの費用が該当します。
2.交際費を仕訳する上で間違いやすいポイントを教えて下さい。
ここでは交際費と混同しやすい勘定科目について具体例を挙げて説明します。
(1)会議費
具体的な仕訳を交えながら、説明していきます。
1「取引先の社長と会食を行い、30,000円を現金で支払った」場合の仕訳
借方 |
貸方 |
交際費 30,000円 |
現金 30,000円 |
取引先の社長との会食なので、交際費で仕訳することが出来ます。
2「取引先を含めた5名で会食を行い、20,000円を現金で支払った」場合の仕訳
借方 |
貸方 |
会議費 20,000円 |
現金 20,000円 |
この場合は「交際費」ではなく「会議費」を勘定科目として用います。
1人当たり5,000円以下の会食の場合は、「交際費」ではなく「会議費」として仕訳します。
ただし、領収書からは会食に何人参加したかどうかは分からないために、領収書に会食に参加した取引先名、氏名、参加した人数を書いて保存しておくことをお勧めします。
3「従業員5名で飲食店にて打ち合わせを行い、10,000円現金で支払った」場合の仕訳
借方 |
貸方 |
会議費 10,000円 |
現金 10,000円 |
この場合は、取引先などの社外の人間がいないために、「会議費」にて仕訳を行います。
(2)福利厚生費
交際費は「その得意先、仕入先その他事業に関係ある者等」が対象先となりますが、対象先が社員向けである場合は福利厚生費として処理されます。
具体的な仕訳を通して、確認していきましょう。
1 取引先の社長と接待旅行に行き、現金で100,000円支払った
借方 |
貸方 |
交際費 100,000円 |
現金 100,000円 |
取引先の社長との接待旅行は「交際費」として処理します。
2 1泊2日の社員旅行を行い、現金で200,000円支払った
借方 |
貸方 |
福利厚生費 200,000円 |
現金 200,000円 |
この場合、取引先との旅行ではなく、社員旅行であることから「福利厚生費」を用います。
ただし、社員旅行を福利厚生費として処理するためには、次のような要件があります。
<要件>
- ① 旅行の期間が4泊5日以内であること
(海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること) - ② 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること
(工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要)
このように旅行する相手により勘定科目が変わりますので、仕訳の際には十分注意する必要があります。
(3)広告宣伝費
交際費は、得意先や仕入先、その他事業関係のある者に対する贈答などが該当しますが、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図した費用は交際費ではなく広告宣伝費に該当します。
<具体例>
- 毎年配布するカレンダーなどを作成する費用
- 得意先などに対して見本品や試用品を提供するために通常要する費用
- 製造業者や卸売業者が、抽選により一般消費者に対し金品を交付するための費用又は、一般消費者を旅行、観劇などに招待するための費用
- 製造業者や卸売業者が、一般消費者に対して自己の製品や取扱商品に関してのモニターやアンケートを依頼した場合に、その謝礼として金品を交付するための費用
(4)寄付金
寄付金とは、金品、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与をいいます。
取引先へ金品、物品を渡した場合においても、交際費として処理すべきものか、寄付金として処理すべきかを判断する必要があります。また、事業と直接関係の無い社会事業団体、
政治団体に対する寄付、神社などに対する寄贈なども寄付金に該当します。
参考に、国税庁HPに具体例が示されていますので紹介します。
Q.当社は、地震により工場が全壊して通常の営業を出来なくなってしまった取引先に対して、今回、災害見舞金を出しました。この災害見舞金は交際費等になるのでしょうか。(出典:国税庁HP)
A.取引先の通常の営業活動を再開するための復旧過程において支出した災害見舞金は、交際費等には該当しません。
法人が得意先、仕入先等の社外の者に支出した金品等は接待費として計上します。しかし、取引先に対する災害見舞金は、災害前の取引関係の回復を目的としており接待費ではなく寄付金として処理します。
Q.この度、公立大学に100万を寄付しました。寄付金として全額損金の額に算入してよい
でしょうか。(出典:国税庁HP)
A.全額損金の額に算入します。
3.交際費として取り扱う際に注意すべき点を教えて下さい。
最も注意すべき点は証拠書類の取り扱いです。
交際費は「取引先、仕入先、その他事業と関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」を指します。
交際費が否認されるケースとしては「事業と関係のある者ではなく、プライベートな接待、供応、慰安、贈答に使用される場合」が挙げられます。交際費が否認された場合は、損金計上することは出来ず、役員報酬となります。社長など役員個人の所得になるために所得税が課せられることになります。
交際費を否認されないためには、領収書に取引先名、贈答日や時間、場所や目的などを記録しておくことが必要です。
また、冠婚葬祭などの慶弔金の場合は、領収書を徴求することが出来ません。この場合は結婚式の招待状や葬儀の案内などを領収書の代わりに保管しておきましょう。
税務調査の際に、必要な領収書を紛失している場合や帳簿だけでは判断が付かない場合も交際費として認められないケースがありますので、十分に注意して取り扱いする必要があります。
4.最後に
今回は交際費について説明しましたが、いかがだったでしょうか。
経理担当者としては、交際費の処理は判断に迷うケースが多いと思います。
「事業に関係するものか?」「交際費の対象は誰なのか?」などから交際費に該当するか判断していきます。
税務調査が入った場合、交際費は着目されるポイントになるために、経理担当者としては慎重な取り扱いが求められます。