減価償却費の仕訳に必要な知識|2種類の会計処理をマスターしよう
減価償却費とは、保有する固定資産の価値の減少分を、その年度の費用として計上することです。
処理や計算方法が2種類あるため、曖昧な解釈で覚えてしまうと大きなミスが生じる恐れがあります。
そこで本記事では、企業の会計担当者の方向けに、減価償却費の仕訳に関する知識や実際の処理方法を解説します。
ぜひ参考にしてみてください。
減価償却の仕訳に関する考え方
減価償却とは、保有する固定資産の使用に伴い価値が減少する事実を、減価償却費として耐用年数に渡り計上する会計処理です。
期間が経過することで価値が落ちるという事実に着目し、相当する費用を損益計算に反映させるために使う勘定科目です。
例えば、取得原価100万円の固定資産の耐用年数が5年の場合、各事業年度につき20万円を計上します。
減価償却の必要性
減価償却を行う理由は、企業が固定資産を長期間にかけて、売上を獲得するために利用するからです。
そのため、固定資産を利用することで獲得する売上と、固定資産の価値の減少に伴う費用を、同じ会計年度に対応させて計上する必要があります。
減価償却を行うことで、固定資産の価値の減少を使用期間(耐用年数)に渡り計上することができるため、企業が損益の計算を正しく行うことができるのです。
<h3>減価償却費と減価償却累計額の違い</h3> 200文字
減価償却累計額とは、企業が既に計上した減価償却費の合計額です。
減価償却費は1つの会計期間に計上される費用であることから、計上される財務諸表は損益計算書です。
一方で減価償却累計額は、企業が計上した過去からの減価償却費の合計額であることから貸借対照表に計上されます。
減価償却累計額は減価償却費が計上されるに伴い増加しますが、固定資産の売却や廃棄に伴って、貸借対照表から除外する必要があります。
減価償却費の仕訳に欠かせない項目
ここでは、減価償却費の仕訳に欠かせない項目を3つ紹介します。
- 取得原価
- 耐用年数
- 残存価額
それぞれ解説します。
取得原価
取得原価とは、固定資産を取得したときにかかった費用です。
取得資産の金額だけでなく、購入にかかるその他の費用も取得原価に含みます。
耐用年数
耐用年数とは、資産が経済的な価値や利益をもたらす期間を定めたものです。
固定資産にはそれぞれ耐用年数が定められていて、価値をもたらすことができると予想された期間が決められます。
耐用年数は法律で決められています。短いもので2年、長いもので50年と固定資産によって年数は大きく変わります。
残存価額
残存価額とは、固定資産に定められている耐用年数を過ぎた後に残った価値です。
耐用年数はあくまで予想された年数であり、その年数を経過したとしても固定資産そのものがなくなる訳ではありません。
2007年度の税法改正が行われる前は、残存価格は取得原価の10%までと定められていましたが、改正後は1円まで償却できるようになりました。
減価償却費の算出方法
減価償却費の算出方法は主に2つです。
ここでは「定率法」と「定額法」それぞれの算出方法について解説します。
どちらの方法を利用するかについては、基本的には対象となる固定資産の種類に基づいて法律(法人税法)で定められた方法を選択します。
また、企業がその利用実態に応じて減価償却の方法を選択できるように、希望する減価償却方法を届け出ることも可能です。
定率法
定率法は、一定の割合で償却を行う計上方法です。
定率法の基本的な計算方法は、以下のとおりです。
「取得価額(翌年度からは未償却残高)× 減価償却率=減価償却費」
耐用年数によってそれぞれ違う減価償却率が定められているので、固定資産ごとに確認しておきましょう。
定額法
定額法とは、毎年一定の金額を償却する計上方法です。初年度から耐用年数が終わる年まで、同じ金額を計上します。
定額法の計算方法は以下のとおりです。
「取得価額×減価償却率(1÷耐用年数)=減価償却費」
【方法別】減価償却費の仕訳
ここでは、方法別の減価償却費の仕訳について解説します。
直接法
直接法とは、固定資産の取得原価から、直接減価償却費を差し引く仕訳方法です。
直接法での仕訳例は、以下のとおりです。
期首に取得した耐用年数5年の100万円の備品を購入した場合
借方 |
貸方 |
||
減価償却費 |
200,000円 |
固定資産 |
200,000円 |
間接法
間接法とは、勘定科目に減価償却累計額を新たに設けて、合計額を示す仕訳方法です。
間接法の仕訳例は、以下のとおりです。
期首に取得した耐用年数5年の100万円の備品を購入した場合
借方 |
貸方 |
||
減価償却費 |
200,000円 |
減価償却累計額 |
200,000円 |
減価償却費の仕訳をする際の注意点
ここでは、減価償却費の仕訳をする際の注意点を紹介します。
耐用年数は資産によって異なる
減価償却費の仕訳をする上で、耐用年数は重要なポイントです。資産によって定められている耐用年数は異なるため、仕訳の際に必ず確認しておきましょう。
例えば、鉄筋コンクリートの建造物なら50年、パソコンなら4年など、ものによって年数は大きく異なります。
仕訳の際は、年数と償却率に注意が必要です。
青色申告者には特例がある
個人事業主や中小企業で青色申告による確定申告を行う場合、取得時の事業年度に経費計上できる特例があります。
取得価額が30万円未満の減価償却資産の場合です。
この特例は、合計の取得価額が300万円となるまで利用できます。
減価償却費の仕訳についてのまとめ
減価償却費は、資産の購入費用を将来にわたって分割し、計上するための勘定科目です。
仕訳方法にはいくつか種類があり、法律に基づいて適用する必要があります。それぞれの方法を把握して、処理を誤らないようにしましょう。
また、減価償却は長期にわたり税金の申告に影響してきます。固定資産を購入した際はきちんと記録を残し、適切な記帳が大切です。