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個別注記表とは? 記載事項を公開・非公開会社別に紹介

監修者:京浜税理士法人 横浜事務所   宮澤 明宏

個別注記表とは? 記載事項を公開・非公開会社別に紹介

個別注記表とは、決算書の補足事項をまとめた書類です。

会社法によって作成が義務付けられているため、正確な作成方法を理解しておきましょう。

本記事では、個別注記表の概要について解説したうえで、記載するべき19の項目を紹介していきます。


個別注記表とは

個別注記表は、決算書を読む際の補足事項をまとめた書類です。

注記表には、個別注記表の他に連結注記表があります。

連結注記表は、グループ企業など複数の会社が作成した決算書の、補足事項が書かれたものです。

会社単位で作成した決算書の場合は、個別注記表を作成します。

ここでは個別注記表を作成する目的と、作成義務のある会社について、それぞれみていきましょう。

作成する目的

個別注記表は、企業が作成する計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書)の内容を補足するためのものです。

個別注記表に記載する項目は、会社法等の法律により決められており、企業はこれに従って作成しています。

どのような会計方針に基づいて計算書類を作成しているかだけでなく、計算書類に記載されている数字の内容についても、具体的に説明します。

それによって、計算書類の利用者が企業の財政状態や、経営成績をより正確に把握することができるということです。

作成義務のある会社

個別注記表は、すべての会社が作成しなければなりません。

2006年に施行された会社法(新会社法)では、会社の種類として、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類を規定しています。

現存する会社としては、これら4つに加えて、有限会社法が廃止される2006年以前に設立された有限会社(特別有限会社)を加えた5種類です。

これら5種類の会社は、いずれも個別注記表を作成する必要がありますが、記載するべき内容は、会社の種類によって異なります。

株式会社は経営者と株主が異なる場合が多く、報告の重要性が大きいため、他の4種類よりも多くの項目を記載しなければなりません。

また、株式会社には、公開会社と非公開会社があり、こちらもそれぞれ記載する内容が異なります。


個別注記表の記載事項は19項目

個別注記表に記載する項目には、全部で19種類あります。

それぞれ見ていきましょう。

1.継続企業の前提に関する注記

企業の存続が困難な場合に、その旨を原因とともに記載します。

継続企業の前提とは「企業が将来にわたって事業活動を継続することを前提とする」という考え方のことです。

この前提を維持することが困難である事象が生じている場合には、この項目を記載しなければなりません。

2.重要な会計方針に係る事項に関する注記

決算書の作成にあたって、採用した会計方針について記載します。

棚卸資産や有価証券の評価方法、固定資産の減価償却方法などは、幾つかの会計処理方法があり、そのうちのどれを選択したかを、ここに明記します。

以下のような項目で、記載が必要です。

  • 資産(有価資産・棚卸資産)の評価方法
  • 固定資産の減価償却の方法
  • 引当金の計上基準
  • 収益及び費用の計上基準
  • 前述以外の計算書類作成のための基本となる重要な事項

3.会計方針の変更に関する注記

会計方針を変更した場合は、その内容や理由を記載します。

ただし、会計方針は正当な理由なく変更できません。

4.表示方法の変更に関する注記

決算書の表示方法に変更がある場合は、その内容や理由を記載します。

こちらも変更には、正当な理由が必要です。

5.会計上の見積りの変更に関する注記

会計上の見積りに変更があった場合は、その内容を記載します。

会計上の見積もりとは、決算書を作成するにあたり、経営者の見積もりに基づいて会計処理を行うことを指します。

6.誤謬の訂正に関する注記

過去に作成した決算書に誤謬(誤りや抜け・漏れ)が見つかり、それを訂正した場合、その内容や金額を記載します。

7.貸借対照表に関する注記

貸借対照表に計上されている資産や負債について、担保に供している資産、資産から控除した貸倒引当金や減価償却累計額、保証債務の内容と金額、関連会社への債権や債務などの項目をそれぞれ記入します。

