休業手当も雇用保険料の対象になる? 関係性や計算方法について解説!
休業手当とは、企業の都合で従業員を休業させた場合、労働者に対して支給される手当のことです。休業手当は通常の給与と同じ「賃金」の扱いになるため、雇用保険料の対象です。
この記事では、休業手当と雇用保険料の関係性と計算方法を、経理初心者の方に向けてわかりやすく解説します。
休業手当も雇用保険料の対象になる
休業手当は、通常の給与と同じ「賃金」の扱いになるため、雇用保険料の対象です。
「賃金」の定義としては、「給与」や「手当」などの名称を問わず、「事業主が労働者に支払ったもの」「労働の対償として支払われたもの」のどちらの要件も兼ね備えているものと定められています。
「労働の対償として支払われたもの」には、労働協約や就業規則などによって事業主に支払いが義務付けられているものを指すため、休業手当も賃金に含まれるのです。
なお、休業手当から、雇用保険・健康保険・厚生年金保険などの労働者負担分の保険料を、社会保険料控除として控除することは問題ありません。
社会保険料控除とは、社会保険料を支払った場合にその支払った金額について所得控除を受けることです。社会保険控除の対象になる代表的な社会保険料には、次のようなものがあります。
- 健康保険の保険料
- 国民年金保険料
- 厚生年金保険料
- 船員保険の保険料
- 国民健康保険の保険料、国民健康保険税
- 後期高齢者医療制度の保険料
- 介護保険料
- 雇用保険の労働保険料
- 国民年金基金や、厚生年金基金の掛金
休業手当と雇用保険料の計算方法
ここでは、休業手当と雇用保険料の計算方法を見ていきましょう。
休業手当の計算方法
労働基準法第26条で、休業手当として「平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定められています。
そのため、休業手当の計算式は次のようになります。
休業手当=平均賃金×60%以上
平均賃金とは、原則として事由の発生した日以前3か月間において、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で除した金額です。
例:会社都合で10/2~10/14までの所定労働日数で10日間休業し、それ以前の3か月の賃金が次の通りである場合
- 7月:31万円
- 8月:31万円
- 9月:30万円
- 平均賃金=(31万円+31万円+30万円)÷92日=1万円
- 休業手当1日分:1万円×60%以上=6,000円以上
- 休業した10日間の休業手当:6,000円以上×10日間=6万円以上
雇用保険料の計算方法
雇用保険料の計算方法は次の通りです。
雇用保険料=賃金総額×保険料率
雇用保険の保険料率は、事業ごとに異なります。
<2022年10月1日~2023年3月31日までの保険料率>
一般の事業 |
13.5/1,000(労働者負担5/1,000、事業主負担8.5/1,000) |
農林水産・清酒製造の事業 |
15.5/1,000(労働者負担6/1,000、事業主負担9.5/1,000) |
建設の事業 |
16.5/1,000(労働者負担6/1,000、事業主負担10.5/1,000) |
例:一般の事業に勤務しているAさんの賃金が30万円だった場合の雇用保険料
- 労働者負担分:30万円×5/1,000=1,500円
- 事業主負担分:30万円×8.5/1,000=2,550円
休業手当と雇用保険料の関係についてのまとめ
休業手当と雇用保険料の関係、計算方法を解説しました。
休業手当は「平均賃金×60%以上」で計算できます。また、雇用保険料は「賃金総額×保険料率」で計算されるため、何が賃金に該当するのかを正しく把握する必要があります。
休業手当は通常の給与と同じ「賃金」の扱いになるため、雇用保険料の対象です。「労働して得た賃金ではないから」という理由で賃金から外さないように注意しましょう。