注文書とは? その必要性と書き方、下請法の対象となる4つの取引
注文書は商品やサービスを要求する時に作成する文書で、発注者が作成し提出します。主に企業同士で取引する際に使用され、取引時のトラブルを未然に防止する役割があります。
この記事では、注文書を扱うことの多い総務部の社員に向けて、注文書の基礎知識や発注書などとの違いをわかりやすくまとめました。また、この記事の後半部分では、注文書にかかわる下請法を詳しく解説しましたので、ぜひ最後までご覧ください。
注文書とは
注文書は、商品やサービスを要求する時に作成する文書のことで、発注者が作成し受注者に提出します。注文書には、求める商品やサービスの詳細な内容や金額、数量、納品日などが記述されます。
注文書の必要性と発注書や契約書、見積書との違いを見ていきましょう。
注文書の必要性
企業同士の取引の大半は、発注者と受注者の合意によって成立しますので、書面を介さず口頭のみのやり取りでも構いません。しかし、口頭約束だった場合、認識の違いや思い違いなどによって、トラブルに発展する可能性があるでしょう。
将来のトラブルを回避するためにも、契約を確実にする注文書を作成し、書面に取引の内容を残す方法を取るのです。
発注書・契約書・見積書との違い
発注書と契約書、見積書の違いを見ていきましょう。
- 発注書:商品やサービスを注文する購入者が発行する書類で、法的には注文書と同じような役割がある。
- 契約書:双方が何らかの約束事に同意し、その約束を結んだことを証明するための書類。
- 見積書:商品やサービスの販売者が、購入希望者に対して価格や内容、数量、支払い条件などを事前に提示する書類。あくまで参考資料であって、実際の取引には契約や発注が必要。
注文書に関する基本知識
記載事項や収入印紙の必要性など、注文書に関する基本知識をまとめました。
記載事項
注文書において、一般的に必要な記載事項をまとめました。
タイトルと企業の情報
まずは書類に「注文書」か「発注書」と記載しましょう。次に、注文者(発注元)と取引先(発注先)の情報を詳細に記載してください。
例えば、次のような項目が企業情報に該当します。
- 各企業名
- 担当者名
- 住所
- 電話番号
注文書の発行日と管理番号
双方が合意した納期の設定や、発注元の会計処理などにも必要になりますので、注文書の発行日や管理番号は必ず記載しましょう。それぞれの項目を詳細に記載し、注文内容を明確にすることで、スムーズな取引ができます。
取引の具体的な内容
次の内容を含めたうえで、購入する製品やサービスの具体例な内容を記載しましょう。
- 商品名
- サイズ
- 数量
- 提供方法
商品やサービスが複数ある場合には、それぞれの項目を分けて具体的に説明してください。
取引金額と納期
取引の全体金額は、次の内容に分けて書きましょう。
- 注文に該当する商品の小計金額
- 税抜きの合計金額
- 消費税額
- 税込みの合計金額
発注者と受注者の双方で合意がなされた納期や納品方法、支払い条件を明確に記載するとよいでしょう。多発しやすい入金トラブルによる取引の誤解や混乱を未然に避けるためです。
詳しい納品方法と支払い条件は次の章で解説します。
納品方法と納入場所
発注者が何を、どのように、そしてどこで受け取るかなど、詳しい納品方法を書きましょう。物理的な商品は配達や直接のピックアップなのに対し、デジタル商品はダウンロードや、メールの添付などが考えられます。
納入場所は商品を配達する具体的な場所を、デジタル商品の場合はダウンロードリンクまたは添付ファイルを送信するメールアドレスを指します。
支払い方法と支払い期限
支払い方法には、可能な限り多くの選択肢を提供することが望ましいでしょう。
- 銀行振り込み
- クレジットカード
- デビットカード
- 電子マネー
- 仮想通貨
そして、それぞれの支払い方法の具体的な手順を明記し、支払い期限を明確化しましょう。支払いの遅延などの入金トラブルを防ぐためです。
収入印紙
一般的には、注文書は具体的な商品やサービスの提供を依頼する文書ですので、注文書に収入印紙を貼る必要は必要ありません。印紙税は主に契約書など、課税文書に対して適用されるためです。
しかし、発注書に記載されているのが「税込のみ」の場合や、特定の契約形態に該当する場合などでは、収入印紙を貼る必要が生じる可能性がありますので、必要に応じて専門家に頼ると良いでしょう。
