未成工事支出金とは? 勘定科目や仕訳例、会計処理時の注意点について
未成工事支出金は建設業界の特有な会計概念で、まだ完成していない工事に投入された費用や支出を一時的に計上するための勘定科目です。一般的な会計処理にはない勘定科目ですので、建設会社に勤める人は正しい処理方法を知る必要があります。
この記事では、建設会社の社員に向けて、未成工事支出金の概念や仕訳例を解説します。また、この記事の後半部分では、未成工事支出金を処理する際の具体的な注意点を解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
未成工事支出金とは?
未成工事支出金は、建設業に特有な会計概念で、まだ完成していない工事に投入された費用や支出を一時的に計上するための勘定科目です。一般的な簿記でいう「仕掛品」に相当し、未成工事支出金は未完成の作業に対する投資として扱われます。
未成工事支出金に含まれる勘定科目や、未成工事支出金の必要性を見ていきましょう。
未成工事支出金に含まれる勘定科目
未成工事支出金に含まれる要素には、次の2種類があります。
- 直接原価:材料費や労務費など、特定の工事に関連する直接的な費用
- 間接原価:工事全体の管理費や仮設設備費など、直接的な費用
どちらの原価も工事が未完成の間に計上され、工事が完成した時点で費用として計上されるように振り替えられます。
未成工事支出金の必要性
建設現場では、工事期間が年度を超えるケースが多いため、各年度の終わりに工事が完了していない場合、その時点で支出された費用をどのように扱うかが問題になります。
会計処理上は、販売収益とそれに対応する費用は、原則として同時期に計上しなければなりらないためです。未成工事支出金という勘定科目を使えば、費用を計上するまでの間、集計できます。
また、工事中の建物の所有権が建設会社にあるため、未成工事支出金は会社の資産であり、棚卸資産として扱うのが特徴です。
未成工事支出金の仕訳例
未成工事支出金の具体的な仕訳方法を見ていきましょう。5億円の契約金額のうち、1億円を手付金として受領した場合、仕訳方法は次の通りです。
現金預金 |
100,000,000円 |
未成工事受入金 |
100,000,000円 |
なお、ここで用いた数値は一例であり、実際の会計処理では、工事の規模や進行度に応じて未成工事支出金の額が変動します。また、仕訳の際には税務上の規定や、企業の会計ポリシーを考慮する必要があります。
未成工事支出金の会計処理における注意点
未成工事支出金の会計処理における注意点を紹介します。
計上のタイミング
原材料の購入や外部からの工事費など、工事に関連した費用が行われた日に損金として算入するのではなく、未成工事支出金で経理します。そして、工事完成した建物が引き渡された時点で初めて費用として計上します。
未成工事支出金の主な目的が、収益と費用を会計的に対応させることですので、未完の工事に関連した外注費などの費用を、事前に計上できませんので注意しましょう。
掛けで仕入れた場合
工事が完成し、目的物が引き渡された時点で、直接原価などの費用を計上します。
掛けで仕入れた場合、原則的には仕入れた原材料や受けた役務の対価は、それぞれの取引ごとに資産の引き渡しを受けた日や、下請け先が役務を提供した日に消費税の計算上課税仕入とされます。
つまり、資産の引渡し日や役務提供の完了日が、課税の起算点になります。未成工事支出金から費用に振り替える際は、課税仕入として処理しないよう注意しましょう。
未成工事支出金についてのまとめ
未成工事支出金は建設業界のみで使用される独自の勘定科目です。一般的な会計に存在しないため、建設業界の人は正しい処理方法を学ばなければなりません。
この記事を参考にしながら、未成工事支出金を処理する際に間違いのないようにしましょう。
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