まだ間に合う! 年末調整・対象になる人や確定申告との違い
毎年末のイベントのようにも感じる、年末調整。
そもそも、会社から求められるから行っているだけで、年末調整とはどのようなものかを理解している会社員はどれくらいいるのでしょうか。
そこで本コラムでは、年末調整とはどういうものか、確定申告とどう違うのか、対象になるのはどのような人か、必要な書類は何かという点について説明します。
年末調整はどうして行われるのか
会社員は給料やボーナスをもらう際に、一定金額の源泉所得税を差し引かれます。この、会社が毎月徴収している源泉所得税。実は、正確なものではありません(※1)。
会社は、支給額などに基づいて、所得税の法律で決められた概算の金額を従業員から徴収して国に納めています。
なぜ、正確な所得税を徴収できないのでしょうか?
それは、年末にならないと正確な所得税がわからないからです。
所得税は、1月1日から12月31日の1年間にもらった給与や賞与の合計から、その合計金額に応じた一定の控除(給与所得控除といいます)、健康保険や厚生年金の支払いによる社会保険料控除、10月から11月にかけて届く生命保険や地震保険などの控除証明書に記載された金額から算出した金額、その他の控除を差し引き、算出された残額に応じた一定の所得税率をかけて計算します。
このようにして正確な所得税を計算すると、通常は、会社が徴収してきた所得税とに差額が発生します。
そのため、年間の出来事が確定する年末に、会社が引いた所得税と正確に計算した所得税の差額を計算し、会社が従業員に対して還付、もしくは徴収を行います。これを年末調整といいます。
確定申告を会社が代行してくれるようなものです。ただし、医療費控除など、一定の控除は年末調整で行えないので注意が必要です。これは後述します。
通常は税金が返ってくる場合のほうが多い
年末調整を行うと、還付になるケースが多いです。つまり、毎月少し多めに徴収されているということです。
逆に、少なめに徴収すると、会社は年末に従業員から徴収することになり、従業員としては気分がいいものではありません。国としても、先に多めに納めてもらったほうが、後から徴収するよりも、課税上の手間が省けます。
会社が差し引く金額は、所得税法において決められています。
(※1)参考:国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」
年末調整と確定申告との違いは何?
年末調整は、会社が給与所得について所得税を確定し、概算で徴収されてきた所得税と、確定した所得税との差額を精算する手続きです。
ところで、会社員であっても不動産を所有している場合や、副業などをしている場合もあります。つまり、給与以外に所得があるケースです。
そのような収入は、年末調整時に会社へ申告はしないため、年末調整で確定した所得税額は、その人が本来納めるべき所得税と異なってしまいます。
したがって、自分で給与所得と他の所得を合算して申告する必要があり、この申告手続きを確定申告といいます。
年末調整の対象になる人とならない人がいるのはなぜ?
年末調整の対象になる人
年末調整の対象となる人は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を、会社が年末調整を行うときまでに提出しており、年末まで勤務している人です。逆に、退職者は対象外となります。
ただし、退職者であっても、次のいずれかに当てはまると、年の途中における年末調整の対象者になります。
- 海外支店等に転勤したことにより非居住者となった人
- 死亡によって退職した人
- 著しい心身の障害のために退職した人(退職した後に再就職し、給与を受け取る見込みのある人は除く)
- 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
- いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職後その年に、他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人は除く)
年末調整の対象にならない人
以下のいずれかに当てはまる人は、扶養控除等申告書を提出し、年末まで勤務していたとしても、年末調整の対象とはなりません。
- 1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人
- 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人
参考:国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」
年末調整に必要な書類の書き方を理解しよう
- ① 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- ② 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- ③ 給与所得者の保険料控除申告書
- ④ 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- ⑤ 各種控除証明書等
上記①から⑤の書類を記入及び収集して、会社から指定された期限までに提出します。以下、①から③までの記入例について記載いたします。
こちらは、実際に弊社より顧問先様にご案内させていただいているものの抜粋です。
①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
【記載方法例】
通常は来年度分を記入します。1月支給の給料に扶養などの情報を反映させるために必要になるからです。
また、通常は、この来年度分の情報が本年度12月31日時点の情報として、年末調整にも反映されます。会社側は、昨年末に記入した本年度分と今回記入された来年度分を比較して、相違点がある場合には本人に確認します。
書式:国税庁「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
【赤/事業主記入箇所】
- ① 事業主、氏名、法人番号及び所在地を記入(ゴム印可)
- ② 令和3年中に入社した従業員がいる場合は、入社日を記入
【青/従業員記入箇所】
- ③ 従業員の氏名、〒番号、住所、生年月日、配偶者の有無等及びマイナンバーの記入
- ④ A…配偶者、B…16歳以上の扶養親族の氏名、続柄、生年月日、所得金額等及びマイナンバーの記入、C…障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生に該当する場合はチェックを入れる
「ひとり親」は 「同一生計の子が有り、事実婚の無い人」 が該当する - ⑤ ④の内、他の親族の扶養親族になっている方の記入
(例)旦那様の扶養控除の対象となっている親族 - ⑥ 16歳未満の扶養親族の記入・・・マイナンバーの記入
- ⑦ 令和4年中に退職手当等を受けた配偶者並びに扶養親族の記入
- ⑧ マイナンバーの提出をされない方は自署を記入(マイナンバーは提出しないといけないが、どうしても提出できない事情などがある場合には、その旨を会社に申告)
②給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
【記載方法例】
【赤/事業主記入箇所】
- ① 事業主 氏名、及び所在地を記入(ゴム印可)
【青/従業員記入箇所】
- ② 従業員の氏名、住所、及び 押印
- ③ 従業員本人の所得金額を計算した後、
→ ③-1 基礎控除の額を記載
→ ③-2 配偶者のいる人で年収1,000万以下の人はA、B、Cのいずれかを記載 - ④ 【配偶者項目】
配偶者の氏名、住所、マイナンバー、生年月日等を記入
※非居住者である配偶者:海外に配偶者がいる場合に「○」
※生計を一にする事実:海外に配偶者がいる場合はその配偶者への送金額
配偶者の所得金額を計算した後(④-1)
→ ④-2 判定にチェックを入れ①~④のいずれかを記載 - ⑤ 【配偶者項目】
③-2と④-2を控除額計算表から控除額を算出し
「配偶者控除」または「配偶者特別控除」のいずれかを記入 - ⑥ 特別障害者、扶養親族がいる場合に記入
※該当する要件にチェックを入れ、複数の要件に該当する場合は「☆扶養親族等」にいずれか一つを記入する
※「★特別障害者に該当する事実」欄には交付を受けている手帳の種類、交付年月日、障害の等級を記載
③給与所得者の保険料控除申告書
【記載方法例】
書式:国税庁「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」
【赤/事業主記入箇所】
- ① 事業主、氏名、及び所在地を記入(ゴム印可)
【青/従業員記入箇所】
- ② 従業員の氏名、住所、及び押印
- ③ 各種保険料控除
保険会社より送付された控除明細票、控除証明書等の原本をクリップ等で留めて添付
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