保管期間
注文書は帳簿文書に該当するため、法人が注文書を保存する期間は7年間です。帳簿文書とは取引を記録した帳簿と文書のことです。
なお、平成30年の4月1日以降に発生した欠損金は、帳簿文書の保存期間が10年に拡大されています。したがって、すべての帳簿文書を10年間保存すれば安心でしょう。一方、青色申告や白色申告の個人事業主は、注文書を5年間保管しなければなりません。
(出典:国税庁 帳簿書類等の保存期間)
(出典:国税庁 記帳や帳簿等保存・青色申告)
発送方法
注文書の発送方法には特定の制約がないため、送信者と受信者の間で発送方法が決定されます。次のような手段で注文書を送るのが一般的ですので、早い段階で取引先の企業に対して、どのように注文書を送るのか確認しましょう。
- 電子メール
- FAX
- 郵送
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下請法の対象となる注文書
注文書は下請代金支払遅延等防止法の対象になる取引に必要で、発注者には下請法に基づいた、発注義務があります。下請法の対象になる取引の具体例や、記載が義務化されている項目を見ていきましょう。
対象となる取引
下請法の対象になりうる取引は次の通りです。
- 製造委託:物品販売事業の事業に対して、物品や半製品、付属品などの製造を他の事業者に委託すること
- 情報成果物作成委託:事業者が情報成果物を提供する業務の場合、その情報成果物の作成行為のすべて、もしくは一部の作業を他の事業者に委託すること
- 役務提供委託(サービス提供委託):事業者が事業で行う顧客へのサービス提供のすべて、もしくは一部を他の事業者に委託すること
- 修理委託:事業者が事業で行う修理業務のすべて、もしくは一部を他の事業者に委託すること
製造委託や情報成果物作成委託、役務提供委託、修理委託のうち、次の資本金の要条件に該当する場合に下請法の対象になります。
1.物品の製造・修理、情報成果物作成(プログラムの作成に関連する取引)
- 役務提供(運送、物品の倉庫における保管及び情報処理にかかわる取引)を委託
- 資本金3億円超の法人が、資本金3億円以下の法人か個人事業者へ委託
- 資本金1,000万円超~3億円以下の法人が、資本金1,000万円以下の法人か個人事業者へ委託
2.プログラム作成以外の情報成果物作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理にかかわる取引以外の役務提供を委託
- 資本金5,000万円超の法人が、資本金5,000万円以下の法人か個人事業者に委託
- 資本金1,000万円超~5,000万円以下の法人が、資本金1,000万円以下の法人か個人事業者に委託
(出典:公正取引委員会 ポイント解説 下請法)
記載が義務化されている項目
下請法で記載の義務化がなされている項目を解説します。
書面の交付
下請法では、親事業者に対して、下請事業者への書面(3条書面)の交付が義務付けられています。3条書面には、必要な記載事項が明記されており、それにより、具体的な発注内容が伝えられます。
(出典: 下請代金支払遅延等防止法 第3条)
支払期日の決定
物品の受領日、または役務が提供された日から数えて60日以内に下請代金を支払わなければなりません。もし発注書が支払期日までに下請代金を払わなかった場合、次の条件に基づいた遅延利息が課されます。
- 未払金額に対する年率14.6% × 物品などの受領日後60日経った日から支払日の期間までの日数
書類の作成・保存
取引の内容を記録した書類の作成と保存は発注した側の義務です。この書類は5条書類と呼ばれており、2年間保存する必要があります。取引の透明性を確保し、問題が生じた際に証拠として利用できるようにするためです。
(出典:公正取引委員会 親事業者の義務)
注文書についてのまとめ
注文書は企業の取引において、商品やサービスを売買した内容が詳しく書かれた書類です。下請法に該当する取引では注文書の発行が義務化されており、適切に作成し保管しなければなりません。
注文書を扱う人はぜひこの記事を参考にしながら、注文書の正しい扱い方を身につけましょう。
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