包括利益とは? 当期純利益との違いや表示のメリット・計算書について解説
包括利益とは、企業の資産を示す表記方法の一つです。国際会計基準に採用されている方法で、日本においても平成23年3月31日以後に終了する会計年度から、適用連結財務諸表への記載が必要になりました。
この記事では、包括利益の定義や求め方、計算書の種類について解説します。包括利益について正しく理解し、企業の財務管理にお役立てください。
包括利益とは?
包括利益とは、企業の純資産の増減分を含んだ利益のことです。より具体的に説明すると、貸借対照表の「純資産の部」の、期首残高と期末残高の差が包括利益です。
計算式で表すと次のようになります。
包括利益 = 当期純利益 + その他の包括利益
貸借対照表における純資産を、当期純利益と「その他の包括利益」に分けることで、企業の財務状況が、より的確に把握できます。
当期純利益との違い
当期純利益とは、1会計期間において、企業が本業もしくはそれに付随する営業活動から生み出した価値の増減分です。売上から費用や税金を除いた分が当期純利益となり、その期に利益が確定します。
「その他の包括利益」の定義
「その他の包括利益」とは、包括利益のうち、当期純利益に含まれない部分のことです。当期純利益は、企業の営業活動によってもたらされた利益であり、「その他の包括利益」は、それ以外の利益になります。
「その他の包括利益」の例は、次の通りです。
- 保有する土地の含み損
- その他有価証券評価差額金(株式取得時の額と現在の評価額の差額)
- 繰延ヘッジ損益(先物取引やオプション取引で発生する評価差額の勘定科目)
- 為替換算調整勘定(海外子会社の財務諸表を円換算した差額の勘定科目)
- 退職給付に係る調整額(退職金の増加額を負債として計上するもの)
このように、企業の営業活動に関係なく変動する土地の価値や株価、為替、金利などの差額が、「その他の包括利益」になります。
「その他の包括利益」は、その特性上、当期に利益が確定しないという特徴があります。
包括利益の目的とメリット
包括利益は平成23年以降、連結財務諸表への記載が必要になりました。ここでは、包括利益を導入する目的とメリットについて紹介します。
包括利益を導入する目的
国際財務報告基準(IFRS)と米国会計基準では、平成9年に包括利益を表示することが定められました。日本においても国際財務報告基準を導入する企業が増加し、国際基準と整合性を取ることを目的として、平成23年以降、包括利益を連結財務諸表へ記載することになった背景があります。
企業のメリット
会計基準は国によって異なりますが、包括利益を記載することで、企業の財務状況を国際的な企業と容易に比較できるようになりました。
また、土地の価値や株価、為替、金利といった、企業の営業活動とは関係のない市場変動の要素を当期純利益と区分し、それが企業の財務状況にどのような影響を与えるかがわかりやすくなります。
それにより、株主など外部の関係者が企業の活動状況を的確に把握することが可能です。
包括利益の表示方法
包括利益の表示方法には「1計算書方式」と「2計算書方式」があり、企業はこのどちらかを選ぶことになります。
2計算書方式
2計算書方式とは、当期純利益を「損益計算書」、包括利益を「包括利益計算書」の2つにそれぞれ分けて表記する方法です。
次の理由から、多くの企業がこの2計算書方式を採用しています。
- 経営者にとって本業の利益を表す当期純利益は重要な経営指標である
- 決算開示義務がある企業では損益計算書を必ず作成しなければならない
1計算書方式
1計算書方式とは、当期純利益と包括利益をまとめて「損益及び包括利益計算書」に表示する方法です。
作成する書類が1枚になりますが、いずれにしても損益計算書の作成は必要になるため、作業の効率化にはつながりません。
包括利益についてのまとめ
企業の資産を当期純利益と包括利益に分けることで、土地の価値や株価といった市場変動の影響を受ける資産を、本業による利益と切り離して把握することが可能になります。
この考え方は、主に国際会計基準を適用している会社で用いられていますが、今後さらに広まっていく可能性もあります。この機会に理解を深めておきましょう。
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