特別清算とは? 破産との違いや手続きの流れ、メリット・デメリットまで解説
特別清算とは、会社が経済的に大きな損失が生じ、負債が資産を上回った会社が解散する際の手続きです。通常の清算手続きや破産と違いがありますので、十分に理解したうえで特別清算しなければなりません。
この記事では、自社の経営難に悩む経営層に向けて、特別清算の概要やメリット、デメリットを解説します。
また、この記事の後半部分では、特別清算のスケジュールや必要な費用をまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
特別清算とは
特別清算とは、経済的な困難に見舞われ、負債が資産を上回る会社が解散する際に行う手続きです。特別清算は、裁判所の監督下において作業を進めます。
なお、売却した資産の収益で抱えた負債をすべて返せる場合には、普通の清算手続きを行います。
特別清算の要件や種類を見ていきましょう。
要件
特別清算する要件は、主に4つです。
- 対象は株式会社であること
- 債権者の半数以上、および債権総額の3分の2以上に応じる債権者が特別清算に同意していること
- 税金や社会保険料などを支払ったあとでも、債権者に対して未払いの債権の一部を返済できるだけの資産を保持していること
- 清算する会社と債権者の間で債権額の合意に達していること
なお、会社の債務に関して代表取締役が連帯保証人となっている場合、特別清算を行うと、会社の負債は当該社長に請求されます。
したがって、社長は自己破産などの個人的な債務整理をするのが一般的です。
種類
特別清算には2種類あります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
- 協定型
- 個別和解型
協定型
協定型は債権者と会議を開き、返済の金額や方法(協定案)を話し合う方式です。
この話し合いでは、出席した債権者の半数以上、かつ全債権額の3分の2以上の債権者が協定案に同意しなければなりません。
同意を得られたら、会社法で決められた裁判所からの認可を受けて、清算します。なお、特別清算は一般的に協定型をとります。
(出典:会社法 第569条)
個別和解型
個別和解型とは、会社が各債権者と個別に話し合って和解する方式です。会社法に基づき、得られた和解案を裁判所から許可を受けたあと、和解で決めた返済額と方法に従って清算を進めます。
会社法が個別和解型を直接的に明記していませんが、実際の現場では個別和解型が用いられることもあります。
(出典:会社法 第535条1項)
特別清算と破産の違い
特別清算と破産は、どちらも事業を終了し法人格を消滅させる手続という点で共通しますが、いくつか違いがあります。
1.申立人
まず、申立人の違いを見ていきましょう。
- 特別清算:債権者と清算人、監査役、株主です。(会社法 第511条)
- 法人破産:債権者と清算人、債務者、取締役です。(破産法 第19条1項、2項)
2.同意の必要性
特別清算を始めるためには、株主総会で会社の解散を決議したうえ、清算人を選びます。投票権を持つ株主の半数以上が出席し、出席した株主の投票権の3分の2以上が賛成しなければなりません。
さらに、債権者への返済に協定または和解をするため、債権者からの同意も求めます。これに対し、破産の場合は、申し立てを行う人だけで手続を進行でき、株主や債権者の同意は不要です。
(出典:会社法309条2項11号)
3.権利
特別清算の際、会社の資産管理方法や処分の権限は、株主総会で選ばれた清算人にあります。一方、破産の場合、処分などの権限は裁判所が選んだ破産管理人にあります。
また、特別清算では破産に存在する否認権がありません。否認権とは、ある特定の債権者への優先的な返済や会社の資産を不当に減らす行為があった場合、その行為によって失われた財産を取り戻せる制度です。
つまり、特別清算の前に私的整理を行ったとしても、その内容が否認の対象にならないため、特別清算と私的整理が一緒に利用されることがあります。
特別清算を選択するメリット
特別清算するメリットをまとめました。
- 手続きがスムーズ
- 費用が抑えられる
- 清算人を選定できる
- レピュテーションリスクを抑えられる
ぜひ参考にしてください。
手続きがスムーズ
特別清算は、破産手続きよりも迅速で簡易的な手続きで済むことがある点は、大きなメリットでしょう。
また、債権者からの同意を得られれば、破産よりも短期間で手続きを進められるため、スピーディーに作業が進みます。
さらに、特別清算の手続きの柔軟性から、債権者からの賛同を得やすい方法で作業を進められます。
費用が抑えられる
特別清算は破産よりも、裁判所に支払う費用が比較的少なく、経済的な利点があります。特別清算は状況にもよりますが、数万円程度で済むケースもあります。
破産手続きや特別清算では、裁判所に手続き費用として前もって納める予納金が必要ですが、破産手続きの場合、金額は数十万円から数百万円に達することもあるでしょう。
清算人を選定できる
特別清算では、会社自身が清算人を選任できますので、経営者自身が会社の解散手続きを行ったり、信頼のおける弁護士に依頼できます。
一方、破産手続きでは、会社が知らない弁護士が破産管財人になるため、手続きの正確さや報酬面の不安要素が残ります。
