週休3日制とは? 導入のメリットとデメリット、注意点も紹介
近年、週休3日制が注目を集めています。
1週のうちに休日を3日設定する週休3日制は、上手に活用することでさまざまなメリットを企業にもたらすものです。
しかし、同時にデメリットも想定されるため、ポイントをおさえて導入することが求められます。
今回は、週休3日制の種類や近年注目されている理由、メリット・デメリットなどを解説します。
導入の際の注意点も紹介しているので、週休3日制導入を考えてる際には参考にしてみてください。
週休3日制とは
近年、注目を集めている週休3日制とはどのようなものなのでしょうか。
その定義や種類を紹介します。
週休3日制の基本
週休3日制とは、1週の休日を3日とする制度のことです。
経済財政運営と改革の基本方針2021において、多様な働き方の実現に向けた働き方改革の実践部分で「選択的週休3日制度」が言及され、話題になりました。
週休2日制+祝日休日では年間120日が休日であるのに対し、週休3日制では年間156日が休日になります。
週休3日制の種類は主に3つ
週休3日制には、大きくわけて3つの種類があります。
それぞれの特徴を紹介します。
1.給与減額型
週休3日とすると労働日数が減るので、その分の給与を減額するパターンです。
これを導入しようとする場合には、単純に給与を4/5倍するのではなく、年間の労働日数で考え計算するようにしましょう。
仮に週休3日制+祝日休みとして給与を4/5したのでは、週休2日+祝日休みの従業員より1日あたりの賃金が高くなる可能性があります。
また、週休3日制について「収入が減るなら利用したくない」という回答が約8割だったという調査もあります。
2.総労働時間維持型
労働日数を減らすぶん、1日あたりの労働時間を増やし総労働時間と給与を維持するパターンです。
1日8時間の週5日で計40時間で働いていたとすると、1日10時間で週4日勤務することとなります。
この場合には、1日の法定労働時間である8時間を超えた2時間について割増賃金の支払が必要です。
また、時間外労働は週40時間を超えた分についても判定するため、週の5日目に6時間労働した場合には6時間分の割増賃金が必要となります。
3.給与維持型
生産性の向上・維持を前提として、労働日数・労働時間を減らすものの、給与は維持するパターンです。
先の調査で、この給与維持型であれば利用したいという回答は約8割でした。
ただし、このパターンは年功序列とは対照の成果主義的であることと、一部に適用すると適用外の従業員が不公平に感じやすいため、導入前の検証・検討が特に必要といえるでしょう。
週休3日制が企業に注目される理由とは
近年、週休3日制が企業から注目されている3つの理由を紹介します。
理由1.リモートワークの浸透による業務の効率化
2020年3~5月に初めて在宅勤務を経験した人について、同年12月時点で在宅勤務が継続されていなかった方でも週の労働時間が1時間減少したという調査があります。
参考:JILPTリサーチアイ第57回「在宅勤務によるワークライフバランスの新しい形」
新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、リモートワークをやらざるを得ない状況になったことで、作業の棚卸しや業務分担の見直しが行われ業務の効率化が進み、結果として労働時間の削減に繋がりました。
効率化によって生まれた時間を、学び直しやワークライフバランスの充実に充ててもらうことを目的として、週休3日制を導入する企業が増えたようにも思われます。
理由2.豊富な知識と高い技術を持った労働力の確保
2022年9月時点で、日本の高齢化率(全人口に対し65歳以上の人口が占める割合)は29.1%となっています。
2040年には第2次ベビーブーム世代が65歳を迎え、高齢化率は35.3%になると試算されており、65歳で皆が引退していては労働力が不足することが予想されます。
現に2021年の統計では65歳以上の25.1%が就業しています。
豊富な知識と高い技術を持ちつつも、加齢に伴う体力低下が気になる人材を受け入れる制度として、週休3日制が注目されています。
理由3.政府が「選択的週休3日制」の導入促進
政府は働き方改革の一環として、「選択的週休3日制」の導入を促しています。
経済財政運営と改革の基本方針2022でも、選択的週休3日制について「子育て、介護等での活用、地方兼業での活用が考えられる」としています。
政府としても今後の人口減少による労働力不足を危惧しており、育児や介護で一度離職せざるを得なかった方やリモートワークの普及により副業・兼業の時間ができた方に働いてほしいという強い意図があるのでしょう。
週休3日制の導入によるメリット・デメリット
週休3日制を導入することで得られるメリットや、注意すべきデメリットを紹介します。
週休3日制のメリット3つ
週休3日制を導入することで、以下の3つのメリットが期待できます。
