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年末調整の計算方法とは? 具体例を交えて徹底解説

監修者:西岡社会保険労務士事務所 代表  西岡 秀泰

年末調整の計算方法とは? 具体例を交えて徹底解説

年末調整をおこなうにあたって、「年末調整の計算方法は複雑で分かりにくい」「どのような控除が適用されるのだろう」といった悩みを抱く方もいるでしょう。

本記事では、年末調整の手順について、計算例も交えながら紹介していきます。

これから年末調整をおこなう方は参考にしてください。


年末調整の計算方法

年末調整をおこなう際の計算方法は以下のとおりです。

  1. 給与支給額・社会保険料・源泉徴収税額を計算する
  2. 年間給与額から控除額を差し引く
  3. 所得税率を掛ける
  4. 住宅ローン控除額を差し引く
  5. 年調年税額を算出し源泉徴収税額と比較する

順に見ていきましょう。

1.給与総額・給与から天引した社会保険料・源泉徴収額を計算する

まずは源泉徴収簿に、「給与総額」「給与から天引した社会保険料」「源泉徴収額」の3項目を記載していきます。

給与支払額は、各月の給与・手当等と、その合計金額を源泉徴収簿に記載します。賞与等がある場合はその金額も記載しましょう。

そして、給与や賞与から天引きされる社会保険料を記載します。源泉徴収額は、年末調整までに支払った税額です。

2.年間給与額から控除額を差し引く

次に、年間給与額から控除額を差し引きます。

控除には、給与所得控除と所得控除の2種類があります。

給与所得控除額

給与所得控除とは、会社から受け取った給与に適用される控除です。年間給与額から、給与所得控除を差し引いたものが「給与所得」です。

給与所得控除は、その年の年収によって、下図のように異なります。

給与等の収入金額

(給与所得の源泉徴収票の支払金額)

給与所得控除額

1,625,000円まで

550,000円

1,625,001円から1,800,000円まで

収入金額×40%+100,000円

1,800,001円から3,600,000円まで

収入金額×30%+80,000円

3,600,001円から6,600,000円まで

収入金額×20%+440,000円

6,600,001円から8,500,000円まで

収入金額×10%+110,000円

8,500,001円以上

1,950,000円(上限)

出典:No.1410 給与所得控除|国税庁

所得控除額

給与所得以外に所得がある場合、その他所得との合算金額から各種の所得控除を差し引いて所得税額を計算します。

所得控除では、納税者の家族構成などさまざまな事情を鑑み、所得からさらに控除を受けられます。給与所得(またはその他所得との合算)から所得控除額を差し引いた金額が「課税所得額」となります。

年末調整の対象になる主な所得控除には、下図のようなものがあります。

控除名

控除額

主な適用要件

基礎控除

48万円

全員に適用

配偶者控除

~38万円(控除を受ける本人の所得によって変動)

・配偶者の合計所得金額が48万円以下

・本人所得1,000万円以下

配偶者特別控除

~38万円(控除を受ける本人と配偶者の所得によって変動)

・配偶者の合計所得が48万円以上かつ133万円以下

・本人所得1,000万円以下

扶養控除

38~63万円

扶養親族がいる

生命保険控除

~12万円

生命保険料を支払った

地震保険控除

~5万円

地震保険料を支払った

社会保険控除

該当の社会保険料全額

社会保険料を支払った

小規模企業共済等掛金控除

該当の掛け金全額

小規模企業共済や確定拠出年金の掛け金を支払った

障害者控除

27~75万円

納税者自身、控除対象の配偶者、扶養親族の中に障がい者がいる

寡婦控除

27万円

納税者自身が寡婦である

勤労学生控除

27万円

納税者自身が学生

2023年度分の年末調整では、扶養控除の対象となる 「国外居住親族」の範囲が変更されているので注意しましょう。

従来は16歳以上が対象でしたが、2023年度分からは30歳以上70歳未満の国外居住親族については、次のいずれかに該当する場合に限定されます。

  • 留学により国内に住所及び居所を有しなくなった
  • 障害者
  • 居住者から生活費又は教育費に充てるための支払をその年38万円以上受けている

また、2023年度分の「給与所得者のの扶養控除等申告書」も変更されています。

住民税の所得控除計算に必要な「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄が追加されているので、該当する従業員には忘れずに記入してもらいましょう。

3.所得税率を掛ける

次に、課税所得金額に所得税率を掛けて所得税の計算を行います。

所得税率は課税所得によって7段階に分けられ、課税所得の額が多いほど高くなります。

実際に所得税を計算するときは、次の速算表を使用します。計算方法は「(課税所得金額✕税率)-控除額」です。

課税所得金額

税率

控除額

~1,950,000円

5%

0円

1,950,001円~3,300,000円

10%

97,500円

3,300,001円~6,950,000円

20%

427,500円

6,950,001円~9,000,000円

23%

636,000円

9,000,001円~18,000,000円

33%

1,536,000円

18,000,000円~18,050,000円

40%

2,796,000円

出典:令和4年分の年末調整のための算出所得税額の速算表

所得税率は最大45%(課税所得40,00,000円以上)ですが、課税給与所得金額が18,050,000円を上回る場合は、年末調整の対象外となり、確定申告をおこなう必要があります。

