前渡金とは? パターン別の仕訳方法から会計処理時の注意点まで徹底解説
前渡金の仕訳方法や処理に悩んでいませんか?例えば、前払費用や仮払金と混同してしまい、正確な仕訳ができていない方もいるかもしれません。
本記事では、前渡金の基本的な意味から、パターン別の仕訳方法、混同しやすい勘定項目との違い、さらに実務での注意点までを詳しく解説します。
初心者にも分かりやすいように解説するので、会計処理に自信を持ちたい方はぜひ参考にしてください。
前渡金とは
前渡金とは、事業に用いる商品やサービスを前払いで購入した際に支払った費用のことを指します。代金すべてを前払いした場合だけでなく、代金の一部だけを前払いした場合も前渡金に該当します。
例えば、商品やサービスを購入する際には、その代金の一部を手付金や内金として支払うケースがありますが、これらの費用も前渡金となります。
その他、前渡金の例としては以下のようなものがあります。
- 材料や商品、不動産などを購入した際の手付金
- 出張に際して予約したホテルや航空券の代金
- 前払い契約で依頼した場合の外注費
【パターン別】前渡金の仕訳方法
前渡金の仕訳方法は、前払いした金額が全額か、一部かで処理が異なります。それぞれ見ていきましょう。
仕入れ料金を全額前払いした
仕入れ料金を前払いした場合、支払った金額を借方には「前渡金」として、貸方には「現金」として記載します。
1,000円の商品を、全額前払で仕入れた場合の記載は以下のようになります。
借方 |
貸方 |
---|---|
前渡金:1,000円 |
現金:1,000円 |
また、実際に商品が納品されたときにも処理が必要です。貸方には「仕入れ」、借方には「前渡金」をそれぞれ記載します。
借方 |
貸方 |
---|---|
仕入れ:1,000円 |
前渡金:1,000円 |
仕入れの料金の一部を全額前払いした
仕入れ料金のうち、一部を手付金として前払いしたときも、支払った金額を借方には「前渡金」として、貸方には「現金」として記載します。
例えば、1,000円の商品を仕入れ、そのうち200円を手付金として支払った場合、以下のような記載になります。
借方 |
貸方 |
---|---|
前渡金:200円 |
現金:200円 |
実際に商品が納品された際、借方には「仕入れ」として、商品の総額を記入します。また、貸方には「前渡金」として、以前に支払った前渡金の金額を記載してください。
残りの金額については、現金で支払った場合は「現金」、掛払いとした場合は「買掛金」としてそれぞれ記載します。
<商品の受け取りと同時に現金で支払った場合>
借方 |
貸方 |
---|---|
仕入れ:1,000円 |
前渡金:200円 現金:800円 |
<掛払いとした場合>
借方 |
貸方 |
---|---|
仕入れ:1,000円 |
前渡金:200円 買掛金:800円 |
前渡金の混同しやすい勘定科目との違い
ここでは、前渡金と混同されやすい勘定項目について紹介していきます。
前払費用
前払費用とは、事業に用いる商品やサービスを、契約に基づいて継続的に受け取るにあたり、決算日の時点でまだ支払い期日を迎えていない費用のことです。
例えば、毎月15日が支払期日となっているサービスを契約しており、3月31日が決算日である場合、3月16日から3月31日までのサービス料金は前払費用として処理する費用があります。
前渡金は、商品やサービスを単発で購入した際の金額に用います。
仮払金
仮払金は、お金を使うことは分かっていても、詳細な使い道がまだ決まっていない場合に用いる勘定項目です。
例えば、出張する従業員にその費用を支給するにあたって、「飛行機にいくら、ホテル代にいくらかかるかは未定だが、総額はおおよそ10万円ぐらいだろう」ということで支給したのであれば、仮払金として扱います。
一方、「飛行機に5万円、ホテル代が5万円」といったように、使い道が明確であった場合は前渡金として記載します。
貸付金
貸付金とは、後に返済されることを前提に貸し付けたお金のことです。
対して前渡金は、後に商品やサービスが納品されることを前提に支払ったお金です。後に手元に戻ってくるものが、お金なのか、商品やサービスなのかといった違いがあります。
支払手付金
支払手付金は、前渡金と同じく手付金を支払ったときに用いることが出来る勘定項目です。手付金は前渡金として記載されることも多いですが、支払手付金が手付金のみを示しているのに対し、前渡金は手付金だけではなく内金も含みます。
そのため、内金と区別し、手付金であることを明確にしておきたい場合は支払手付金を用いることがあります。
建設仮勘定
建設仮勘定は、建設途中の不動産や構築物に対して支払った金額を示す勘定項目で、固定資産として扱います。対して前渡金は流動資産です。
前渡金の会計処理における注意点
ここでは、前渡金を処理する際に注意したいポイントを4つ紹介します。
消費税の課税は商品を受け取ったタイミング
商品やサービスを前払いで購入した場合、消費税が課税されるタイミングは、実際に商品が納品されたり、サービスを受けたりしたときです。
前払いをしてから商品をうけとるまでの間に年度をまたぐケースなどでは特に迷いがちですが、前払いをしたタイミングでは、まだ課税はおこなわれていません。
残高管理を徹底する
前渡金は、誰にいくら支払ったのかを詳細に記録し、必要なときにはすぐに確認できるようにしておきましょう。
特に複数の取引先に対して前渡金を支払っている場合、記録がおろそかだと、計上のし忘れや支払の重複といったミスの原因になります。
詳細な記録は手間がかかりますが、ミスをしてしまうとより大変になります。日頃から記録を徹底しておくことが大切です。
外貨での取引は支払った日のレートで計上
前渡金を外貨で支払った場合、計上する際には支払った日のレートを用います。商品やサービスを受け取った日や、決算日のレートに直す必要はありません。
短期前払費用の特例について
契約で継続的にサービスを受けるための支出のうち、まだサービスを受けていない分に対応する支出をした場合は前払費用として計上します。
特例として、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るもの1年以内に関して、経費計上を認める制度があります。決算期間近で税額を減らしたい場合に使われることが多いです。
前渡金についてのまとめ
前渡金(前払金)は、事業に必要な商品やサービスを前払いで購入した際に用いる勘定項目です。全額前払で購入した場合と、一部だけを前払いした場合で処理が異なります。
混同しやすい勘定項目としては、前払費用や仮払金などがあります。
また、複数の取引先に対して前渡金を支払う場合は、誰にどれだけ支払ったかをきちんと整理して記録しておくことで、処理を忘れたり、二重に支払ったりといったミスを減らすことができます。
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