1.優秀な人材の確保
優秀なスキルがありながら、育児・介護の都合や体力面の不安から週5日、フルタイムで働くことを躊躇される人材は、高齢化が進むなかで今後ますます増加することでしょう。
週休3日制とすることで、採用の門戸をそういった方々に向けても広げることができます。また、働き方の多様性を認める企業としてイメージの向上も期待できます。
2.経費削減
給与維持型の事例に日本マイクロソフトがあります。
同社では会議設定のルールを定め、2019年8月に試験的に週休3日制を導入しました。
その結果、印刷枚数58.7%の削減、電力消費量23.1%の削減という成果をあげました。
ただ休みを1日増やすのではなく、時間削減のためのルールを定めることで、週休3日制の実現とともに、副次的に経費削減という結果も生まれた好例です。
参考:「週勤 4 日 & 週休 3 日」を柱とする自社実践プロジェクト「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」の 効果測定結果を公開 - News Center Japan
3.生産性の向上と新規性の創造
週休3日制を導入する場合、増えた休日を余暇としてリフレッシュすることで労働日の生産性向上が期待できます。
また、政府が学び直し(リカレント教育)を促進していることもあり、社会人向けの学び直しツールが普及しています。
休日を学び直しに充てることで業務に新たな発想が生まれるかもしれません。
週休3日制のデメリット3つ
週休3日制を導入することで、発生することが予想されるデメリットを3つ紹介します。
1.ビジネス機会の減少
部署全員の休日を同日とすると、その部署は丸1日機能しなくなってしまいます。
営業や関係会社との連絡が必須な部署では、それは現実的ではありません。
部署全体ではなく個々に別日を休日としたとしても、担当顧客や関係会社にその旨を知らせておかないとビジネスの機会を失うことになりかねません。
2.勤怠管理が複雑化
週休3日制を導入する際には、自社の勤怠管理を見直す必要が出てきます。
勤怠管理システムを利用している場合には、導入当初時に一度設定すれば良いですが、システム利用していない場合は毎月給与計算の度に勤怠集計する際に注意が必要となり、ミスが発生しやすくなります。
また、労働日数が4日以下かつ週労働時間が30時間未満になると、有給休暇が比例付与方式となる点にも注意が必要です。
3.従業員間での不公平感
週休3日制を導入するとして、当初から全体に適用するというケースは少なく、対象従業員を定めて小さくスタートするケースが多いと思います。
この場合、対象従業員とそうでない従業員の間に業務内容・業務量・人事評価について不公平感が生まれる可能性があります。
制度設計の際には、待遇に不合理な差や不公平な部分はないかをよく考え、説明会などを開催して理解を得るようにすると良いでしょう。
企業が週休3日制を導入する際の注意点
週休3日制を実際に企業が導入する際に、気をつけておくべき注意点をまとめました。
1.週休3日制度を明確に定義する
完全な週休3日制では年間156日が休日となりますが、2022年の就労条件総合調査では年間休日日数が130日以上の企業割合は1.0%となっています。
週休3日制はまだ普及しているとは言えず、制度設計も難しいかもしれません。
ただし、労働条件に係ることであり、曖昧な部分を残したまま始めると後から解釈や定義に悩むことになります。
「祝日も休みとするか」「週休3日対象者に夏季休暇などの特別休暇を付与するか」といった細かい部分も確認し、自社の週休3日制度の定義を完成させてから制度導入しましょう。
2.対象従業員の範囲を定める
週休3日制度は法で定められた制度ではないので、導入する際は企業が自社の制度設計をする必要があります。
対象とする従業員の範囲も決めなければなりません。
また、対象従業員とそうでない従業員とで人事評価の方法や基準など変更した方が良い部分はないか検討しましょう。
3.兼業・副業の可否を示す
週休3日となることで、余暇を過ごす人もいれば「副業を始めたい」と考える従業員がいても不思議はありません。
副業・兼業の可否と、可とするのであれば手続やそれに必要な様式、禁止事項を定めましょう。
厚生労働省が公開している「副業・兼業の促進に関するガイドライン」や、モデル就業規則を参考にして決定すると良いでしょう。
週休3日制に関するまとめ
新型コロナウイルス感染拡大を受けてのリモートワーク浸透に伴い、週休3日制が注目を集めています。
週における休日が1日増える週休3日制は、上手に活用すれば人材確保や経費削減など、さまざまなメリットを企業にもたらします。
しかし、同時にデメリットも想定されるため、導入の際には慎重に検討する必要があるでしょう。
ここで紹介した注意点をしっかりおさえて、週休3日制導入によりさらなる成長をめざしましょう。
【書式のテンプレートをお探しなら】