4.住宅ローン控除額を差し引く

上記で計算した税額から、住宅ローン控除額を差し引きます。

住宅ローン控除の金額は、住宅の種類や入居した時期によって異なりますが、2022年1月1日以降入居の場合最大で毎年35万円の控除を受けられます。

2022年度税制改正により、住宅ローン控除の対象や控除率、控除期間が変更になっているので注意しましょう。

改正前に入居した人の控除率は住宅ローン等の年末残高の1%、改正後入居者は0.7%です。

ただし、住宅ローン控除を受けるためには、住宅借入金等特別控除申告書などの提出が必要です。

また、住宅ローン控除を受ける最初の年には、納税者自身が確定申告を行わなければなりません。ここまでの手順で求められた金額が「年末調整後の所得税額」です。

5.年調年税額を算出し源泉徴収税額と比較する

年調所得税額に、復興特別所得税として102.1%を乗じた額が「年調年税額」となります。

年調年税額を計算したら、最初に集計した源泉徴収額と比較してください。源泉徴収額が年調年税額よりも大きかった場合は、税金を納めすぎているため、差額が還付されます。

逆に源泉徴収額が年調年税額よりも少ない場合は、納税額が足りないため、差額を納めなければなりません。


年末調整の計算例

ここからは、年末調整の計算例として、2つのケースを紹介していきます。

配偶者(収入なし)+15歳の子ども(収入なし)

こちらの例では、以下の条件で年末調整の計算を行います。

給与支給額:5,000,000円

配偶者(収入):あり(収入なし)

子ども:1人(16歳・収入なし)

住宅ローン:なし

計算は以下のとおりです。

給与支給額:5,000,000円

給与所得控除額:1,440,000円(給与支給額の20%+440,000円)

所得額:3,560,000円(給与支給額-給与所得控除額)

課税所得額:2,320,000円(所得額-基礎控除480,000円-配偶者控除380,000円-扶養控除380,000円)

年調所得税額:134,500円({課税所得額×税率10%}-控除額97,500円)

年調年税額:137,300円(年調所得税額×102.1%、100円未満切り捨て)

よって、このケースでは、137,300円が年調年税額となります。

配偶者(収入あり)+8歳の子ども1人(収入なし)+20歳の子ども(収入なし)

こちらの例では、以下の条件で(その他の所得控除なし)年末調整の計算を行います。

給与支給額:5,000,000円

配偶者(収入):あり(収入:給与支給額1,000,000円)

子ども(人数/収入):2人(20歳・収入なし、16歳・収入なし)

住宅ローン:なし

給与支給額:5,000,000円

給与所得控除額:1,440,000円(給与支給額の20%+440,000円)

所得額:3,560,000円(給与支給額-給与所得控除額)

課税所得額:1,690,000円(所得額-基礎控除480,000円-配偶者控除380,000円-(扶養親族380,000)-(特定扶養親族630,000円)))

年調所得税額:84,500円({課税所得額×税率5%}-控除額0円)

年調年税額:86,200円(年調所得税額×102.1%、100円未満切り捨て)

特定扶養親族とは、16~22歳の扶養親族のことです。

よって、このケースでは86,200円が年調年税額となります。


年末調整の計算における注意点

年末調整の計算における主な注意点(よくあるミス)は次の通りです。

1.計算上の端数処理

所得税法では金額の端数処理方法が決まっています。給与所得者の税額を計算するときの端数処理は次の通りです。

  • 給与所得控除の給与所得額:1円未満は切り捨て
  • 所得控除の額:1円未満は切り上げ
  • 課税所得の額:1,000円未満は切り捨て
  • 所得税の額:100円未満は切り捨て

2.配偶者控除や扶養者控除の対象者

配偶者控除や扶養者控除の対象者は、年末調整する年の12月31日時点で判定します。

年末調整で扶養控除等申告書の提出後でも、年内に家族状況が変わったら正しく反映させるよう注意しましょう。

また、配偶者や扶養家族に該当するかどうかは、収入ではなく所得で判断します。

給与収入が103万円ならば給与所得控除(55万円)後の48万円が所得です。

3.対象となる給与

年末調整の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までに支払われた給与です。

前年12月未払い分が1月に支払われた場合、前年度に支払うべき給与であるため年末調整の対象にはなりません。

4.中途採用した人の年末調整

中途採用した人については、前職で支払われた給与を含めて年末調整しなければなりません。

前職で発行された源泉徴収票を取り付け、支払われた給与や源泉徴収された所得税・社会保険料などを含めて計算します。


年末調整の計算方法のまとめ

年末調整の計算方法について、計算例も交えて紹介しました。

年末調整とは、源泉徴収された税金と、本来支払うべき税金の額を一致させるための手続きです。

適用される控除によっては複雑になりがちですが、しっかりと計算をおこない、適切で損をしない納税を心がけましょう。


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監修者プロフィール

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西岡 秀泰

西岡社会保険労務士事務所 代表

生命保険会社に25年勤務し、FPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。
2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
得意分野は、人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金など。

【保有資格】社会保険労務士/2級FP技能士

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