経費とは? 経費の仕組みや範囲をわかりやすく解説
経費には、計上できるものと計上できないものなど、一定の規定があります。経費とはどういう仕組みを言うのでしょうか。今回は、経費についての基礎、経費に計上できるものとそうでないもの、経費に計上するうえでの注意点、経費を不正に扱った場合のペナルティの種類など、経費のあれこれを解説します。
経費は企業の社員であれば、誰もが関わるものです。他社で「〇〇を経費で落とせた」としても、自社で落とせるとは限りません。購入の目的が違えば、経費としての判断も異なります。経費の基礎を学び、今後の業務に役立ててください。
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経費とは?
まずは、経費の基礎知識から紹介します。経費を幅広く知ることが社会人としての基本です。
経費の仕組み
経費とは、事業運営のために必要となる費用のことを言います。よく、金額が大きいものは経費と認められる可能性が低い、ということを耳にしますが、金額の多寡(たか)はそれほど関係ありません。よって、事業関連性の大きさが経費として認められやすいということになります。
経費のなかで、もっとも売り上げと関係の深いものを「売上原価」と言います。これは商品を売り上げた時や製品を製造した時に発生する費用です。商品仕入や外注費などのことを指します。売り上げから売上原価を差し引いたものを一般的に粗利と呼ぶ場合があり、商品・製品から直接発生する利益と言えます。
「経費で落とす」の意味とは
「経費で落とす」とよく言いますが、これは「会社の事業経費に含める」ことを言います。「会社の事業経費に含める」と会社の利益を少なくすることができますので、税金の支払いが少なくなる効果があります。税金が少なくなれば、会社に残る現金は多くなりますので、メリットがあります。
どこからが経費で落とせる?
会社が経費を計上するためには、事業関連性があることが必要です。言い換えれば、「会社に利益をもたらすために使われる」ことが必要です。経営者が売り上げを得るためにかかったものは、費用として計上することができます。
仮に金額は小さくても、売上に全く貢献しないものは経費とはなりません。仮に、売り上げを得ようとしたが、目論見が外れて利益が得られない場合でも、利益が得られなかったという事実をもって経費に計上できないというのは、いささか厳しすぎると思われます。
経費処理をする際の注意点
経費を税務上認めてもらうには、まずは、支払いの事実を証明する必要があります。一般的には、「領収書」や「レシート」を保管しておき、第三者の証明として使用します。また、「領収書」にはその使用した理由も残しておくべきでしょう。それは事業関連性の証明にもなります。
仮に、領収書やレシートが発行されないケースは、「支払証明書」を支払者自身が作成しておきます。自身の作成であっても、支払日、支払者、支払金額、支払事由が特定されており、一応の証拠力は認められます。
経費で計上できる科目の種類
経費で計上できる科目の種類は以下になります。
- 人件費
- 地代家賃
- 交際費
- 旅費交通費
- 消耗品費
- 新聞図書費
- 通信費
- 水道光熱費
- 福利厚生費
- 研究開発費
- 広告宣伝費
それぞれ、具体的にどんな費用が該当するのかを紹介します。項目によっては金額の上限があるので、併せて見ていきましょう。
人件費
人件費とは、会社が雇用する人員の給与・賞与・退職金などがそれに該当します。実際に勤務実態があり、その金額が相場的に相当であれば、経費として認められるでしょう。
ただし、会社の役員の場合は、一概に経費にすることは認められません。金額やその計上時期にはさまざまな制約がありますので、注意が必要です。
また、個人事業者が生計を一にする親族を雇用した場合、その経費計上には制約があり、基本的には認められません。税務署にさまざまな届出書が必要であり、その勤務実態には制限がありますので注意が必要です。
地代家賃
自己の事業の用に供されている不動産の地代家賃は、経費に計上できます。また、権利金などの支払いがあった場合は、支出時に経費化することが可能です。
注意すべき点として、個人事業の場合、自己不動産の一部を事業用に使用するケースがありますが、その場合には使用面積などに応じて、地代家賃の金額を調整する必要があります。
交際費
交際費は、取引先との会食やお中元・お歳暮などについて計上されます。また、冠婚葬祭も交際費に含まれます。
ただし、法人の支出する交際費については制限があります。資本金1億円以下の小規模法人の場合、年間8百万円までの交際費が控除の上限になります(一部例外あり)。
旅費交通費
旅費交際費は、業務で使用した公共交通機関の利用料やタクシー、レンタカーの利用料金が含まれます。臨時使用の駐車場もこの科目に含まれますが、定期契約の駐車場については、地代家賃などで処理するのが一般的でしょう。
近年、交通系ICカードによって公共交通機関での利用料を決済するケースが多くなっており、業務用と個人用のICカードを分けないケースも見かけます。メモなどを取っておくことで、適正な経理処理ができるでしょう。
消耗品費
消耗品費は、10万円未満の少額物品を購入した場合に使用します。10万円以上のものは、固定資産として計上されます。また、10万円以上20万円未満の物品を購入した際には、一括減価償却資産として別途償却方法が用意されています。
新聞図書費
新聞図書費は、新聞や定期購読される雑誌類など、事業に関連する費用を計上することができます。事業上のヒントを得るなどの事業関連性があれば、その種類に特段の制限はありません。
通信費
通信費は、電話代や携帯電話代、郵便切手などの購入費用が計上されていましたが、近年のインターネットの拡大に伴い、インターネット接続料やサーバー利用料なども含まれることとなりました。
水道光熱費