8.損益計算書に関する注記

関係会社との営業取引と、営業外取引の金額をそれぞれ記載します。

9.株主資本等変動計算書に関する注記

発行済株式や自己株式の数、新株予約権に関係する株式の数など、株式資本に関する事柄を必要に応じて記載します。

10.税効果会計に関する注記

繰延税金資産や繰延税金負債がある場合、その内容と発生原因を併せて記載します。

11.リースにより使用する固定資産に関する注記

リース取引において所有権移転外ファイナンスリースを採用している場合、期末日時点での取得原価相当額や減価償却累計額相当額、末経過リース料相当額などを記載します。

12.金融商品に関する注記

保有している金融商品の状態や価格を記載します。

13.賃貸等不動産に関する注記

家賃収入のために賃貸不動産を保持していれば、その状態や価格を記載します。

14.持分法損益等に関する注記

関連会社への投資額、利益、損失について記載します。記載が必要なのは、重要な関連会社もしくは開示対象特別目的会社がある場合のみです。

15.関連当事者との取引に関する注記

親会社や子会社、兄弟会社、関連会社などとの取引があった場合、その内容や金額を記載します。

16.一株当たり情報に関する注記

一株あたりの純資産額、純利益、純損失を記載します。

17.重要な後発事象に関する注記

決算書の内容に大きな影響を与える出来事が、決算日よりも後に発生した場合に記載します。

18.連結配当規制適用会社に関する注記

その会社の事業が当期の末日で終わり、後に連結配当適用会社となる場合に、その旨を記載します。

19.その他の注記

上記18項目のいずれにもあてはまらず、なおかつ決算書を正確に読み解くために必要な内容がある場合は、ここに記載します。


個別注記表の記載事項は会社の形態で異なる

前述の通り、個別注記表に記載するべき内容は、会社の種類によって異なります。
ここでは、公開株式会社・非公開株式会社の違いと、すべての会社が記載するべき項目をそれぞれ紹介します。

公開会社・非公開会社の比較

公開会社か、非公開会社かによって異なります。

具体的には、下表のとおりです。

公開会社

非公開会社

1.継続企業の前提に関する注記

2.重要な会計方針に係る事項に関する注記

3.会計方針の変更に関する注記

4.表示方法の変更に関する注記

5.会計上の見積りの変更に関する注記

6.誤謬の訂正に関する注記

◯(※1)

◯(※1)

7.貸借対照表に関する注記

8.損益計算書に関する注記

9.株主資本等変動計算書に関する注記

10.税効果会計に関する注記

11.リースにより使用する固定資産に関する注記

12.金融商品に関する注記

13.賃貸等不動産に関する注記

14.持分法損益等に関する注記

15.関連当事者との取引に関する注記

16.一株当たり情報に関する注記

17.重要な後発事象に関する注記

18.連結配当規制適用会社に関する注記

18-2.収益認識に関する注記

◯(※2)

◯(※2)

19.その他の注記

※1 企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に基づく会計処理を行う場合には注記が必要。

※2 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」に基づく会計処理を行う場合には、注記が必要。

すべての会社で必要となる項目

会社の種類には、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、有限会社があります。

次の項目は、いずれの会社であっても、個別注記表に記載が必要です。

  • 2.重要な会計方針に係る事項に関する注記
  • 3.会計方針の変更に関する注記
  • 4.表示方法の変更に関する注記
  • 6.誤謬の訂正に関する注記(上記※1参照)
  • 9.株主資本等変動計算書に関する注記
  • 18-2.収益認識に関する注記(上記※2参照)
  • 19.その他の注記

個別注記表を作成しない場合の罰則

個別注記表を作成していないことに対する罰則は、現在のところ規定されていません。

しかし、個別注記表の作成は会社法により義務付けられているため、作成しない場合は法律違反になります。

罰則がないからといって作成していなければ、会社の適法性を疑われ、信頼を損ねるおそれがあるのです。

個別注記表を含めた計算書類等を、適切に作成することにより、新規の取引先や金融機関からの信頼感が高まる、ということも考えられます。

結果として、企業活動でプラスになることが想定されるので、決算書を作成する際には、個別注記表を併せて作成する必要があります。


個別注記表についてのまとめ

個別注記表の概要や、記載が必要な19の項目について解説しました。

個別注記表の作成は、会社法により義務付けられており、スタートアップや中小企業であっても作成する必要があります。

作成しないことによるペナルティは現時点でありませんが、だからといって作成しなければ会社の信頼を失うため、必ず作成しましょう。


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監修者プロフィール

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宮澤 明宏

京浜税理士法人 横浜事務所

横浜市青葉区を拠点として、中小規模法人や個人事業主のお客様を中心に、税務顧問サービス及び経営コンサルティングサービスを提供。

月次決算制度の導入、資金繰りの明確化を切り口に、創業3年以内の黒字化を目指し経営を安定化させるための経営管理の手法について、伴走型支援で行っている。

創業時からしっかりとした経営管理を行い、スピード感を持って会社を成長させていきたい経営者に向けて業務を行う。

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