差入保証金とは? 勘定科目に含まれる種類や仕訳方法をわかりやすく解説
担保など、一時的にお金を預ける取引で生じる勘定科目を、差入保証金といいます。差入保証金に含まれるケースは複数あるため、会計処理する人は正確に理解しなければなりません。
この記事では、差入保証金の概要や具体例、仕訳例を経理部の社員に向けて解説します。
また、記事の後半部分では、消費税の扱い方をまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
差入保証金とは
差入保証金は債務者が債権者に対して、債務履行を保証したうえで、提供するお金です。
問題がなければ差入保証金は全額返還されますが、契約によっては一部または全額返還されない場合もあります。
差入保証金の貸借対照表における位置付けや、長期前払費用との違いを見ていきましょう。
貸借対照表における位置付け
差入保証金は会計上では固定資産の一部で扱われ、「投資その他の資産」で処理されます。
差入保証金が用いられるケースは、契約期間が1年以上の契約に多いです。そのため、固定資産として位置付けられています。
長期前払費用との違い
長期前払費用は、差入保証金と同じカテゴリーに分類される会計項目です。差入保証金のように全額返還されません。
返還されなかった金額を長期前払費用で処理し、償却(経費化)します。
ただし、長期前払費用が20万円未満だった場合、手数料などの経費で処理が可能です。
また、長期前払費用のうち1年以内に償却(費用化)される部分は、一般的には前払費用といわれています。
差入保証金の種類
差入保証金が発生するケースは、建物の賃貸借の際や土地を借りる際などが挙げられます。敷金礼金や債務履行するための担保として、債務者から債権者に差し入れられるお金です。
差入保証金に当てはまる具体例を5つ紹介します。
- 敷金
- 建設協力金
- 権利金
- 営業保証金
- ゴルフ会員権保証金等
差入保証金は、意外と身近で発生しているため、誰しも支払う機会があるものです。
しかし、契約内容によって返還されない場合もあるため、むやみやたらに支払わないよう気をつけなければなりません。正しく取り扱えるように、それぞれ概要を理解しておきましょう。
敷金
敷金は、賃貸契約をする時に物件を借りる人(借主)から、物件の所有者(貸主)に預けるお金です。
家賃の支払いが滞ったり、物件に損害が出たりした時に敷金から差し引かれます。敷金が返還されるのは、引っ越しなどで賃貸契約が終了した際に、敷金から退去費用を差し引いても残金がある場合です。
特に、敷金の返済時はトラブルにつながるケースも少なくないため、契約する際に契約書や説明書を確認しておきましょう。
建設協力金
建設協力金は、新しく賃貸物件を建てる時に、すでに契約を結んだ借主から地主に預けるお金です。この建設協力金方式は、別称「リースバック方式」とも言われています。
建設協力金は、テナントを建設するための費用を借主が地主に貸し付けて、その資本金を建物完成後に借主が支払う賃料と相殺する仕組みです。
建設協力金は、建設費用の一部を借りるのと同様の行為ですので、差入保証金で扱われます。万が一、テナントの契約を途中で解除してしまうと、地主からの残りの建設協力金は返還されないので注意が必要です。
権利金
権利金は、賃貸契約をする際に借主が貸主へ預けるお金で、礼金とも称されています。権利金が発生する理由は、借地権という権利により、その土地の対価を地主に支払うだけの財産的価値として定められているからです。
地域の慣習によっては、権利金を家賃の一部前払いとし、残りを償却(経費化)するケースもあります。償却済みの権利金は、長期前払費用で処理されるため、契約後に返還されることはありません。
営業保証金
営業保証金は、不動産業を営む業者が事業開始日に供託所へ預けるお金です。不動産業者が債務不履行した場合に使われます。
また、宅地建物取引業保証協会の会員であれば、営業保証金の代わりに弁済業務保証金分担金を保証協会へ支払います。保証協会の加入状況による、保証金額は以下の通りです。
|
保証協会に加入済の場合 |
未加入の場合 |
本店 |
60万円 |
1000万円 |
本店以外 |
30万円 |
500万円 |
ただし、買主と売主がともに宅建業者の場合は、買主が保証金を受け取ることができないので、事前に確認しておきましょう。
ゴルフ会員権保証金等
ゴルフ会員権保証金とは、ゴルフクラブに入会する時に、ゴルフ場へ一時的に預けるお金のことです。ゴルフ会員権保証金の通称は、預託金や入会金などゴルフクラブによって異なります。
また、ゴルフ会員権には譲渡制度付きの場合があるため、売買取引ができることも特徴です。預託する金額はゴルフ場によって散逸なので、事前に調べておくとよいでしょう。預けた保証金は、定められた契約期間が終わった時に返還されます。
差入保証金の仕訳方法
差入保証金の仕訳方法を、よくあるパターンに分けて解説します。
仕訳例1.事務所の保証金の支払い・返還があった
事務所の賃貸契約を締結し、保証金として150万円を普通預金から支払ったケースを例に仕訳します。
なお、契約期間は2年で、保証金の20%は返還されないこととします。
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
---|---|---|---|
差入保証金 |
1,200,000 |
普通預金 |
1,500,000 |
長期前払費用 |
300,000 |
決算にあたり、差入保証金の償却を行う
決算において、長期前払費用のうち、期間経過に伴う部分を償却(費用化)するというケースを例に仕訳します。
なお、賃貸契約の開始から1年が経過したものとします。
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
---|---|---|---|
長期前払費用償却 |
150,000 |
長期前払費用 |
150,000 |
賃貸契約の終了に伴い保証金の返却を受けた
賃貸契約の終了に伴い、預け入れていた保証金のうち100万円が返還され、普通預金口座に入金された例をもとに仕訳します。
差額の20万円は雑損失として処理し、長期前払費用の償却(費用化)処理を行います。
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
---|---|---|---|
長期前払費用償却 |
150,000 |
長期前払費用 |
150,000 |
普通預金 |
1,000,000 |
差入保証金 |
1,200,000 |
雑損失 |
200,000 |
差入保証金の消費税の扱い方
不動産取引では、消費税の区分が混在しています。
差入保証金の預け入れは課税対象外取引ですので、消費税は課税されません。
賃貸物件を事業用として借りる場合は、礼金は消費税の課税取引となります。居住用の場合は非課税です。
また、仲介料には消費税が加算されます。項目により消費税の区分が異なるため、会計処理する際は気をつけてください。
差入保証金についてのまとめ
差入保証金は債務者が債権者に対して、債務履行を保証した際に提供するお金です。
差入保証金は契約の終了時などに全額返還される場合と、されない場合があります。返還されない分は、その期間により長期前払費用で計上するのが基本です。
どのような取引で差入保証金が必要になるのか、会計処理時に区別できるように理解するとよいでしょう。