レピュテーションリスクを抑えられる
破産手続を選ぶと、世間にその会社が倒産した、とのマイナスイメージを持たれることがあります。
一方で特別清算は「清算」という名前が入っていることもあり、倒産したとのイメージを持たれにくいといえます。
したがって、清算対象の会社、または当該会社の関係会社のレピュテーションを破産手続きよりも保ちやすいでしょう。
特別清算を選択するデメリット
特別清算を適用できるケースが少ない点はデメリットに感じるでしょう。
例えば、株式会社であり、株主総会で解散が決定される場合でなければ特別清算できません。その決議を行うためには、議決権を持つ株主の半数以上が出席し、かつ3分の2以上の賛成票が必要です。
また、債権者集会において、出席する債権者の半数以上、かつ債権の総額の3分の2以上を持つ者の同意が必要です。これらの条件を満たすためには、経営者だけでなく多くの関係者の合意が必要となるため、特別清算できるケースは限られているでしょう。
【流れ】特別清算手続きのスケジュール
特別清算の手続きのスケジュールをまとめました。
1.会社解散の決議
株主総会で解散決議を行い、議決権のある株主の全体の過半数が出席しており、議決権数の3分の2以上が賛成していなければなりません。
2.清算人を選任と選出
清算事務をする清算人には、弁護士を選ぶと良いでしょう。代表取締役になるケースもありますが、法的な問題に強い専門家を選ぶのが適任です。
また、清算人は、つぎの業務を担当します。
- 株式会社における賃借対照表と財産目録を作成
- 株式総会で承認してもらう
- 官報へ債権届出することを公告
- 特別清算手続きを行った事実などを、債権者に個別で催告
3.特別清算の申立
裁判所に対して、特別清算を申立ましょう。次のうち1つの条件が当てはまれば、特別精算開始命令が発出されます。
- 精算する際に支障が生じる理由
- 債務超過の疑い
なお、特別清算開始命令が発出されると、会社が保有する財産の保全処分などの効力はなくなります。
4.協定案を作成
清算人はケースバイケースで協定案を作りましょう。債務超過になった株式会社において、債務の一部か全額が免除されたあとに、残額を弁済してください。
弁済には協定を使ったやり方と和解の2種類があります。
協定を使った弁済は清算人が次の内容を記した協定案を作り、裁判所へ届け出ます。
- 免除額
- 弁済期限
- 返済金額
免除額や弁済期限は、債権者間で協議し決めなければなりません。
5.債権者集会の開催
協定案を届けでしたあとは、債権者集会を開きます。この際、必ず裁判所から承認を得ていなければなりません。
協定が承認される条件は、債権者の過半数が出席しており、かつ合計額3分の2以上の議決権を保持した人から賛同されたときのみです。
なお、和解は裁判所から承認を得た状態で、個別に債権者と和解します。
6.特別清算終結登記
協定や和解の内容をもとに、債権者に対する弁済が済むと特別清算は完了し、裁判所側が特別清算終結登記し、貴社が消滅します。
ただし、債権者側から同意されなかった際は、特別清算の手続きが終わり、法人破産になります。
会社の解散後、会社が負債を負っている先である債権者で、会社が把握している先は個別に、特別清算手続きを行ったこと等について債権者に個別に催告をする必要があります。
(出典:特例有限会社清算結了登記申請書 法務局)
特別清算に必要な費用
特別清算に必要な費用をまとめました。ぜひ参考にしてください。
申立費用
特別清算の申立費用は、2万円(申立手数料)の印紙代が必要です。
予納金(裁判所)
裁判所に支払う手数料の予納金は、裁判所によって異なります。
例えば、東京地方裁判の場合、協定型は5万円で、和解型は9,632円です。また、債権者に前もって同意を得られているかどうかで、対応が異なります。
- 同意されている:特別清算の手続きが終わると予測されるため、予納金は低額
- 同意されていない:破産予納金相当額の費用が必要
報酬(清算人)
裁判所が前もって決めた報酬額を清算人に支払うケースもあるでしょう。支払うタイミングは特別清算手続きが終わるときです。
清算人の仕事内容に応じて報酬額が決められますが、破産管財人よりも低い報酬額が一般的です。
弁護士費用
特別清算の申立を弁護士へ依頼するときは、依頼費用が生じます。弁護士への依頼費用は、任せる弁護士によって異なります。
明確な相場はありませんが、申立費用の場合については、規模により報酬額は数百万円になることもあります。
弁済(債権者)
和解や協定で決定した金額を、債権者に対する弁済額とします。特別清算の手続きにおいては会社の財産を換算したうえで、債権者に弁済するためです。
給与等(従業員)
従業員などの債権者には、労働債権や公租公課を最優先で支払いましょう。
特別清算についてのまとめ
特別清算は負債が資産を上回った株式会社が利用する手続きの一種です。簡易的でスピーディーに作業を進められる反面、債権者から過半数の賛同を得なければなりません。
特別清算の利点や欠点を十分に知ったうえで、自社に最適な方法を選ぶようにしてください。
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