水道光熱費は、水道代、電気代、ガス代などが含まれます。個人事業において、自宅兼オフィスとされている場合、その利用実績に応じて、事業用経費とすることは認められています。
福利厚生費
福利厚生費は社員の日ごろの頑張りに報いるため、慰安旅行や懇親会を実施した場合の費用の支出や、働きやすい環境を整備するための健康診断費用負担、冠婚葬祭への金銭などの支出を言います。
研究開発費
研究開発費は、新製品の開発や基本商品の機能向上のための調査研究や実際に行ったことに伴う費用支出を言います。情報収集のための研修受講やセミナー参加も含みます。
広告宣伝費
広告宣伝費は、自社の製品・商品の宣伝や会社そのものを宣伝する費用を言います。たとえば、新聞や雑誌などへの掲載費用やチラシなどの作成費用や販促物の作成費用、イベントへの協賛費用が該当します。
経費で計上できないもの
経費で計上できないものは以下のとおりです。
- 所得税・住民税
- 社会保険料
- 個人事業主の家族に対する給与
- 私的に使用した費用
それぞれを詳細に見ていきます。
所得税・住民税
所得税や住民税は、会社や個人事業が利益を上げた結果に対して課される税金になりますので、利益を上げることに対して支払われるものではありません。よって、経費に計上することはできません。租税公課で支払うと、誤って経費に計上してしまうミスが発生しやすいので、別の科目で計上することをおすすめします。
社会保険料
社会保険料は個人に対して課税され、会社や個人事業の利益計上には無関係ですので、経費に計上することはできません。ただし、経費には計上できませんが、個人の確定申告において、社会保険料控除として所得控除できますので、ご安心ください。
個人事業主の家族に対する給与
個人事業主の場合、家族への給与の支払いは原則的には経費にすることは認められていませんが、事業専従者とすることによって、経費化することができます。事業専従者となるためには、個人事業者と生計を一にしている親族であり、年間のうち6カ月以上その事業に従事していることが必要です。また、青色申告の場合、届出書の提出も必要となります。
私的に使用した費用
経費にするには、事業関連性が必要になることを述べてきました。たとえば、業務で利用する予定のスーツや靴、時計などは私的利用にはなりませんが、 事業関連性のない支払いは、いくら領収書があっても経費とすることはできません。
あくまでも「会社に利益をもたらすために使われる」ことが必要ですので、ほかの方が経費で落としたからと言って、自社でも経費化できるとは限りません。
経費を不正計上した際のペナルティ
経費を不正計上した場合のペナルティは次のとおりです。それぞれ以下にて解説します。
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 不納付加算税
- 重加算税
過少申告加算税
経費を不正計上など行うことによって、納税額を不正に減らした場合、本来納める税金に対して一定割合のペナルティを受けることとなりますので、税金は正しく計算して納税するようにしましょう。
本来、経費として計上することができないものを経費と計上し、税額を少なく申告して納税を行った場合、本来納めるべきであった税金に対して、不足額とその10~15%の割合のペナルティを支払わなければなりません。このペナルティを過少申告加算税と言います。
無申告加算税
本来であれば、申告を行う必要があったのに、故意または過失で申告自体を回避していた場合、無申告加算税というペナルティを受けます。申告そのものを行っていなくても、申告すべきであることが発覚した場合には、申告しなければなりません。
本来の納付すべきである税額に加え、不足した税額の50万円までは15%加算、50万円を超える場合は20%が加算されます。
不納付加算税
事業を行っている場合、その支払のうち一部を支払留保して税務署に納付しなければならないものがあります。たとえば、従業員に対して支払う給与は、その金額に応じて源泉徴収をしなければなりません。
源泉徴収額を期限までに納付しなかった場合、納付すべき金額の10%(例外あり)は、不納付加算税としてペナルティを受けます。
重加算税
これまで見てきたペナルティは、過失によるペナルティでしたが、納税者が過失隠蔽によって課税を免れてきたと税務署が判断した場合は、重加算税という重いペナルティになります。不足した税額に加え、その35~40%が加算されます。
金額もさることながら、重加算税を課されたことは税務署の内部資料に記録されますので、今後の税務調査などで不利益が出る可能性があります。
ペナルティにならないための対策や施策
ペナルティにならないための対策や施策としては、以下があります。ご自身に合う方法で対策を取りましょう。
税理士に相談
納税者には不正の意図はなくても、不正の意志ありと見なされてしまう場合があります。知らないうちに、不正という判断をされることも決して少なくありません。経験豊かな税理士に依頼することにより、意図しない処理の間違いを避けることができます。
税務署に相談
納税者自身が税務申告を行う場合、税務署に質問をすることにより、申告の誤りを事前に回避することができます。ただし、税務署はヒントをくれるだけで実際の作業は行ってもらえませんので、ご自身としてもある程度の知識をつけておくことは必要です。
経費についてのまとめ
ここでは、経費について解説しました。まとめると以下のとおりです。
- 業務上必要な費用は経費として認められる
- 経費には計上できるものとそうでないものがある
- 経費として計上できる科目は、全部で11種類ある
- 経費を不正計上した場合のペナルティは、全部で4種類ある
仕事をする以上、誰もが関わりある経費。本来は、経理担当者の仕事ではありますが、その内部を知っているのと知らないのとでは、社会人としての質に違いが出るでしょう。モラルに反することのないよう、再度見直してください。
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